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(連載:就活サバイバルNo.2)「それ、ヤバいパターン」内定ゼロ就活生にありがちな発言とは

<登場人物>

・美希:慶應義塾大学経済学部3年。志望は、“大手企業”。総合商社、広告代理店、大手メーカー、メガバンクなど、手広くやっている。

出身は、仙台。地元の進学校を卒業後、上京。父親は、地元で弁護士をしている。

・麻子:慶應義塾大学経済学部3年。志望は、商社の一般職か、損保のエリア総合職。小学校から田園調布雙葉学園に通う。父親は、大手不動産会社の副社長。

・エマ:慶應義塾大学経済学部3年。慶應NY高出身の帰国子女。外資系金融機関に内定済み。

3人とも同じゼミに所属している。

「ああ、疲れた…。もうフラフラだわ」

企業の説明会を2つハシゴし、OB訪問3件を終えた美希は、体に鞭打って、ゼミの同期会に顔を出した。

本当は一刻も早く帰って、明日の説明会の準備をしたいし、今日のOB訪問のまとめ作業もしたい。だが、ゼミの同期会は、就活の情報収集の場にもなりうるから、参加することにしたのだ。

「美希、おつかれさまぁ」

先に到着していた麻子は、ピンク色のお酒を飲みながら楽しそうに笑っている。

「Hey,Miki. What’s up?」

突然英語で話しかけてきたのは、エマだ。外資系金融に内定済みの彼女は、最近も海外旅行に行ってきたというほどの余裕っぷり。

強めのエマの香水が鼻を刺激する。ふと見ると、彼女はノースリーブにデニムという涼しげな格好をしている。その隣の麻子も、相変わらずのワンピース。

リクルートスーツの女子は、今日も美希だけだった。

「美希、毎日大変だねえ。ちゃんと休まないと、体もたないよ」

そう言って話しかけてきたのは、ゼミの人気者・勇人だ。彼もリクルートスーツで、OB訪問をしてきたという。

勇人は、総合商社志望で、とにかく総合商社のOB訪問を重ねているらしい。しかも、彼の狙いは三菱商事。ラグビー部のコネを使いまくっているとのこと。

慶應幼稚舎出身の勇人。父親は、造船会社のオーナー社長だ。ルックス、家柄、能力。全てを兼ね備えた勇人が落ちる企業など、どこにあるのだろうかと思ってしまう。

「で、美希はどこを志望してるの?」

隣に座った勇人は、ビールを注ぎながら尋ねてきた。

「私、明日も早いから遠慮しとくね」

そう言ってビールグラスを返すと、「ストイック過ぎ。ってか、もたないよ、それじゃ」と、勇人は笑った。

「私は、商社とか広告代理店とかメーカーとか、あとは金融も。今は手広くやってるよ」

すると勇人の顔が少しだけ曇った。

「それ、ヤバいパターンじゃん」

頑張っているのに“ヤバい”などと言われるのは心外だ。美希は、思わず「はっ?」と、怒ってしまった。

「先輩とか見てきたけどさー、大手企業ばっかり受けてる人ってヤバいんだよ。結局、内定ゼロって人多いしね。そろそろ業界絞った方が良いよ。あと、美希の話から、何がしたいのか全然分かんないし」

美希は、分かったように口をきく勇人に腹を立てながら、「あなたみたいなボンボンとは違うのよ」と、心のなかで毒づいた。

しかし、勇人の指摘が本当になるなんて…。


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