見出し画像

普通じゃないうちら

"むこう"と付き合ってもうすぐで5年が経つ。中3の6月に初めてお出かけをして、その出かけ先で告白したあの日から5年。高校受験、大学受験と2度の受験期を経験してきたけど1度も別れることはなく、周りからは「彼女さんとラブラブだね、幸せそうじゃん」と羨ましがられる。

もちろん、これは嘘ではないしむしろ本当の話だ。だから周りがうちらの関係を見て羨ましがる気持ちもわかる。でも実際はみんなが思っている程に順調なわけじゃない。自分には今も付き合い始めた頃も悩んでいることがある。

「お互いの恋愛観がかなりずれている」

簡単に言ってしまえば、そう。

確かに付き合ってもうすぐで5年は経つけどこの5年間で一緒にお出かけした回数は数えられるぐらいに少ないし、電車で30分ぐらいで会える距離のはずなのになぜか会う頻度は2,3か月に1回程度と遠距離恋愛並みの頻度。会っても未だに手の繋ぎ方が分からないし、ハグをすることなくその日を終えることもよくある。
ここまで聞けば「本当に付き合ってるの?」と疑いたくなるかもしれない。実際、自分の親にもよく言われている。そして自分でもしばしばそう思ってしまう時がある。

別に会う頻度が少ないのは会いたくないわけじゃない。高校、大学とお互い別々の学校に通っているからテスト期間が微妙にずれたり行事のタイミングが違ったりで予定が合わせにくいというのはあった。それでももう少し会う頻度は改善できたように思う、せめて月に1度とか。
手を繋ぐのとか、ハグするのとかも5年も付き合っていれば流石に定番の行為の一つになっているものだと考えてた時期もあった。でも実際はそんなことなく未だに気分は付き合いたてのカップル同等である。

もちろん、原因はなんとなく分かっている。
むこうが恋愛に対して興味が薄くて、他人に心の拠り所を作ろうとしない気質なこと。自分はむこうを傷つけることに恐れすぎてなんでも相手に合わせすぎてしまうこと。
大ざっぱに言えばこんな感じだろうか。

むこうがそもそも寂しくなったり人肌恋しくなったりしないような人で、好きな人であろうがそうでなかろうがスキンシップ取られることもかなりの抵抗があるらしい。そしてむこうのことを傷つけることを恐れてすぎている自分は中々お出掛けに誘う勇気も無く時間がただただ過ぎていくし、会ったとしても未だに手を繋ぐので精一杯というヘタレっぷりである。

もちろん、付き合っておいて流石にこんなに気を遣う必要がないことも分かっている。友達に相談しては「付き合っているならもうすこし強めに行ってもいいと思うけどな」と言われることもしばしばあった。こんな風に言ってるとまるでむこうが冷たい人間かのように思われてしまうかもしれないけどそんなことはなくて、こっちが忙しい時には必ず心配してくれるし、むこうがうちのことを好きでいてくれてることだって分かっている。この5年間の経験値が殆ど0に近いような関係だけど、毎日のようにメッセージの送りあいをして過ごしてきた時間は相応の信頼感が構築されていると実感している。

それでも合わないものは合わない。

お互いが忙しい時、自分は普段以上に人肌恋しくなるけどむこうは逆に一人になりたがるタイプだ。寂しくて会いたいと言っても忙しいから無理と断られることだって何度もあったし、寂しくなった時の心情とか手を繋いだりハグしたりしたいっていう話をしても、むこうは頑張って理解してくれようとはしたけどやっぱり難しかった。

あまりにもむこうのメンタルが強くて、自分がとても惨めに感じる日々。むこうに甘えたい気持ちと、でも"彼氏"として強くなりたいと思う気持ちで葛藤して苦しんだことは何度あっただろうか。今でもたまにその葛藤に苛まされる。

むこうが忙しい時、自分はむこうのことを癒してあげたいとか何かしてあげたいと思うけど自分にできることはなくて、何もせずむこうに干渉しないことがむこうのためなんだと気付いたときは自分の無力さを恨んだ。

会えない日々が続いて、苦しい日々が続いて、いっそ別れてしまった方がいいのではないかと何度も思った。でもその素っ気ないところがむこうらしいところでもあり、愛おしく感じたりもして余計に感情がぐちゃぐちゃになった。
別れた方が幸せになるんじゃないか、でもこんな一時的な感情で別れたら後で後悔しそうだな、でも苦しいものは苦しいんだ。もっと気軽に甘えてくれる人の方が、近くにいる人の方が自分は幸せになれるんじゃないか、こんなにもむこうに拘る必要はないんじゃないか。
それでもやっぱり、いつかむこうと一緒に幸せになりたいと思う気持ちが忘れられなくて、結局自分にはむこうしか見えないから別れられなかった。

もちろん楽しかった時だって多いけど、何度も病んで、苦しんでもがいたこの恋模様は本当に羨ましがられるものなのか。
うまく行かないことが多いのは分かってる。だから苦しむことだって悪いとは限らない。でも自分がむこうに抱いてる感情は「恋」と呼べるような優しいものではなくて「信仰」に近いような、もっと気持ち悪いぐらいに重いものだ。

異常なうちらが描く恋模様。答えは未だに見つからない。幸せになるとも限らない。だけどいつか必ず二人で幸せになれると信じて、今日も答えを模索する。