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夜しか。もう眠れずに。
今。ヨルシカのLive「盗作」の帰途についている。
そして、この感動を忘れたくなくて、急いでスマホのメモに書き留めている。
※ネタバレを含みます
※引用の部分はn-bunaさんの朗読です。
【追憶】
少女は、幼少期、バス停で
ある1人の幽霊を見た。
この幽霊はある人の生まれ変わりを探していた。
幽霊は、雲を見上げた。
少女は、バス停の隣に咲いている、
真っ赤な百日紅の花に目をやる。
自然と2人は話が合う。
幽霊は、言う、『そうか、君だったんだな』
そして、姿が消えた。
会場に入る。
スクリーンには、一輪草が咲いている。
開場のアナウンスが流れ、先程までざわざわしていたホール全体に、静寂が訪れる。
そこに、
【追憶】と書かれたバス停の映像とともに、n-bunaさんの朗読の声が聞こえる。
少女と幽霊の話だ。
私たちは、夢に引きずり込まれる。
そして、ヨルシカ信者お得意の考察を続ける。
ここで、ある1つの曲を思い浮かべる。
幽霊、少女、百日紅、バス停、、、
もしかして、、、。
突然、『春ひさぎ』が始まる。
ずっとこの声を直接聴いてみたかった。
鳥肌が止まらなかった。涙が溢れた。足が震えた。自分のこの胸の鼓動が、大きな音のせいなのか、興奮のせいなのか分からなかった。
ラジオでのふわふわしたsuisさんとは別者のような、力強く、でもどこか寂しそうに、悲痛な歌声で歌い上げる。
『思想犯』
時折、n-bunaさんとsuisさんの姿だけが浮かび上がる。
ちゃんとヨルシカは存在していた。
『強盗と花束』
春ひさぎとは打って変わったような、少年のようなあどけない声で、suisさんが歌う。
【バスを降りて】
私は、少女と夏祭りに行こうとしていた。そのために、駅に立ち寄ったが、電車は来ない。聞いてみると、どうやら事故があったらしい。
少女は私に言った。『歩いてみようよ』
私たちは、山を越えて、1時間かかる、隣町まで歩くことにした。
『昼鳶』
ねっとりとした、伸びやかな、水飴みたいな声。
スクリーンには接吻している男女の映像が流れる。が、彼らがどんどん黒く塗りつぶされていく。そして、suisさんの舌打ち。
なんて格好いいんだろう。全身が震える。
ヨルシカが描きたいのは淡い恋心なんて安っぽいものじゃなくて人間の本質である、”愛”なんだなと思った。
『レプリカント』
青と緑の光とともに、モノクロの映像が流れる。
"言葉で全部表して
心も愛も書き足して
それでも空は酷く青いんだから
それはきっと魔法だから
いつか季節が過ぎ去って
冷たくなって年老いて
その時にやっとわかる
僕もその青さがわかる"
空の青さ。
やはり、あの曲が関連しているのかもしれない。
『花人局』
2つのコップ、化粧水、窓際のラベンダー、編みかけのマフラーなどが映し出される。曲の進行とともに、「私」は妻がもうこの世にいないことに目を向ける。そして、映像の妻のものも、全て花に変わっていく。
個人的に1番好きな曲だ。
【山の草原】
山の途中で、少女は私に言う。
『さっき話した幽霊の話を覚えている?この幽霊は、生まれ変わり、前世を信じていて、このバス停で待っていれば、きっと、あの子が来てくれるんじゃないかって言っていたの』と。
私は、頷く。
夏草が生えている。
彼女は彼女が好きな俳句を詠む。”うちとけて、一輪草のなかにいる”
そして、私は彼女の髪にこっそりと一輪草をさす。
また隣町へ歩き始める。
『逃亡』
"夜が近づくまで今日は歩いてみようよ
隣の町の夜祭りに行くんだ"
『風を食む』
"貴方だけ 貴方だけ
僕はずっと想ってたんだ
ただ白いあの雲を待つ
風のない春に騒めく"
『夜行』
"君はまだわからないだろうけど、
空も言葉で出来てるんだ
そっか、隣町なら着いて行くよ
はらはら、はらはら、はらり
晴るる原 君が詠む歌や 一輪草
他には何にもいらないから"
『幼年期、思い出の中』
『嘘月』
初めてホールに入った時、霧のようになっていて、その時は何故なのか分からなかったが、ウォータースクリーン用だった。客席に真っ直ぐ伸びる、色とりどりの光が、ぼやけて、とても美しかった。
【夏祭り】
夏祭りに着く。
あんず飴を買って、食べる。
人混みの中を彼女はすいすいと歩いていく。
突然、屋台の灯りも消え、彼女は私を振り返る。
そのときだった。
夜空に、大きな花が咲いた。
それは現れては消えを繰り返す。
彼女は言う、『始まったね』
私は、その時、何を考えていたのだろう。
花火が綺麗だとか、彼女の髪の結び目が綺麗だとか、そういうことよりも、百日紅の話を考えていた。
彼女の髪にはまだ一輪草がささっている。
『盗作』
ついに、Live名でもある、盗作の出番だ。
どうしよう、終わってしまう。
まだ夢から覚めたくない。
後ろから、啜り泣く声が聞こえる。
観客は静かに泣いている。
私も一緒に泣く。
けれど、なぜ泣いているのかは自分でもわからない。
『爆弾魔』
イントロがいつもと違くて、何がくるんだ⁉︎とワクワクしていたら、大好きな爆弾魔だった。
アルバムの「盗作」に爆弾魔が収録されると知った時、泣いて喜んだのを思い出す。
「負け犬にアンコールはいらない」の時のsuisさんはもういない。
苦しい思いが直接、私たちの胸に届く。
『春泥棒』
前々からCMで起用され、話題になっていたが、前回のオンラインライブ「前世」で初公開されMVもその日に公開された、あの曲。
どうしよう、とうとう妻が花びらとなって消えてしまう。まだ死なないで。Liveも終わらないで。
『花に亡霊』
何故だか、言われずとも、この曲が最後であることがわかった。
映画の主題歌として聞いた時の感動とはまた違う。
考察のためにフル回転している頭に歌詞がすっと入ってくる。
そして、
花に"亡霊"である。
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全てが繋がった。
ヨルシカという名前の由来である、「夜しかもう眠れずに」の歌詞が入った、『雲と幽霊』の男の子と女の子は、エイミーとエルマ、盗作をする男とその妻の前世であったのだ。
【前世】
バスを降りる。
彼女は、バス停のベンチに腰かける。
そこで、私は気づく。
さっきからのこの既視感に。
彼女の話を聞いて腑に落ちた。
私は、あの幽霊なのでは無いかと。
そして、こうしてまた彼女に会いに来たのだとしたら。
だんだん視界がぼやけてくる。
夢からまだ覚めないでくれ。
幼少期の私が、彼女と何か話しているのが見える。
目が覚めた。
ふと見ると、私は彼女を抱きしめていた。
生まれ変わった私の魂。
それはまさに、盗作である。
そして、盛大な拍手とともに、幕が閉じる。
私たちも1時間半の夢から覚める。
ヨルシカにはアンコールがない。
そして、誰もアンコールを求めない。
セットリストと"2021年10月1日の東京公演に当選した"観客が生み出す物語は、その時しか作れない。
まるで、映画を見ているようだった。
私たちの一夏が終わった。
絶対に人生で忘れられない日。
初めてのliveがヨルシカで良かった。
涙が止まらない。
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