「ふつうのカレー」 と 「わしの隠し味」
さあご覧あれ。ここに秘伝の「隠し味」を入れるぞ。長年の研究の果てに、ついに辿り着いた「隠し味」じゃ。ほれ。いい雰囲気になってきたじゃろ。これを入れると入れないでは天と地ほどの差が出るんじゃ。味見してみい。どうじゃ、これがわしの「隠し味」じゃ。すごいじゃろ。
と、いった具合いに、
家でカレーを作ると、やたらに「隠し味」を入れたくなります。果物、スパイス、ヨーグルト、コーヒーに香味野菜。なんらかの「隠し味」を追加して自分の「個性」をカレーに投影したくなるのです。いわばエゴカレー。挙句の果てに「長老みたいな話し方で後世に伝えたい」という訳のわからない欲さえ出てくる。
まさに魔性の料理です。心のうちに潜む自己顕示欲を引き出そうとしてくるのですから。他の料理にはあまりみられない性質です。では、なぜ「カレー」にだけ「隠し味」を入れたくなるのか。「カレー」を魔性の料理たらしめている要素はなんなのか。
それは「市販のルーの懐の深さ」に他なりません。
だいたい、どのような隠し味を入れようとも、豊かなコクとスパイスと油分、すばらしいバランス感を持った「ルー」が、おおらかに受け止め、味をまとめてくれるのです。「隠し味」がきちんと「隠し味」になり、ちゃんと「カレー」になる。そんな懐の深さが作り手の「冒険心」を疼かせ、なんかいろいろ入れたくなるのです。
今回は、そんな「隠し味の迷宮」を抜け出るべく、なんにも隠し味を入れない。具材もふつう。表記に忠実に調理する「ふつうのカレー」を作ってみたというわけです。それが、トップの写真。
使用したルーはこちら。
ひと口食べて驚きました。
「ふつうとはこんなに尊いものなのか」
鍋のなかの全具材が手を取り合い、高らかに歌い、豊かな低音を響かせ、見事なハーモニーを奏でています。完全なる調和。清らかで純粋な、家カレーのあるべき姿。
つまり、ふつうのおいしいカレーです。
食品会社さんが研究に研究を重ねて手間暇をかけて生み出されたカレールーですからね。
隠し味って、ほんとは必要ないんじゃないかな。
コスモ食品さんのルーは香り高くて重たくないので、個人的におすすめ。
きょうもお読みいただきまして、
ありがとうございます。
それでは、また明日。
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