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訪日インバウンド需要は いつ戻ってくるのか? ~星野リゾートの記事から思考を巡らせる~

月間220万MAUを誇る(コロナ直前まで。。)日本最大級の訪日観光メディア「tsunaguJapan」を運営しインバウンド事業を展開している株式会社D2C Xの中西です。コロナの影響で、インバウンド事業のみでは心許ない中、新たな事業として在留外国人向けの人材紹介事業越境EC事業(主にクラウドファンディング)を目下急速に立ち上げています。

※最後の方に2021年2月に登壇したインバウンドマーケットEXPO2021の講演資料を全て公開しているので、是非最後まで読んでみてください!!
【With/Postコロナを見据えた訪日メディアの成長戦略
~アクセス数80%減少からの再出発~】

先日、日経新聞の記事を読んでいて気になる記事がありました。

新型コロナウイルス禍で消滅したインバウンド(訪日外国人)について「回復には時間がかかる」と述べた。「来訪者は来年から少しずつ戻り、大阪・関西万博が開かれる2025年ごろ、コロナ禍前の19年の水準を超えるぐらいがいい目標ではないか」

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(出典:日経新聞 "訪日客回復には時間、域内観光を重視 星野リゾート代表”)

星野リゾートの訪日客回復予測

「まぁ、そうだよな。」読んだ時の感想としては、こんな感じだった。世界中で繰り返し起こる感染の収束と急拡大、変異株の登場、ブレークスルー感染など、悪い情報に事欠かない環境下では悲観的な予測を立てざるをえない。

この時パッと思い出したのは、星野リゾートREITが半年に一回公開している決算説明会資料のスライドだ。

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(出典:星野リゾートREIT 2021年4月期決算説明会資料)
※余談だが、星野リゾートREITの決算説明会資料は色々勉強になることが多いので、観光業界で働く人は半年に一回(6月と12月)読んだ方が良いと思う。

もちろん星野リゾートREITと星野リゾートは別法人なので、この決算説明会資料を誰が作ったのかは分からない。しかし、ある程度星野さんも関わっていると考えて間違いないと思っているので、そういう意味で言うと、非常に興味深い内容になる。

2021年9月30日付 日経新聞
「来訪者は来年から少しずつ戻り、大阪・関西万博が開かれる2025年ごろ、コロナ禍前の19年の水準を超えるぐらいがいい目標ではないか」

2021年6月15日付 決算説明会資料
「インバウンドは、2023年に100%の戻り(2019年比)

3ヶ月経たないうちに、インバウンド需要の回復予測時期を2年後ろ倒ししているのだ。揚げ足を取る意図は全くなくて、日々刻々と変わるコロナ情勢を踏まえて軌道修正していった結果、2年後ろ倒しの2025年頃ということなんだと思う。経営において、朝令暮改は重要だと思っているので、この辺りの考えの変化は見習うところです。

では、いつインバウンドは戻ってくるのか?

結論から申し上げると、この問いに答える・考えること自体がもはやあまり意味を成さないと考えている。

コロナウィルスを巡る環境は刻一刻と変化しており、来月の状況を予測することすら難しい。ワクチン接種率が8割を超えたシンガポールでは、10月9日に感染者が過去最大を記録した。(正確に情報を伝えると、98%以上は無症状か軽症者であるということでワクチン接種の効果は非常に高いと推測される。) 

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また、最近の国内では、9月のシルバーウィークで人が少し動いたので、10月初旬から中旬頃には感染が再拡大するかもという話もちらほら聞こえたが、10月10日時点では感染拡大どころか、東京は今年最低の感染者数を記録するとなっている

何が言いたいかというと、もはやコロナを巡る情勢を予測するのは非常に難しく、ちょうど1年後の同じ日の天気を予測するような感じである。ほぼ予測不可能な状況下において出来ることはただ一つで、目の前のことに全力で取り組むことである。ただ、その取り組む方向はしっかり考えておきたい。

今後想定されるリスク

観光関連事業者の方であれば、今後考えられるリスクは星の数ほど検討して今に至っていると思うので、何を今さらというところではありますが、先日の震度5を超えた地震で改めて観光関連事業のリスクの高さを再認識し、夜中うなされたのでここに記したいと思う。

・コロナウィルスの蔓延が長期化 or 新たな感染症が登場する (言わずもがな)

・首都直下型地震などの大震災の発生 
→これが一番怖い。観光に限らないがコロナの上に大震災が来たら本当にやばい

・中国や韓国などとの関係悪化
→現在の政治環境において、尖閣諸島時のような中国との関係悪化や日韓関係の冷え込みが継続すると、コロナから回復しても2019年で約5割のシェアを持っていた2か国からの来訪が見込めない。(下記の図を参照)

・台風などの自然災害
→西日本を中心に毎年発生している自然災害が大型化・長期化していることによる観光業への影響拡大が懸念

・富士山の噴火?
→専門家ではないので良く分からないが、ある一定のリスクがあると思っていて、その場合首都機能がほぼ完全に機能しなくなるのと、航空機はしばらく飛べなくなるので訪日客の入国はしばらく見込めなくなるだろう。

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(出典:JNTO訪日外客数)

もう一つリスクというかとても懸念していることは、観光地である各地域の方々の感情だ。東京から人が来るだけで白い目で見られる世の中になってしまったので、国境を開放した時はいったいどうなるのか? 実態は、ワクチン接種済みでPCR陰性の方から入国すると思われるので、東京から来る日本人より圧倒的に安全であることは明らかだが、冷静にそれを受け止められるのか?ここを非常に懸念していて、コロナ禍から観光業が再び立ち上がっていく中で、もっとも解決しなければいけない問題ではないかと思っている。これについては、昨年の8月に一度noteに纏めているので、興味ある方はご覧ください。結論は、情報発信、特にマスメディアが重要だと思っています。

どんな打ち手があるのか?

大前提として、コロナから戻るのはいつ頃だと逆算して動くのはやめることが必要だ。もはや誰にも予測できない中で無理矢理設定しても意味はない。資金調達などの外部の人への説明としてある程度予測は必要だが、実際はほぼ意味がないことが既に分かっているので、建前として持っておくレベルで良いと思っている。

重要なことは、目の前のことに全力で取り組みつつ、コロナが長引いても、大震災が起きても、国際情勢が悪くなっても、自然災害が多発する世の中になっても、事業継続できる状況を構築しておくこと につきる。だからこそ、どの領域・方向性で事業を展開するのか?が非常に重要なことで、コロナから回復するのをひたすら待っているのは少々心許ない。

ここで、我々が取り組んでいることについて、簡単に共有したいと思います。現在、足元の数字は順調に積みあがっており、今年度(22年3月期)はコロナ前の20年3月期の売上とほぼ同規模になってきている。ただし、元々五輪イヤーである21年3月期を飛躍の年と位置付けて事業展開していたため、そこには遠く及ぼない数字ではあるが、厳しい環境下で僅かながら光は見え始めたかもしれないという状況である。以下が実施したことだ。

・顧客ソースを入れ替える (一般企業→自治体)
→同業者は皆同様に取り組んでいるので詳細は割愛する

・観光産業以外へチャレンジする
→具体的には、人材紹介・越境ECにチャレンジしている。背景は講演資料を読んで頂きたい。

以下は、2021年2月に登壇したインバウンドマーケットEXPO2021の講演資料です。スライドは文字を少なめにし、口頭で捕捉する形式にしたので、色々と歯抜けになっていますが、どういった狙いで事業展開を始めたかは分かるかと思うので、時間があるときに是非ご覧ください。

重要だと思っていることは2つで、

・ビジョンからぶれないこと
・観光産業以外の事業を育てること

ビジョンからぶれないことが入社して頂いた従業員のみんなを裏切らないことであると信じているし、観光産業以外の事業を育てることが巡り巡って本業としている訪日インバウンド事業を未来永劫持続可能な形にしてくれると信じている。

最後まで読んで頂きありがとうございました!!

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