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「ワンチャン」の使い方

「ワンチャンありますよ!」
−−とは、職場の後輩のセリフである。ワンチャンである。ワンチャン。どうなんだろう。ワンチャンというのは。どうも馴染めない。しかし馴染めないからといって遠ざけていたのでは、何にもならない。ということで、無理して使ってみたのだ。

「やあ、寒いね」
「寒いっすね」
「こりゃあ、降るかもな」
「そうっすね」
「雪、ワンチャンあるかもな」
「え?」
「だから、ワンチャンだよ」
「え、ああ。イントネーション違いますよ」
「なんだと」
「それじゃ犬っす」
「……(コノヤロウ)」

やっぱり無理だった。

でも、考えてみてほしい。ワンチャンは「目上の人が飼ってる犬」の呼び方であり、「王会長」の若かりし日の愛称であり、「ワンタンメン半チャーハンセット」の略なんだから。いまさら「望みがある」みたいな意味で使えと言われても、土台無理な相談なのだ。

試しに口に出してみてほしい。
「ワンチャン」

どうだろう。その響きの滑稽さに笑えてこないだろうか。更にいえば、「ワンチャン」は若者の日常に当てはめるとよりファニーなムードが際立つので以下の例文を見てもらいたい。

「え、あの子とデートの約束?
 まじかよ。ワンチャンあるんじゃね?」

なんで「犬」が出てくるんだ。「あの子」が君ごときに振り向くようなことは考えられない。待ち合わせの場所に待っているのは「犬」だぞ。という警告だろうか。だとしたら余計なお世話だ。犬ならまだいい。「王監督」が待っていたら、どうしてくれるのだ。

「まだ11時台だからさ、ランチ限定20食の
 刺身定食ワンチャンあると思うんだよねー」

だから、なんで「犬」が出てくるんだ。百歩ゆずって「ワンチャン刺身定食」だったらわかる。犬のための刺身定食だ。しかし、刺身定食ワンチャンでは意味が通らない。犬も20匹いるのか。だいたい「犬」が「ある」ってのはどういうことだ。「犬」だって置物じゃないんだから「いる」といったらどうなんだ。

それでも恐ろしいことには、1年もすれば違和感を感じられなくなるのだろう。流行り言葉は、油断がならない。


トップの写真は、警察犬を目指しているシェパードの「エール」君である。大変にお利口なワンチャン。

きょうもお読みいただきまして、
ありがとうございます。

それでは、また明日。

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