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クローバー

ぼんやりと目を開けてスマホを見たら4:44。
うげっ、と思いつつも目はすっかり覚めています。

のそのそと起き上がり歯を磨いて顔を洗います。
あたたかい玄米茶を飲みながら1時間ほどぼーっとスマホをながめていると、急にもったいない気がしてきてカメラを手に外へ。

東の空に登った朝日がまぶしいです。



コンビニでパンとコーヒーを買っていつもの公園へ歩きます。今日は5月並みの陽気と言っていたけれど朝はまだまだ寒くダウンを羽織っています。

芝生の上を歩いているとなんだか冷たい。
よく見ると芝は濡れていてキラキラと反射しています。
昨日の晩のうちに雨でも降ったのでしょうか。

当然ベンチにも水滴がついていて座ることが出来ず、仕方なく立ったままパンをかじります。
明太バターフランス。
明太バターって誰が思いついたんでしょう。
あんこといい明太子といいバターの守備範囲のまあ広いこと。

レジ袋に潰した紙コップとパンの袋を入れてポケットに突っ込みます。
冷えた手をポケットに入れようと思ったら、なんだか右ポケットがきゅうくつになってしまいました。 


朝日にカモメが飛んでゆきます。
ついこの間、まだ蕾だったクリスマスローズが咲いています。



ふとしゃがみ込んでクローバーを撮影した時、なんだかデジャヴを感じました。

そういえば今朝方、四つ葉のクローバーを探す夢を見ていた気がします。

いえ、確かにそうでした。

するとたちまち夢が正夢になる予感がして、私は一面のクローバーを小説を読むように上から下へ右から左へなぞっていきます。

しかし四つ葉は見つかりません。
少し歩いて同じような群生を見つけてしゃがみ込み、同じことを繰り返します。


実は私の特技は四つ葉のクローバー探しです。
子供の頃、一時期クローバー探しにハマっていて小学校から帰ると近所の公園で何時間も地面を眺めていたことがあります。
それは本当にすぐ見つかったし、ひとつに限らずふたつ、みっつと見つかるのでした。

だから今日もどうせすぐ見つかるだろうと鷹を括っていたのです。

5分、10分、30分。
日がだんだんと登ってきて影が短くなり雲に隠れ放射状に淡く広がっても、私はまだ四つ葉を探し続けていました。

だんだんと気持ちが焦ってきてなんだかお腹も痛い。全然見つからない。予定があるから8時には家に帰らなきゃ。あと少しだけ。

結局四つ葉は見つからず夢は夢。
時計の針は8時を指しました。
頭の中には444。今朝見た数字が浮かびます。
幸せの数?不幸の数?

子どもの頃は永遠に思えた時間。何時間も熱心に地面を見つめていたあの時間の中に溢れていた幸運のシンボル。

きっとそういうことね。

早朝からムキになっている大人の前になんて、四つ葉のクローバーは現れないでしょう。


「はぁ。」
とため息をついて両手をポケットにつっこむと、ゴミ袋がクシャッと音を立て右手を追いやります。

宙ぶらりんになった右手が花をつけたローズマリーを撫でると、少しあせたような香りが漂いました。

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