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フー・ファイターズだよ。

音楽を聴くときは、シーンに合わせてアーティストやプレイリストを選ぶ。出勤の時は雄々しいロックや落語が聴きたいし、作業中には無機質なインストゥルメンタルが好ましい。子どもが同じ空間にいるときは、比較的穏やかなジャンルの音楽をチョイスするのが慣わしだ。

しかしある日、子どもを車に乗せて運転していると、何の拍子か「Foo Fighters」がかかってしまった。かなり雄々しいバンドである。なんたってロックの化身「カート・コバーン」と共にブイブイ言わしていたような連中なのだ。その曲も少々、暴力的といってもいいような調子。

こりゃあ7才の女の子にはまだ早すぎるかと思い、私は申し出た。

「ああ、ごめんごめん。ちょっと激しいよな。好きな歌をかけてあげるから、遠慮なく言ってごらん」

すると

「いい。これでいい」
「え?」

−−私は驚いた。なんだ、なんだ。ロックなのか、この子は。スメルズ・ライク・アンダーティーンズ・スピリットなのか。

「えっと。好きなの?こういうの」
「うん。これ好き。なんていう人?」

−−どうやら本当に良いと思っているらしい。もしかしたら、ロックのセンスがあるのかも知れない。とはいえ、教育上どうなんだ。ロックは。不良の道をひた走ったりしないものだろうか。歌詞にも過激な表現があったりするんじゃないのか。

かと言って、ジャズなら良いのか。「わたしね、サブコントラバスサックスが吹きたいの」−−できたらやめてほしい。あんなに大きな管楽器が自宅内で吹き鳴らされた日には、大家から大目玉を喰らうこと間違いなし。退去の憂き目に遭うやも知れん。

逡巡したのち「まあ、聞いてしまった以上は隠すのも、へんだ。ロックが好きならそれはそれで良いじゃないか。センスをのびのびと伸ばしてやることも親のつとめだ」ということで、バンドの名を教えたわけである。

「フー・ファイターズだよ」
「……フードファイターズ?」

フードファイターズ。
これを聞いて、わが子に宿るギャグセンスに確信を得た。


トップの写真は居酒屋「やまちゃん」のラーメンである。もとは屋台であったことでも知られる超有名店、午前3時の一杯。飲んで食っての〆ながら、これがうまくてうまくて、泣ける。

父は立派なフードファイターです。



きょうもお読みいただきまして、
ありがとうございます。

それでは、また明日。

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