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予期せぬ妊娠から物語が動く設定はそろそろ終わりにしませんか

村上春樹の新作を読んだ感想を書いているのだけど、もうずいぶんと時間が経っています。これから読もうと思っている人は読まないでくださいね。

わたしはある時期まで(2年前くらいだと思う)村上春樹は「すごい」と思っていた。
中1か中2でノルウェイの森を読んだ。何がテーマなのかも登場人物たちの気持ちもさっぱりわからなかったけれど、なんだか「すごい」と感じたことと記憶している。時を同じくして読んだ母が「気持ちわる」と一言言い放って、「ベストセラー小説なのにその感想って…」と驚いたことははっきり覚えている。
初めての性交の後に精神を病んだり、性交に至るまでに並々ならぬ葛藤があったり、幸せな結婚をしたと思ったら自死を選んだりする登場人物たち。大人の世界、とくに性愛が絡んでくると、難しいことがあるんだなあとぼんやりと感じていて、セックスっていろいろむずいけど奥が深くて興味深いと思ったのだった。
その後、現在にいたるまで新刊が出れば読むくらいには春樹ファンだったのだ。

だがしかし、この作品に関しては、読み進めるのが辛くなるくらい(時間がもったいない感じ)没入することができなかった。とくに、主人公の妻が予期せぬ妊娠をした件には男性のファンタジーでしかないなあと、読むのを止めようと一瞬本気で考えた。
ここから、物語はさらに動いていくのだ。だからこそ、なぜ、妊娠。しかも予期せぬ。
時代背景は語られていないが、避妊をしなければ妊娠する、それくらいはわかっている時代のお話であろう。なのに、なぜ。女性の意思は、尊重されないんだろう。

物語だから。

男性が書く物語だから?

わたしは数年前からフェミニズムについて学んでいるのでことさら、引っかかっているんだなということを自覚している。避妊方法は圧倒的に日本は先進国の現状より2〜30年は遅れていて、低容量ピルすらいまだに3%の普及率。男性主導のコンドームだって、つねにつけているという割合は100%ではない。脱落や破けたりという失敗率による妊娠を考えると、コンドームによって確実に避妊できるなんてことはないのだ。
女性は、それによって、人生が大きく狂わされるのに。

なのに、コンドームをつけないsexの話を書き続ける村上春樹。
今回、村上春樹が描いた予期せぬ妊娠の後の人生が幸せではなかったのが、わたしには、読み進めていて残念でしかなかったのです。

女性作家もピルやミレーナによる避妊を積極的に登場させてほしい。(金原ひとみは積極的に取り扱っている印象)
女性が主導の避妊の普及によって、予期せぬ妊娠による物語がなくなってほしい。
レイプなど性暴力に対して、緊急避妊薬へのアクセスが当たり前の世の中になってほしい。

世の中から、『予期せぬ妊娠』という言葉が永久になくなる日が、訪れるようにわたしは訴え続けるのだ。

村上春樹が予期せぬ妊娠をした女性に対する何らかのメッセージを含んだ作品って可能性を考えたのですが、思い浮かびませんでした。妊娠や出産に関して、うっすいなあーというのがわたしの今の読後感です。

村上春樹の作品が全て???になったわけでは決してないのですが、この作品に関してはどうしても好きになれなくて…という読後をようやく書きました。

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