『草原の手帳から』という名の小さな本があった。草原で拾った手帳にはこんな言葉が書き留めてあった……という語り出しで始まる短文集。ラストでは「手帳の文字は、雨風でかすれてよく読めなくなっていた」といった風情で締め括られていた。あの潔さと軽やかさが残した余韻に、時々浸りたくなる。