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夕方

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夕方のお話です。 日が暮れていく色、一日が終わってしまう時間に、切なさや人恋しさを感じ、自分の想いに気付くようです。
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2020年11月の記事一覧

ロボットみたいな僕

ロボットみたいな僕

 土曜夕方のファミレスはそろそろ混み始める時間だ。僕らはもう一年半くらい付き合っていて周りにも公認のカップルだから、学校のすぐそばの店だけれど気にしない。氷なしのコーラを音を立てて啜りながら、優希ちゃんはスマホを眺めている。

 さっきから、店員さんがこちらをずっと見ている。ドリンクバーだけで長い時間留まっているからだろう。でも優希ちゃんはまだ動きたくなさそうだから、僕はそっちの味方につく。

 

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落としもの

落としもの

 黄色い葉ももうすっかり落ちて裸になったイチョウの木の下を、紺色の学生服がすたすたと帰っていく。その足元はふかふかの黄色い絨毯で、ところどころに銀杏の実が、あるものは潰れて、あるものは綺麗な丸い形が残って落ちている。セーラー服の女生徒は、それらを器用に避けながら楽しげに帰っていく。

 来る途中に買った猿田彦のドリップももうほとんど冷めてしまっている。渋みの増した珈琲が喉をつるりと滑る。

 腕時

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