ミシュランへの道 やきとりや人生21

甥は反省したのか?しないのか?わからないがしばらくは落ち着いたようだ。Oさんによれば、松戸のMマネージャーにそそのかされて、たまたまやってしまった?そうだ?


〇さんは、まるで甥が被害者であるかのような認識だった。勝手に店の食材、酒を飲み食いして宴会したのは、すべて松戸のMマネージャーが悪かったのだ。そういう結論だった。


それはムリヤリ自分を肯定するしかなかった。もう後戻りできない追い詰められた状況だったのだ。


フロアマネージャーになった甥はレジを任されていた。当然会計のレジに立つのが仕事だった。しかし毎月の売上が違っている?おかしい?と
気づいたのは、盗み食い事件からそう遅くはなかった。Oさんは売り上げ伝票を徹底的に調べた。


田舎の方と言えば、最悪が最悪が重なった。Oさんの父がとうとう病気になって、その後ほどなくして亡くなったのだ。
Oさんとしては、生まれ育った実家の本家で亡くなって欲しかった。本家に父の亡骸を置いて欲しかった。


しかし弟のせいで拒否された。本家で我が物顔で、ふんぞり返っている弟は、父が亡くなったと聞いて行きつけのバーで祝杯をあげたそうだ。それを聞いてOさんは絶望しかなかった。父に対し恨みしかなかった弟にとって、これほど待ち望んでいた時はなかった。


なぜ離婚することになったのか?離婚の原因が全て父のイジメにあったからだと言う。しかし事実は違っていた。度重なる飲酒と暴力、浮気が離婚原因だった。それを知ったのが、残された1本のカセットテープだった。この存在を知ったのは、妹が隠し持っていた。妹はなぜ隠す理由があったのか?


そのテープの内容は、
「お父さんやお母さんには感謝しています。すべて私が悪いのです。離婚したのは、夫の生活態度、多数の暴力、そしてお金の散財、そして浮気です。お父さんお母さん申し訳ございません。他人の私を気遣い、親切にしていただいた事を決して忘れません。夫により精神を患いました。本当の事を知ってもらいたいと思い、このテープに残します。ではさようなら・・・」


◯さんは、このテープを本家にいる引きこもりの甥に聞かせた。亡き母の声を聞いて泣いた。精神に破綻をきたした母の記憶、幼い子を置いて病院にした母の記憶はないと言う。


妹は時々お見舞いに病院に訪れたらしい。
最後に「夫には、恨みつらみしかない」と
いう言葉もあった。
弟は妻の気持ちも考えず、やりたい放題の無邪気な子供のような男だった。


今では、親戚も近寄れない環境にした。母は人質みたいなものだ。
認知症の母は、
「意地でもこの実家から離れたくない」と言う。
母は法律とか財産とか所有権とか理解できない。

弟に悪知恵をつけたのは、通いのスナックらしい。スナックの悪友どもが本家を乗っ取る計画をアドバイスをしたらしい。弟には、それほどの知恵がなかった。


父が亡くなって葬儀をした際、地方新聞に載せないように言ったが、葬儀屋は勝手に訃報者の欄に出したので、多くの人が葬儀場に来た。これが地方の葬儀屋の無責任ぶりなのだ。


訃報者欄は仕方がないのだが、予定外の人数が葬儀場に来ててんやわんやだった。葬儀を終えたが、父の遺骨は一度も本家に帰ることなく、本家のお墓に埋葬された。亡き父はさぞかし無念だっただろう。


フロア・マネージャーの甥は、コソコソとレジのお金を盗んでいたことが発覚した。カメラに映らないように隠しながらの窃盗だった。不信感を持った◯さんは、甥を呼び出して盗んだお金の使い道を聞いた。すると素直に答えた。



その使い道とは?ゲーム課金だった。コンビニに行っては、しょっちゅう課金していたのだ。これにはさすがの◯さんも諦めがついた。もうすでに怒る気力もなかった。ただただ呆れ果てた。そして失望したのだ。大の大人がゲームに課金とか、幼稚すぎるだろう?甥に限らず日本の男たちの現状だと思うとうんざりした気持ちになるもんだ。


この窃盗犯罪を警察に届けるかないか?迷っていた。それもそうだが、身内の犯罪だから大目に見て、目をつぶるしかなかった。妹にも言ったが、息子を悪く言う親はいない。返って◯さんを責め立てた。これにもうんざりしていた。


喫茶店に甥を呼び出し、始末書を書かせることなった。その際、甥は今までにない横暴を見せた。ため込んでいた不満をぶちまけた。
「おまえわよー」と大声で◯さんを罵倒し、バカにした態度であざ笑った。他のお客は「なにが始まった?」と一斉に振り向いた。
そんな甥を冷静に受け止め、始末書を書かせた。甥は始末書にサインする時手が震えていたという。まったく大見栄を張っただけのチワワだった。
これですべてが終わったと◯さんは実感した。


つづく

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