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読書会に行った話

よく行くブックバーがあって、そこで仲良くなった男性(33)が「読書会に行くといいよ」と教えてくれた。「読書会」はどうやら、本を紹介し合ったり、ある本についてディスカッションをするらしい。「へぇ、面白そうですね。」と空返事をした。しかし、その男性(33)は「今週の日曜日にやるみたいやから、行ってくれば?参加で今申し込んどいた。」と、言ってきた。
こういう強引なところが好ましい。まあ結婚してる、別居してるけど。

ということで、今日はその読書会に参加してきた。
何の本を持っていったらいいのか随分悩んだ。
悩み倒した末に千早茜の「男ともだち」に決めた。
わたしが死んだら一緒に棺桶に入れて燃やして欲しい本だから語れそうだと思って。

感想はひと言、とっても楽しかった。

自分の好きを受け入れてくれて、人の好きを知るのは心地の良いものだった。
知らない人と話すのは自分がいつものスモールワールドから脱出したみたいで、キラキラしている。

小学生のときに自分を助けてくれた作品なんです、と控えめに出されたミヒャエル・エンデの「モモ」は表紙も中身もくったくたで、ああほんとにこの人を救ってきた本なんだと思った。

俺の話聞いたら、絶対に今日買って帰ると思います。と自信満々に言い放ったアラサー精神科医の紹介した本は長嶺超輝の「裁判官の爆笑お言葉集」だった。

わたしが教師に憧れ、教師になろうと決めたきっかけの一つである重松清の「青い鳥」を紹介した彼女はこれを読んで教師を目指すことを諦めました、と話してくれた。教職の尊さに恐怖を感じたらしい。何故だか分からないけれど、自分がひどく矮小で短絡的な人間なんだと思い知らされた。

死んだ人の小説しか読まないことに決めてるんです、と誇り高い宣言から話し始めた彼はずいぶん尖っていて独りで魅力的だった。坂口安吾の「白痴」を紹介。

読書会がお開きになってから、参加者のうちの2人と一緒に本屋さんに行った。各々が好きな棚の前で立ち止まり、気になる本を見つめながら時間を過ごす。
2人の手には私が紹介した本がありました。嬉しいナ。
坂口安吾が「読んだ、って報告したいから連絡先教えてください」と。トモダチが増えた。

私の手には「裁判官の爆笑お言葉集」
悔しいけれど、傲慢アラサー精神科医の思惑通り。

るんるん気分でブックバーの男性(33)に「かなり楽しかったです。」とLINEを入れる。

「それはちょっと嫌だな」と返信がきて、一瞬だけ胸が高鳴る。オトナブルーを踊りたい。

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