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悲惨な程、笑いになる

何にもやる気が出ない日だった。
気分転換に、かわいい白いくまが乗っているカップケーキを買いに行った。

SNSで見た通りのキュートな見た目に、ウキウキ気分を抑えながら、かわいいくまを慎重に安全に運ぶ。何度もくまは無事か、と目視した。

しかし、帰り道、家まであと数分の所でケーキが倒れてくまの顔面破壊。目も口も鼻も、えぐられてしまった。

見た目が変わっても味は変わらないさ、と涙目でポジティブにケーキを頂く。「美味しいなぁ」と味わっていると、口の中に不快な感触。チョコの包み紙のようなアルミ箔が入っていた。

思わず、「異物混入だー!」と叫び声が腹から出た。

すると、せっかく気分転換で幸せになろうと買いに行ったのに、くまが潰れて悲しんでいたことも、それでも気分を何とか持ち上げて楽しく食べようとしていたことも、全部バカらしく思えてきた。
そして、これまでの自分の感情のジェットコースターが、すごく笑えてきた。
悲惨すぎると、悲しさは一線を越えて笑いになるらしい。

「面白くなってきたぜ…!」

少年誌の主人公のようなキメ顔で言ってみては、また自分で笑った。

何も変わらない毎日がつまらなくて、気分転換をしに行ったら、何も上手くいかなかった。

だけど、これほど感情が激しく動いて、最後に笑えたのなら、ケーキを買いに行った価値はあったのかもしれない。ある意味、自分の中で思い出深い、思い出したら笑えてしまうケーキ屋さんになった。

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