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外資系投資銀行の投資銀行部門とはどういう場所か

最近色々と殻を破ってみようと思い、TwitterとNoteを始めたわけですが、軽い気持ちでつぶやいた以下のツイートを色々な方に見て頂けたようなので、もうちょっと真面目な話をNoteに書いてみようかなと思いました。

これは全て実話であり、おそらく僕と同じく2000年代後半に外資系の投資銀行の投資銀行部門に入社した方であれば、似たような経験があるのではないかと思います。僕はメリルリンチ日本証券、今でいうバンクオブアメリカメリルリンチの投資銀行部門(IBK)に新卒で入社したのですが、かなり自由闊達な空気で楽しくやらせて頂きました。私は三年間だけの在籍で、あとはPrivate Equity(PE)に移ってしまったので、ジュニア時代の話である点、割り引いて頂ければと思います。また、今は働き方改革などで結構変わっているのかもしれませんね。

尚、まだTwitter初めて一週間ですが、投資銀行業界を含む金融業界にお勤めの皆様は、おそらくコンプラやお客様への見え方の関係でおそらく匿名でTwitterをやっている方が多いように思いました。僕もPEにいたら本名でTwitterは厳しかったかもなと思います。

1.とにかくよく働くというのは事実

事実として大変よく働きます。夜はかなり遅いですね、深夜二時から三時くらい、というのが退社時間。勿論オフィスで一夜を明かすことも数えきれないくらいありました。恐ろしいことに、オフィスから人がいなくなったという瞬間を僕は見たことがありません。

僕は睡眠時間をとらないと働けない人だったので、朝は10時前くらいに出社していました。なのでなんだかんだ、毎日5時間くらいは寝ていたと思います。一年目~二年目は、お昼ご飯はデスクで食べ(お昼は社内にあるカフェからデリバリーして頂ける)、夜は近くにあるラーメン屋かコンビニでご飯、それかオフィスの入っていたコレド内でさくっと何かを食べる、ということが多かったように思います。

なるべく避けようと頑張っていましたが、土日も出社することは多かったです。当時は外から社内のネットワークにアクセスするのがとても遅かったので、なんだかんだ土日もオフィスに行って仕事をするのが当たり前だった気がします。特に案件の執行の際の中心メンバーになる二年目後半くらいからは、ほぼ毎週末出社せざるを得ないという状況でした。

2.その分色んなことを学べるのも事実

単純計算として一日に16時間くらい働いて、土日もそれなりに働くので、おそらく一週間で100時間くらいは働いていたのかなと思います。残業なしで九時五時という生活だと、一週間の労働時間は40時間になると思うので、そういう生活をしている人の2.5倍、仕事をしていることになります。

勿論、労働時間は長ければいいというものではないので、この時間で何を学べるのかというのが本質的には大事なのだと思います。個人的に今でも役に立っているのは以下のようなスキルです。

A.エクセルが異常に早くなる(PMになって以来、エクセルで大きなデータを動かすことはないですが、それでも素早くぱぱっと何か分析したいときは便利)
B.何かを調べる能力が高くなる(ピッチといって会社に提案書を持っていくときは結構一から調べなければならないものも多く、リサーチ能力が上がったと思います)
C.英語を読むのが早くなる(私は駅前留学くらいしかしたことがない人間で英語は苦手だったのですが、三年目くらいから逃げきれずに海外案件に入ることが多くなり、異常な量の英文を読んだ結果、英語力が飛躍的に向上した)
D.ビジネスをキャッシュフローという観点から見る癖がついた(ビジネスを評価するときに、自分の頭の中でばばっとP/L-BS-CFを考えられるようになった気がします)
E.いろんな業界に一定程度詳しくなれる(私は法学部出身で、ビジネスには結構疎い学生だったので、おぉー日本や海外にはこんな会社があるのか、と思いながら仕事をしていました)
F.一定程度、経済指標や中央銀行の動向が意味することを理解できるようになる(勿論、リサーチアナリストの方々のように本格的な分析をしたりインサイトを導くことはできませんが、少なくとも何を言っているかは理解できます)

3.プロフェッショナルがいる

これだけ厳しい職場環境なので、プロフェッショナルな態度で真摯に仕事をしている人が数多くいます。こんなものをお客様に出せるかぁぁ!みたいな感じで激昂するシニアの方も当時はいましたし、めちゃくちゃ冷静に提出した資料を突き返してくるような先輩方もいました。皆さんよく言っていたのは、我々は高給取りなのだからそれに見合うパフォーマンスを出さねばならない、ということです。こういったプロフェッショナルな意識で仕事をすることを人生の早い段階で学べたのはよかったなと思います。

あと、当時の外資系投資銀行では外資生え抜きの方、というのはあまりいなくて、日系金融機関から移っていらした方が多く在籍していました。お客様の前で携帯を出すなとか、言葉遣いがなってないとか、派手すぎるシャツを着るなとか、色々と社会人として必要なことを教えて頂いたように思います。一方で、そこまで堅苦しくやりすぎないというカルチャーがあったのも事実で、そういった点で風紀指導的な先輩方は上手にかじ取りをされていたなぁ、と思います。

最後に、常に勉強をせねばならない、という意識を持っている人が多かったです。外資系投資銀行というと派手に遊んでいるイメージかもしれませんが(実際にそういう方もいるにはいるかもしれません)、私を含めて多くの人は空き時間は本を読んで勉強したり、業界研究したりしていました。入社直後にメンターの方から、とにかく気になった本はなんでもいいから買って読め、と言われて、未だにそうするようにしています。尚、このメンターの方は、モデルを組んでいた時に、とてつもなくマニアックな勘定科目をBS上で表現して嬉々とされていて、本当にこの仕事が好きなんだなぁ、と思った記憶があります。

4.転職の"幅"はそんなにでないかもしれない

これは僕の個人的な観測ですが、転職の"幅"に関しては、余りないのではないかと思います。やはり金融、ファイナンスのプロフェッショナルなので、いきなりビジネス側への転職というのは難しく、多くの方は同じ金融業界であるPEやヘッジファンド、アセマネ、といったバイサイドに行くか、同業他社に移るか、というのが私が観測した殆どのパターンです。最近はスタートアップに移るという方もかなり見られますが、事業部に入るというよりはCFOなどやはりファイナンスを軸とした職に就かれる方が殆どだと思います。

私は自分が今一つ何をやりたいのか決めきれずに投資銀行にいった面もあり、ビジネスをやってみる、ということに興味もあったので、実際に転職を考え始めた三年目以降、少し悩みました。結局はファイナンスをベースに事業も見られるPEに行き、MBAを経て、現在はビジネスサイドにいるわけですが、正直、結構回り道をしたなぁ、と思うときもなくはないです(勿論、全ての経験は役に立っていますが)。入社や転職を考える際には、このファイナンスを軸にキャリアを積み上げていくか、若くは、一旦MBAなどの回り道(私は個人的にMBAは素晴らしいので可能な限り皆さん行くべきと思っていますが)を経由してもよいのか、というあたりを軸にすると、考えが纏まりやすいのかなと思います。

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