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初の単著「ICT主任の仕事術 仕事を最適化し、学びを深めるコツ」を刊行します。想いと概要編

明治図書より初の単著「ICT主任の仕事術 仕事を最適化し、学びを深めるコツ」が刊行されます。教育の現場を前に進めたいリーダーの方々や熱い想いを持っている若手の先生方の糧になればと思い書きました。そんな方に届けば幸いです。

本書の要約

本書はタイトルにある通り、自分なりに「仕事を最適化し、学びを深めるコツ」を記載しました。従来の本の文脈でいうとICT/学年主任としてはマネジメント/運営術の本、クラス担任としては教科・探究の授業実践集ということができるでしょう。

しかし、表現したいことは下記にもある通り、教員は学習者が「学びのオーナーシップつ学びの場」と「お互いに学びを相互作用させる場」のICTをつかってデザインすることが大切である、ということです。

「学びへの理念」と「理念に基づいた実践」の両方を行き来する本にしようと思いました。

この本の特徴と目次

この本の概要をお伝えします。。

この本において一貫して大切にしている考えはICTに関して、そして教育そのものに関しての二方向に及びます。
①ICTはInformation&Communication Technologyの略とされますが、私は情報と人と人の関わりの「課題を解決する」技術だと考えています。ICTを使うことが目的ではなく、そのような課題を解決するための1つのツールだと認識することです。
②ICTを使って学びの効率化・個別化が強調されますが、それ以上に大切なことがあると考えています。学校(学びの場/育ちの場)において大切な事は「学習者自身が学びのオーナーシップを持つこと」と、有意義な学習をした先に「学習者同士がお互いが知的に、刺激的に関わり合う学習の環境を作ること」の2つです。今後、我々教職員にはそういった場を作るような能力が求められてきているのだと思います。

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ICT主任の仕事術と言うタイトルですが、私はいくつかの主任業務(ICT主任、教科主任、学年主任など)を兼任していました。それぞれのマネージメントにICTは大きな力を貸してくれました。なので、様々な主任の立場にある方にも読んでほしいと思っています。お互いのコミュニケーションをどうしやすくするか、意見の可視化やインタラクティブな議論を促す場づくりについて意識してきたことを書きました。リーダーとしてのコミュニケーションが苦手だった自分だったから書けた部分でもあります。

また、クラス担任としての授業実践を教科実践編とICT×探究編としてまとめました。どこかの単元に寄らず、どの単元でも使える汎用性のある実践と探究学習を推進してきた現場の教員としてICT×探究の理論と実践を書きました。教科実践編は前提として小学校の教科授業での実践ですが、気づきを得てその気づきを交換するための授業デザインを書きました。ICT×探究編ではインターナショナルバカロレアの理論をベースに書いてありますが、学習者ごとに疑問を持ったり、考察/振り返りをかけやすくなる仕組みづくりやそれぞれを交換する場のデザインを書きました。

この本は「仕事術」というハウトゥー・手法にフォーカスを当てた本ではありますが、「どうやる」と同じくらい、「なぜやるのか」、「目的は何なのか」、「子ども・組織にどうなって欲しいのか」、「どんなことを大切にするのか」といった、表面的に「何をする」というところだけではなく、理由や対象も明確にしているつもりです。
また、タグといった形ですぐに引ける索引をもくじの前につけました。そのタグも「#教員チームづくり」や「#一人ひとりへの細かいみとり」「#振り返り学習」「#問い・仮説づくり」といった単元やシーンによらず、汎用的なまとめ方をしました。形としてはヘンテコなものかもしれませんが、ご自分の興味に合わせて辞書的に使っていただけたら嬉しいです。教員の、そして大人の学びこそ「学びのオーナーシップ」が必要だと思うからです。

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「ICT主任の仕事術」原稿段階の資料

それぞれの章の概要は別の記事で公開します。


この本の背景

「GIGAスクール構想で一人一台の端末が来たけれどもうまくつかえない。子どもの学びに直結しない。」

一年前、単著の依頼をいただいた時にこんな声が学校現場から多く上がっていました。一年後の今、うまく学びに直結させた現場とそうでない現場が大きく分かれている印象です。

しかし、よく聞くのがうまくいっている現場にはチームを巻き込む「人」がいるし、うまくいかない現場はそのような「人」がいないということでした。

一人ひとりの資質は大切にしたいが、悪い意味で属人化しています。そのできる人も「あの人だからできるんでしょ」という特殊解として扱われてしまうこともあります。

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ICT運用のポリシー・ルールに関して (作 五木田洋平) より抜粋

本書は子どもも教員も一人ひとりの資質を引き出し、伸ばす「仕組み」を説明したものです。

一人ひとりが輝くことはとても大切です。しかし、一人ひとりが輝く環境は決定権を持つ誰かの気まぐれで左右されてはいけないのです。「どうやってみんなでつくっていくか」そんな論点にフォーカスを当てました。

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ICT運用のポリシー・ルールに関して (作 五木田洋平) より抜粋

一方、子どもたちや保護者の声を聞くと

「今の学校は画一的なやり方でその子なりの資質が伸びている感じがしない」

「コロナでお互いのコミュニケーションがうまく取れず、ストレスが溜まっている。」

かたや働く側の教員にも

「教師が他のクラスと合わせなくてはいけないため(やり方が違うとクレームが来るから)目の前の子どもにあった授業ができない。その結果、クラス全員をいきいきと伸ばすことができない。」

「ICT主任や学年主任に若いうちからなったが、どうやって周りを巻き込んでいいかわからない

これらの声はコロナが流行っているから、ということではないと思います。

元来、子どもは毎日を友達と楽しく過ごしたいし、学びと成長が楽しいものであってほしい。

教員も自分の教育観を表した、今目の前にいる子に必要な授業がしたい。一人ひとりの子どもに生き生きと毎日を過ごしてほしいし、生活の中でいろんな気づきと成長をしていってほしい。

そんなことを思っているはずです。

私の教育委員会にいる知人もよく

「それぞれの学校でリスクは回避しつつも本来であれば教員一人ひとりの個性が尊重されつつ、チームワークが発揮できる職場であってほしい。子どもたちのために。」


と話しています。すべては子どもたちの成長のためです。

前述の通り、本書では一貫したメッセージとして

①学習者自身に自分の資質や興味、課題に応じた学びをする権利(学びのオーナーシップ)があること
②学びのオーナーシップがある学習者が相互的に関わりを持てる場をつくるのが本書でフォーカスしている教育技術であること

を挙げています。

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そのためにICT『Information & Communication Technology』を『情報と人と人の関わりの課題を解決する技術』と定義しています。

今までの学校の仕組み上の課題であった

①教科書の中だけの狭い学び

②同じクラス、学校にいる先生からしか学べない環境

をクリアするためのツールです。

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理念と実践について

どの業界にも技術論に対しては「ハウトゥーに走って本質を見失っているんじゃないか」という見方があると感じています。教育業界で言えば「どうやって教える」ばかりが論点になって「なぜ学びが必要か」を教員が自問自答していない状態です。

逆に抽象的な論に対して「理念や理想、いいことばっかり言っていて何もできていないじゃないか」という見方もあります。教育業界で言えば「教育談義ばかりしていて机上の空論になっている。現場と教員の技術を無視している」といったところでしょうか。

僕なりの答えは「理念につながった実践をつくり続けることが大切」です。言い換えると目的に応じた努力をするというシンプルなことです。

そのためには教員は学び続ける必要があります。探究的な学びを推進するのであれば、人との関わりの技術を導入するのであれば、教員自身が学びを深く探究し様々な人と関わっていく必要があると、強く思っています。

(同時に教育業界全般には教員自身が深く学べる、さまざまな人と関わることができる余白と自己選択のデザインが必要だとも思っています。余白も自己選択の余地もない教員に対してがないのに「学べ、様々な人と関われ(社会を知れ)」は暴論だと思っています。)

最後に

これまで積み重ねてきた日本の教育から僕は大きく影響を受けていますし、先人の知恵と実践をもとに自分をつくりあげてきたと感じています。今も学びの最中です。

そんな先人たちに最大限のリスペクトと、これからの子どもたちとその周りの大人が本書(自分のクリエイト)によって少しでも糧になれば何よりの幸せです。

「ものをつくることで人と関わることが自分なりの人との関わり方」だと気づいたことが本書を執筆する上での何よりの学びです。

この本が架け橋となって今までの仲間とはより深く、同じ価値観のまだ見ぬ仲間に出会えること、そして仲間たちの力になることを望んでいます。



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