見出し画像

「三秒間の死角 上・下」(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著、ヘレンハルメ美穂訳、角川文庫)

読了日: (上)2023/5/10、(下)2023/5/18

読み進めて途中で気が付いたのだが、「制裁」(処女作)の作家(組)だったようだ。「制裁」はうっすら記憶にあるが(それほど強い印象はない…)社会問題を基底とした陰鬱な雰囲気の小説だった気がする(北欧サスペンス(特にスウェーデン)の概ねそこが特徴で、好き)。「熊と踊れ」もそうだったか。
警察(事件捜査)と刑務所(警務管理)の2場所を跨ぐフィールドで被執行者(または別の役割)と頑固偏屈キャラのたつ刑事が主人公ではあるのだが、どこまで彼らの意図通りに展開するのか、あたりが場面設定、展開のうまさだと思う。壁は本来高くて大きいものだが、その中外の行き来は、社会の正義悪の表裏のように単純な区分けができない暗喩にもとらえられる。なかなか読み応えのある、久しぶりに面白いと思わせる当ジャンルの小説だった。すでに10年前刊行だが。次作も読んでみるかな。

(毎度書いているような気もするが)
ヘレンハルメ美穂の訳本は気持ちよく読める。スウェーデン語のほか訳者をよく存じあげないが、スウェーデン・サスペンスの日本での人気は彼女の仕事に依るところも大いにあると思う。



この記事が参加している募集

#読書感想文

189,023件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?