まどろみの箱庭 ーMAMコレクション017 さわひらきー
小雨降る仕事終わりの17時。
だらだらと歩いてたどり着いたのは森美術館。
訪れるのはずいぶんと久しぶりです。
去年は2回くらいしか行っていません。
森美術館にはメンバーシップといういわゆる年パスのようなシステムがあって、私も加入しているのですが、ついこの間更新の案内メールが届いて貧乏性な私は急いで予定を入れたのでした。汗
今回の展示は「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」というタイトルです。
環境問題がテーマなのでどうしてもバックグラウンドの説明が多いことに加え、参加アーティストが多く(=アーティスト説明文が多い)、さらにさらに映像作品が多いことがトドメになって最後にはもうクタクタ。
ショップを物色して今回の図録でも買って明日にでもゆっくり読み直そう。
そう思っていたところに何やら不思議な音が聞こえてきました。
逆再生したピアノでしょうか。
音の方に目をやると小さな展示室があり、入り口には黒いカーテンが下ろされていました。
おそるおそるカーテンをくぐると、そこには小さな箱庭が広がっていたのでした。
MAMコレクション017 さわひらき
薄暗い室内に反響するあたたかい質感のピアノの音。53階から見下ろす東京の夜景。
私は実はあの明かりの世界で眠っていて、この夢のような箱庭ごと宙に浮遊しているような、そんな感覚を覚えます。
ヒトという生き物としての懐かしさとでもいうのでしょうか。
一個人としての歴史のフラッシュバックではなくて、ヒトゲノムに染み付いているノスタルジー。
私たちにもし帰巣本能があったとしたら、ここがまさにその「巣」と言えそうな空間。
水族館で生まれたピラルクは、はるか南のジャングルの生ぬるい雨降る濁った川を夢に見るでしょうか。
箱庭の中でもぼーっとしていると、さっきまでせかせかしていた頭の中が静かになってゆきます。
今回の企画展はこの展示の癒しの効果を最大化するために用意されたのではと思ってしまうほど。
キュレーターは矢作学さん。
最後にこんなとっておきを用意してくれて本当に感謝です。
記憶にないのに懐かしい。
もしかしたら私たちは、まどろみの世界で共通の「巣」に帰っているのかもしれません。
形而上にない私たちの「巣」を、形而下にあるもので組み立てた「箱庭」。
夢とうつつの狭間に確かに存在する癒しの世界を大都会のはるかに上空で、ぜひみなさんも味わってみてください。
会期は3月31日までです。
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