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北九州市におけるデータセンターの過去事例:固定資産税収は増えた?

関連記事はこちらでご覧ください。

先日からデータセンターの建設が自治体に与える恩恵について記事にしてきました。印西市や広島県の三原市にも影響がありそうです。

北九州市においても2027年ごろに着工する大規模データセンター(1250億円規模)のニュースが出ていました。

この案件については、次の記事に譲るとして、過去にもあった北九州市へのデータセンター投資がどのように固定資産税に影響しているか、見てみたいと思います。


結論

  • 北九州市では2008年〜2012年ごろに数十億円規模のデータセンター投資があった

  • 固定資産税への影響は目立った数値には現れなかった


2008年ごろのソフトバンクIDCの建設

2008年ごろからソフトバンク社は

環境対応型のデータセンター「アジアン・フロンティア」

を建設しています。

北九州市におけるデータセンターの建設と展開は、地域経済や技術トレンドに多大な影響を与えています。特に、ソフトバンクグループが2008年にデータセンターを設立して以来、この地域は情報通信技術(ICT)の重要な拠点としての地位を確立しています。

ソフトバンクグループの北九州市へのデータセンター進出は、地域経済に複数の利点をもたらしました。データセンター業界は高い投資と継続的な設備更新が必要であり、これが地域の固定資産税収入の増加に寄与しています。また、新たな雇用機会の創出も見られ、地域の雇用促進に貢献しています

以下のように、低災害、安全対策、DR(ディザスタリカバリー)とアクセスの良さからアジアに向けた戦略拠点として位置付けていたようです。

今回、新設する同センターは、第1期分として 1,000ラック規模2棟を予定、投資額は70億円で、今後は最大12棟までの拡大を検討している。

センター進出について、ソフトバンクIDCは「北九州市は、低災害地域(地震保険の都道府県別等地で北九州は一等地)でありセキュリティや事業継続性の強化に伴う安全対策やディザスタリカバリー(自然災害などで被害を受けたシステムを復旧・修復すること)の対応拠点にふさわしく、また、東アジアに向けた戦略拠点としてもすばらく交通インフラ(北九州空港開港にともない、北九州~羽田 15 便/1 日。沖縄、関西、海外では上海などへの定期便もある他、九州自動車道、東九州自動車道、北九州都市高速道路の分岐点である等)も整っている。なお、北九州市と新日本製鐵㈱の協力も大きく、地域の活性化にも貢献していきたい」と
している。

http://www.kitakyu.tv/kiji/ki-kizi13.pdf

ソフトバンクのデータセンター

現在、北九州には上記のアジアンフロンティアや、北九州e-PORTデータセンターがあるようです。北海道も含め地域的な分散も効いていますね。

https://www.softbank.jp/biz/services/datacenter/

機能としてはAWSのような高機能のものではなく、オンプレサーバーの集約機能、VPN接続などが基本のようです。

https://www.softbank.jp/biz/services/datacenter/

北九州のメリットについても語られています。

https://www.ksrp.or.jp/robo-dx/uploads/eport-b.pdf
https://www.ksrp.or.jp/robo-dx/uploads/eport-b.pdf
https://www.ksrp.or.jp/robo-dx/uploads/eport-b.pdf

レイテンシについても首都圏への近さ、によるメリットを訴求しています

https://www.idcf.jp/datacenter/location/asianfrontier.html?cl=rd_0914

データセンターのルーティングで自社サーバーからAWSなどへの閉域接続や、インターネットエクスチェンジ業者への接続もカバーしていることをウリにしているようです

https://www.idcf.jp/datacenter/location/asianfrontier.html?cl=rd_0914

投資規模:70億円程度か?

IDCフロンティアのプレスリリースを参照すると70億円程度の投資、雇用は20人程度と記載があります。70億の設備投資に比べて、20人の雇用ですから、前回の記事で紹介したようにデータセンターの雇用に対する影響はそこまで大きくないようです。

<アジアン・フロンティア 第一期建設計画概要>
名称:アジアン・フロンティア
場所:福岡県北九州市
敷地面積:約30,000平方メートル
延べ床面積:約 8,000平方メートル
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 一部鉄筋コンクリート造
規模:地上2階、塔屋1階
床荷重:ハウジングルーム1,000kg/平方メートル、UPS室2,000kg/平方メートル
工期:第一期1次工事 2008年 1月〜2008年 9月
   :第一期2次工事 2008年 7月〜2009年 3月
投資金額:約70億円
雇用:当社社員および業務委託を含め20名程度。

https://www.idcf.jp/pressrelease/2008/20081002001.html

北九州市の固定資産税の推移は?

投資金額が70億円ということで、大きなインパクトはないかもしれないが、念の為確認をしておきましょう!

一人当たり固定資産税の推移

RESASで確認してみましたが、あまり変化はなく横ばいのようです。印西市では、20%程度上昇していました。

https://resas.go.jp/municipality-property-tax/#/graph/40/40100/0.0/2021/2/9.944468053424995/33.883409/130.875216/-

人口推移

一人当たり固定資産税ですので、人口が急激に増えていると横ばいになる可能性があります。念の為人口推移も確認しましょう。

https://www.resas.go.jp/population-composition/?pref=40&city=40100&tab=1&year=2020&level=city&lat=33.606613375388086&lng=130.41870117187503&zoom=10&opacity=0.8&left=2020&right=2045

減少傾向となっていますので、固定資産税もそこまで増えていないと想定されます

税収の推移(固定資産税)

最後に、北九州市の決算状況を見て、固定資産税の推移を確認しておきましょう。以下から引用させていただきます。

結論としてはほぼ横ばいです。

H16年=2004年は、761億円程度

H19年=2007年は、731億円程度

H20年=2008年は、730億円程度

その後も横ばいです。最近の数値を引っ張っておくと

R4年=2022年は、723億円程度

このようにデータセンターの固定資産税への影響は一定あるものの、大規模データセンターでないと固定資産税への大きな影響はなさそうです。


各自治体に広がっていた分散型データセンター誘致の取り組み

ICTによるまちづくりの文脈で、地方型データセンターの誘致が過去進んでいた(今でも推進されている)。

以前から、BCP(事業継続計画)の文脈でデータセンターの分散、特に電力懸念などもあり、首都圏以外への展開が進んでいる。

この流れは今後も進むと考えられ、特にメガクラウド(AWSなど)の地方分散はさらに進んでいくと考えられる。

平成24年版 情報通信白書: https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/pdf/n1050000.pdf
平成24年版 情報通信白書: https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/pdf/n1050000.pdf

各地のデータセンターについてはまた別の記事で紹介したい。最近もデータセンター立地の分散は盛んに議論されている。


データセンターの自治体への恩恵を再考する

データセンターは自治体にとって固定資産税増加のメリットがある。他にも情報通信関連企業(例えばソフトウェア開発会社)の誘致も有効とは考えら得るが税収インパクトだけを考えるとデータセンターの方が良さそうである。

法人税での自治体への納税をイメージしても毎年数十億円規模の税収を安定的に行うには、ソフトウェア開発会社も売り上げを1千億円程度を毎年捻出する必要があり(かつ利益も出す)、データセンターと同じくらいの魅力はないのかもしれない。

一方、企業の誘致を行うことでソフトウェア産業の雇用は発生するので一定、メリットはありそうである。


まとめ

今回は、北九州市の過去のデータセンター投資と固定資産税への影響についてまとめてみました。
70億円(大きな投資ですが)規模の投資では、なかなかインパクトのある税収増には繋がらないようです。

一方、北九州市は現在、データセンター誘致を積極的に行なっており、さらに大きな規模の投資の受け入れも行うようです。

そのあたりは次の記事で紹介したいと思います!