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国の考えるDC戦略と地域におけるビジネス展開:総額400億超え!データセンター整備補助金も!

関連記事はこちらです。

地域でデータセンターの建設が続いていますが、この施策自体は国の支援もあります。

今回は国がどのようにデータセンターの地域での建設、特に地方分散を考え、補助金を出しているかについて説明したいと思います。

まとめ

  • 国はデジタル社会実現のため、ネットワークの強靱化+セキュリティ懸念もあり国内でのインフラ充実を目指し、アジアのハブとなる

  • 「データは21世紀の石油」と呼ばれ、データ拠点が国内にあることが金融・物流と並んだ国際競争力に直結

  • 都心のデータセンターは価格も高く、一極集中になり災害リスクも伴う。地域のデータセンターを建設する際の原価を明らかにして地域分散を行う

  • 地域分散のために、海底ケーブルなどのネットワークの強靱化を実施

  • そのネットワークを活かして、地方分散を実現し、補助額上限で450億円程度の「データセンター地方拠点整備事業費補助金」を展開

  • 上記一部はソフトバンク社が受託


今回は総務省が行った「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」から画像などを引用させていただきます。

デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合

中間取りまとめ資料がありましたので紹介します。

https://www.meti.go.jp/press/2021/01/20220117003/20220117003-2.pdf


なぜ日本にデータセンターが必要か?

まず、デジタルインフラの強化として以下のポイントが挙げられています。

  • 海底ケーブル

  • データセンター

  • インターネットエクスチェンジ

  • それ以外のネットワーク網(ここは別途整備が進んでいる)

今回はデータセンターに注目していますが、付随して出てくる関連ビジネスとしてインターネットエクスチェンジ(IX)の事業が重要になります。地方分散によってサーバーが分散した時に各種クラウドや自社サーバーなどとの接続を柔軟に行うには、IX事業者が重要で、多くの場合データセンターの近くに設置されます。


データ量は年々指数関数的に伸びており、今後生成AIなどによるトラフィックの増加(+AIデータセンター)の伸びは加速度的に進むでしょう。



データセンターの分散化は、単に災害対策だけではなく、データの保有者、保存場所がどこにあるか、という点が特にグローバルセキュリティの側面で重要になります。
データセンターがある場所のデータに国の当局がアクセスできてしまう可能性があり、かつ、これらのグローバルな規範がないことが原因のようです。
恒久的な対策の前に、暫定的な意味でも国内にデータセンターを整備することが重要になります。


「データは21世紀の石油」と言われており、それを国内で保有することによる競争力を保ちたいとのこと+セキュリティ面での懸念払拭を目指し、日本でのデータセンター強化に乗り出すようです。

現在は中国がサーバールーム面積で考えれば1位ですが、アジアのハブとして成長していきたいようです


(余談)つまらないことですが、「データは21世紀の石油」だとか、「半導体は産業のコメ(昔から言われている)」というキャッチコピーは誰が考えているんですかね、コピーライターがいるのでしょうか!


データセンターをどこに配置すべきか?

日本のデータセンター構築をしていく際、どこにデータセンターを配置するかという議論になります。

基本的にはリスクも分散をしていく中で、土地代・災害リスク・電力・確保できる土地があること・交通アクセスなど複数の要因が絡んできます。

地域のデータセンターの代表的な事例である、印西市はどのようにして今の地位を作っていったのか?

前回の記事も併せてご覧ください。

印西市は都市銀行のデータセンター拠点からさらに電力・通信インフラを強化して今まで発展しているようです。このような地道な強みの強化は他の自治体でも参考になるのではないでしょうか。

印西市の事例から考えれば、このような核になる拠点を作ること、その拠点整備のために電力・通信インフラの整備をすることが重要、と語られています。ここに後述する補助金が関連してきます。


データセンターのコスト

さらに地域でのデータセンターを整備する際の原価についても語られています。

非常に興味深く、電気代が25%、減価償却費(いわゆる設備投資費)が50%などとなっています。固定資産税率は3%です。人件費割合が低いことからも電力代と設備関係の投資をいかに抑えるかが、データセンターの構築および地方移転へのインセンティブになるようです。


データセンターをどこに置くか?他の観点は?

データセンターの分散化は重要ですが、さまざまな要素(土地代・電力・災害対策など)が絡むためどの点を重視すべきかがポイントになります。

基本的に考えられている要素に加えて、以下の点を重視すべきと語られています。特に国全体のレジリエンス強化に資する場所、再生可能エネルギー、通信ネットワーク効率化(海底ケーブルなど)が挙げられています。


国・自治体と事業者がどのように取り組むべきか?

設置自体は事業者なので、それを支援するようなネットワークなどの周辺環境の整備を中心に、関東・関西での大規模災害を見据えた対策案も考えられています(関東・関西近辺で地盤が強いところは優位性がありそうです。広島県三原市のデータセンターもそのような流れの一つかもしれません)


データセンターに自動運転・遠隔医療などの応答速度重視のサービスが建設される

データセンター分散は単にリスク分散のためだけではなく、デジタル社会において地域のデータセンターの周辺に産業を生んでいく、という記載があります。

データセンター需要を先取りできる自治体が今度、勝ち組になっていく可能性があります。

「青写真」の「イメージ」なので、あくまで概念的なものなのでしょうか。


今後のアクション:データセンター整備

データセンター整備については2026年からの建設に向けて第一期が始まるようです(まずはソフトバンク社が苫小牧で始めるようです)


今後のアクション:海底ケーブルの敷設

先ほど紹介したようにデータセンターの構築には、ネットワークとの接続性が重要です。特に海底ケーブルの場所が重要です。

以下は参考記事です。

総務省によれば、海底ケーブルを増強していく際に以下のようなデータセンターの位置のあんも出されています。中国地方ですと日本海側強化の意味で、出雲あたりでしょうか。

また、緑のラインの先にあるのが苫小牧のようですがここは後述のソフトバンク社のDCが建設予定です。

このようにネットワーク・海底ケーブルを張り巡らしながらも、ここに書いてある中核DC以外にも補助金を活用した建設が行われるように推察します。


今後のアクション:政府系データの地域DC活用

あくまで政府系データを扱う場合に限るようですが、その用途に限って地域のデータセンターの活用を行う場合、以下の方針があるようです。

ガバメントクラウドを活用し、データセンターの立地の最適かも行うようです。

ガバメントクラウドの採択業者はR6/4月時点で以下の5社です。広島県三原市に入る予定のGoogleも採択されています。

https://www.digital.go.jp/policies/gov_cloud
https://www.digital.go.jp/policies/gov_cloud

今後検討が必要な項目

現実的にはデータセンター分散のために必要な課題はいくつかあります。補助金だけでなく、超高圧送電線設備工期短縮のための手続き円滑化などがアベられています。特に大規模DCの運用においては、追加電力調達がうまく進まないと別拠点の検討にもなるようです。

海底ケーブルについては、漁業権が絡んできます。


データセンター地方拠点整備事業費補助金について

資料の中では本件に関わる補助金の紹介がありました。

全体像の補足をしておくと、こちらの補助事業になります。

https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2023/k230922001.html

https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2023/k230922001.html

少しわかりづらいですが、
(1)の公募はインフラのみ
(2)の公募はインフラ+データセンター整備
です。

JETROさんのサイトにまとめがありましたので引用させていただきます。

https://www.jetro.go.jp/invest/investment_environment/ijre/report2023/ch3/sec6.html


もう少し内容を補足します。

まずはデータセンターの拠点・区画整備として、電力・通信インフラ(海底ケーブルではない)と用地整備に対する補助金が支給されます。補助率は1/2です。全体の総額は総額455億円とのことです。


FAQを見ると、対象地域において、将来的に複数のデータセンターが集積する拠点を目指しているとの記載があるため、それなりに広い土地が必要になりそうです。

https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2023/downloadfiles/k230922001_7.pdf


もうひとつが地方分散を主眼においたインフラの整備です。こちらには海底ケーブル・データセンター・IX(インターネットエクスチェンジ)に対する補助が出ています。

海底ケーブルについては、4/5の補助が出ますので、ほぼ国策ですね。。NEC社が強いようです。


データセンター地方拠点整備事業費補助金の採択事業者

先ほどの補助金については、2023/11/07に採択事業者が決まっており、インフラ整備側はソフトバンク株式会社が採択されたようです。一方、インフラ+データセンター整備は採択者なしです。

ソフトバンク社のインフラ整備は苫小牧と書かれています。

https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/saitaku/2023/s231107001.html
https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/saitaku/2023/downloadfiles/s231107001_1.pdf
https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/saitaku/2023/downloadfiles/s231107001_2.pdf

ソフトバンク社の取り組み

本件の記事が出ております。採択内容にはデータセンターが入っていませんでしたが、今後、自社予算でデータセンターの構築もするようです。

電力もSBパワー社が行うことで再生エネルギーも含めビジネス化も考えているようです。

新データセンターはソフトバンクが掲げる次世代社会インフラ構想の中核拠点として構築する。敷地面積が70万平方メートル、受電容量が300メガワット(MW)超までの拡大を見込む。まずは2026年度に50MW規模のデータセンターを開業することを目指す。生成AI(人工知能)の開発を含めたAI関連事業に活用するほか、企業や大学、研究機関などに提供する予定だ。

 データセンターで使用する電力はソフトバンクの子会社であるSBパワーと北海道電力から供給を受ける。北海道内の再生可能エネルギーの利用を前提とした、地産地消型のグリーンデータセンターとして運用する。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/16242/

また、ソフトバンク社はデータセンター投資において重要なIX(インターネットエクスチェンジ)の会社も子会社にありますので、そちらとの親和性も高そうです。

データセンターについては、自社のサーバーだけでなく、設備のレンタルも行うようです。

データセンターは2026年中の稼働を目指す。延べ床面積や建設開始時期などの詳細は「補助金を受けられるか分からないため、現時点では明かせない」(広報)が、用途としては同社のクラウドサービス用設備の設置とラックやサーバーの顧客へのレンタルの「両方に使うのが基本だ」(広報)とする。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/16135/?i_cid=nbpnxt_sied_blogcard

有識者会合の追加の取りまとめ

さらに追加情報があり、デジタルインフラの整備については北海道(おそらく苫小牧)と、九州エリア(おそらく北九州)の整備が進みそうです。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000218.html

北九州の事例はこちら。


デジタル田園都市構想資料でも補助事業記載あり

先ほど紹介したデータセンターの分散化と補助事業については、デジタル田園都市国家構想の資料にも記載があります。ほぼ同様のものですが、ご参考です。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/dai2/kanren1.pdf
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/dai2/kanren1.pdf

まとめて

データセンターの地域分散は、セキュリテイ側面でのガナバンス強化や災害対策だけでなく、デジタル産業の中心都市選定においても重要な役割を持っていることがわかりました。

今後は、特にネットワーク拠点になる可能性がある自治体は、

自治体側で電力・地盤など誘致活動の強化
→データセンターの地域分散実現と安定的な固定資産税集の増加
→地域におけるデジタル産業の勃興、産業の誘致
→自治体の税収安定・産業安定化による子育てなどへの投資

というサイクルが生まれそうです。

自治体の土地の使い方については、現在メガソーラーなどもありますが、データセンター投資の方が景観整備や将来の廃棄物対応も含めて、招致活動に対して大きなリターンは見込まれると感じます。

参考になれば幸いです!

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