【3月のまとめ】春のフルコース
3月31日。
カレンダーの端を指で摘んでちょっとめくりあげてみたら間違えて3枚もめくりあげてしまって。
春をすっ飛ばして初夏の陽気が吹き込んでくるようなキラキラした日。
それでも桜を観ずに先へ進むなんて、当然許しませんよ。昨日も十分暖かかったから満開までいかなくても7分咲き程度の木の一本くらいはあるでしょう。
そう思って近所の公園へ来たものの蕾にすらなっていない木がほとんど。ちょっとだけ咲いている木もあったけれど、私の中の〈桜〉を観た気分にはなれません。
それでも咲き始めの桜の木の下ではしゃいでいる社会人グループはずいぶんと浮かれています。15人くらい。会社のイベントでしょうか。彼らの中ではちゃんとお花見になっているようです。
どうやら満開のソメイヨシノが観られるのはもう少し先のようですね。こんなにいい陽気なのに、ちょっと残念です。
酔っ払い声が鬱陶しくなって、とぼとぼと足下を見ながら帰り道を歩きます。
あら、シロツメクサが白くてかわいい花をつけています。その横で咲いているハルジオン。まとまって咲いている小さな白い花はハナニラと言うらしいです。
そういえばずいぶんと足下が色鮮やかになりました。タンポポのイエローにオオイヌノフグリの青、クローバーの白。
カタバミ、ウマゴヤシ、ゴウダソウ……。
ここひと月ほどnoteを書き連ねる中で小さい春をたくさん見つけてきました。内容を振り返ってみるとまるで春へのラブレターのような、ファンレターのような。小さな春を見つけるたびにワクワクして、キラキラして。
それは少しずつ大きくなって満開の桜への期待となって、道となって。
まるでフレンチのフルコースみたい。
食前酒、アミューズ、オードブル。
アセビ、菜の花、ミツバチ。
リズム良く、はずむように。
スープ、パン、ポワソン。
ナズナ、チューリップ、ミモザ。
今の子供はぺんぺん草をクルクルしたり、オオバコで相撲を取ったりするのでしょうか。
グラニテ……。
クリスマスローズ。
あっという間にメインディッシュ。ヴィアンド。
それはもちろん満開の桜。ソメイヨシノ。
全然足りない。フルコースなんかじゃ足りない。
まだまだたくさん、小さな春の一皿一皿。
ムスカリ、ユキヤナギ、花をつけたローズマリー。
丁寧に植えられたパンジーの花壇。切り株の横で木漏れ日が照らす新たな芽吹き。葉をつける紫陽花の低木。
食卓に加わる春キャベツとアスパラのグリーン。新じゃが、新玉ねぎも。味付けに白ワインやレモンの爽やかな酸味。
鎌倉のカフェで飲んだビャクシンのハーブティ。山道で見上げたヤマザクラ。神社に広がる沈丁花の優しい香り。水仙は枯れ始め椿の絨毯は鮮やかに敷かれます。
作りかけの鳥の巣。打ち上げられたクラゲ。
小さい春見つけた。
それはもうたくさん、色鮮やかに、ささやかに。
夕暮れ時の海岸をゆっくり時間をかけて歩いていると、西の空に小さな鳥の影。それはビュン、ビュンと流れ星のように次々と空の彼方へ消えて行きます。
「ツバメだ！」
春を告げる渡り鳥。
そうです、春は少しずつ確実にそこまで近づいています。
首から下げていたカメラを急いで上に向けて夢中でツバメを追いかけます。マニュアルのレンズを必死にクルクル回して、フレームの中を横切る弾丸のようなシルエット。シャッター音が心地よく響いて、それも春の足音の一つになる。
ついに4月に突入します。
春のフルコース。メインディッシュはもうすぐです！
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