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【キャリア】辛かった時の話をしようか

僕は金融業界で投資ストラテジストとして働く20代だ。
投資ストラテジストとはアナリストみたいなもので、マーケットを分析してレポートを執筆することが主な仕事だ。
週半分テレワークほぼ定時上がり中抜け自由という恵まれた環境で、やりたいことにフォーカスした働き方をしており、それなりに充実した毎日を送っている。

だが、キャリア初期は「順風満帆」とは程遠いものだった。
特に1年目は想像以上に辛いことばかりで、1週間に1度は仕事を辞めることを考えていたほどだ。
だが、嫌なことから逃げるために、目標を定めて、着実に努力した結果、希望通りのキャリアを実現することができた。
長い記事になるが、新卒に限らず、仕事が辛い方、仕事から逃げたいと思っている方はぜひ最後まで読んで欲しい。


どうしてその会社に入社した?

就活当時、経済学部に通っていたのもあって、「経済や金融の知識を活かした仕事がしたい」とぼんやり考えていた。
元から内向的な性格もあって「営業はやりたくない」「願わくば他人と話さなくても済む仕事をしよう」と我儘な(?)願望を抱いてもいた。笑
最終的に内定を受諾した会社は「店舗で数年間経験を積んだ後で本社で働く」というキャリアパスを提示しており、それが自分の希望とマッチしていたこと、
そして金融機関らしくないマイルドさにも惹かれて入社を決意した。

当時は「本社でディーリングかベンチャーキャピタルでもやれたらいいな」と考えており、
店舗での数年間は「まったり過ごすことができるモラトリアム」くらいにしか捉えていなかった。
後になって、そのモラトリアムが想像以上の地獄だったことが判明する。

①予想以上に苛烈なカスハラ

集合研修を終えて、店舗に配属されたのが4月下旬。
当時はキャリアパスの一環として、総合職はひとまず全員窓口に配属されることになっていた。

朝礼でやる気満々の挨拶をかまし、同じ店舗に配属された同期2人とともに先輩や上司の方に挨拶した。
夜には歓迎会に参加し、やる気はピークに達していた。
そんな熱意にあふれたフレッシュマンである僕は、あろうことか、配属翌日から5日連続でお客さんに怒られることになった。

  • 一度で要件を聞き取れず、「もう一度よろしいですか?」と訊き返すと、「いいからさっさとやれよ!」と怒鳴られる

  • 知らないサービスについて質問され、「私には分かりかねます」と答えると、「何だよ役立たずだなあ!」と怒鳴られる

  • ATM前で「この機械が払込書を読んでくれないのよ!何であなたたちはいつもこうなの!?」と言われる(実際は簡単に読み込めた)

週末を迎えた頃には心身ともに参っていた。
直後にゴールデンウィークに突入したこともあり、
「こんなことをあと11ヶ月も続けるのか……」
「どうしてこんな会社に入社したんだろう」
と悶々とした思いを抱えたまま休暇を過ごしていた。
友人に愚痴を吐き出したかと思えば、転職サイトを眺めたり、逆にeラーニングでクレーマーの対処法を学んだり、DaiGoさんのYouTubeでメンタルを保つ方法を学んだりしていて、今になって振り返るとかなり情緒不安定だったと思う。笑

週一ペースで理不尽な目に遭う

その後も1週間に1回ペースで理不尽な目に遭った。

  • 「俺のこと笑ってただろ」と因縁をつけられて1時間近く説教される

  • できないはずの手続きを「いいからやってよ!黙ってやりなさいよ!」と泣きわめかれる

  • 「電話で予約したんだけど」と言われたので、名前を伺うと、「いいからとっとと担当者呼べよ!」と怒鳴られる

気分がムシャクシャしたり、沈んだ時は、紙に感情を書きなぐったり(エクスプレッシブライティング)、「奥さんに怒られたんだろうな」と勝手に解釈したりして(リアプレイザル)、荒れ狂う感情の波をなんとかやり過ごしていた。

会社としてもカスハラへの具体的な対応方を提示していなかったため、ひたすら堪え忍ぶ以外に選択肢がなかった。

なぜ銀行でカスハラが多いのか

ここまで読んだ方で、「なぜそんなにカスハラが多かったの?」と疑問に思われる方もいると思う。

今やほとんどの手続きはネットやATMで済ませられる時代だ。
ゆえにわざわざ銀行の窓口に来るお客さんは、だいたいニ種類に絞られる。

  • 窓口でしかできない手続きがある人

  • ネットやATMの使い方が分からない人

前者はともかく、後者となると高齢で頑固な方が多かった。
誤解のないように補足すると、もちろん高齢でも優しいお客さんも多く、暖かい言葉を頂いたことも一度ならずある。
だからこそ1週間に1回は受けるカスハラが余計にメンタルに堪えた。

長い待ち時間も原因の一つだろう。
当時は事務ミスをすると、その分営業成績から減点されたため、管理者は特に事務ミスに厳しかった。
ゆえに、一つ一つの手続きに時間がかかり、結果としてお客さんを長く待たせることになる。
おまけに、僕が配属された店舗は関東でも指折りの巨大店舗で、来客数が多いことでも有名だった。
受付から手続きを終えるまで1時間以上お客さんを待たせることもざらにあった。
どんなに忍耐強い人でも、文句の一つや二つは言いたくなるだろう。

②やりがいのない仕事

残念なことに、仕事のやりがいはまったくと言っていいほどなかった。
会社指定の制服を着用して(これがまた地味にダサい)、マニュアル通りに事務処理を進め、ロビーでお客さんの案内をする。
週明けはATMがエラーを起こすため(大抵、誰かが間違えて外国の小銭や紙くずを入れている)、その対応に半日を費やし、残処理をしていたらもう半日が潰れる。

同期は投資銀行やコンサルでバリバリ働いている人が多かったからこそ、会うたびに劣等感が大きくなっていた。
「自分だってスーツを着て仕事がしたい」「パソコンでエクセルやパワポのスキルを身に着けたい」と思いながらも何もできずに、焦りだけが募っていた。

さらに嫌だったのは窓口業務がチームプレーであったことだ。
営業時間が終わると、チーム全員で銀行内の金額を突合し、書類を確認しなければならなかった。
早く帰るためには、自分から仕事を積極的に引き受けて、終わらせなければならない。
元から協調性がない僕には、これが本当に苦痛だった。
「将来はほぼ一人で完結できる仕事がしたい」と思いながら、山のように積まれた書類をチェックする毎日だった。

③人間関係も悪い

さらに救いようのないことに職場の人間関係も悪かった。

なぜか僕を目の敵にする先輩

彼女は僕より4~5歳上で、化粧が濃く、声が酒焼けしていた。
彼女はなぜか窓口未経験らしく、他の先輩から仕事を教わっていたのだが、メモを全く取ろうとせず、同じ質問を何度も繰り返していたらしい。
自分がミスをしても謝ろうとせず、お客さん相手に開き直るシーンを一度ならず見かけた。

僕は配属直後から、そんな彼女になぜか目の敵にされた。
恐らく「顔が嫌い」とか「喋り方が嫌い」とか、何かしら理由があったのだろう。
業務上の質問でさえも答えてもらえなかったり、本来僕がやるはずではない仕事やミスを押しつけられたりした。

ある日、さすがに我慢できなくなって反論したところ、
彼女はウソ泣きしながら自分が被害者であるかのように周囲に語っていたらしく、
他の先輩伝にそれを聞いた時は「こんな意味不明な人もいるんだ」と唖然とした。

夏に本人が異動になったおかげで嫌がらせはなくなったが、苦い記憶の一つだ。

パワハラ気質な部長

定年退職間近な部長はパワハラ気質で、彼には何度も理不尽な理由で怒られた。
教わった通りに並べた書類を「順番が違う」という理由で怒られた時は、さすがにへこんだ。

今の僕なら堂々と言い返したり、場合によっては内部通報窓口に駆け込むだろう。
だが、当時社会人1年目だった僕は彼に歯向かう自信も勇気もなかった。
「何をしても無駄だ」という、ある種の学習性無力感に苛まれていたんだと思う。

ちなみに部長は自分には甘く、スマホを眺めたり、居眠りしたり、お気に入りの女性社員と話したりして一日の大半を潰していた。
そんなに暇なら「書類の順番くらい自分で直せよ」と声を大にして言い返してやりたい。笑

日常的に陰口を言う上司

当時、窓口には20人前後が働いており、男性は部長と自分を含めて3人だけで、残りは全員女性だった。
陰口を好む人も多く、

  • 何かミスが起こると「◯◯さんってこういうところあるよね」と、暗に人格を非難する

  • 外国人の方が書いた書類を見て、「日本に来てるのにこんなのもマトモに書けないんだ」と呟く

  • 以前店舗にいた先輩がNISAの口座開設を断ったことについて、「普通、NISAとかカードの営業くらい、自腹切って店舗の成績に貢献するよね」と当たり前のように言う

など、とても良好な人間関係とは言えなかった。
「自分も陰で何かしら言われてるんだろうな」と思いつつ、それでも嫌われるのが怖くて、常に周囲の顔色を伺いながら過ごす毎日だった。

明確になった二つの価値観

ここまで、いかに社会人1年目が辛かったかを書き綴ってきた。
だが、尋常じゃない辛さのおかげで、二つの価値観に気づくことができた。
それは「専門性をつけたい」「一人でできる仕事がしたい」というものだ。

①専門性をつけたい

専門性をつければ、代えがきかない人材として、本社に異動した時にその部署に長く留まることができる。
結果として、予想外の異動で店舗に飛ばされるリスクをグッと下げることができる。
だからこそ、伝言ゲームになりがちな企画系の部署ではなく、経済や金融の知識を活かした、専門性の高い部署に行こうと考えた。

②一人でできる仕事がしたい

当時の僕は人間関係で悩みを抱えていたため、できるだけ一人で完結する仕事がしたいと考えていた。
元から協調性がない僕にとって、チームプレーよりもソロプレーでできる仕事の方が性に合っていたというのもある。
1年目で自分は仕事が早いことに気づいていたため、周囲にペースを合わせるのももうコリゴリだった。

価値観をもとに行動する

この二つの価値観に従って、僕はディーリングリサーチを志望した。
そしてそれらの部署に行くために、役立ちそうな資格を片っ端から取得した。
以下、社会人2年目までに取得した資格リストだ。

  • FP技能検定2級

  • 証券外務員(一種/内部管理責任者)

  • 生命保険募集人(一般/専門/変額)

  • 日商簿記検定2級

  • TOEIC L&R 935

  • TOEIC S&W 330

  • 銀行業務検定財務2級

  • 銀行業務検定税務3級

  • 銀行業務検定法務3級

  • 銀行業務検定金融経済3級

  • ITパスポート

  • 英検1級

土日の午前中はほぼ全て勉強に充てたが、不思議なほど苦にならなかった。
むしろ「自分の目標に近づくための時間」として楽しんで勉強していたくらいだ。

2年目冬に行われた人事面談で、取得資格や営業成績が評価され、3年目という早い段階で、ディーリングルームに異動することができた。
しかもディーリングルームは志望者が多かったにもかかわらず、だ。
希望通りに異動することが決まったときは思わず泣きそうになった。笑

教訓:辛い出来事に意味を見出す

新卒1年目は想像以上に辛かったが、だからこそ価値観を明確にすることができた。
実直に努力したことで、ディーラーやリサーチという希望通りのキャリアを歩んでいる。
今でも仕事で辛いことはたまにあるが、「あの時に比べたら大したことないな」と思うとすぐに立ち直ることができる。
すべて、あの「地獄の1年」を乗り越えることができたおかげだ。

だが、これは「石の上にも三年耐えろ」という類の話ではない。
ブラック企業に勤めている人、パワハラに悩まされている人、「仕事が向いてない」と感じている人は躊躇せずに仕事を辞めて欲しい
景気は悪くないから、再就職先だってすぐに見つかる。再スタートはできるだけ早く切った方がいい。

この記事を通して僕が伝えたいのは辛い出来事に意味を見出して欲しいということだ。
辛い出来事は自分の価値観を明確にしてくれる。そして、人生を変える行動を起こすきっかけにもなりうる。
トラウマに意味を見出すと、回復が早くなり、その後の人生の幸福度が上がるという研究結果もあるそうだ。

仕事に悩みを抱えている人、逆境や不安に押しつぶされそうな人は、ぜひそこに意味を見出して欲しい。
そして目標に向かって新たな一歩を踏み出して欲しい。
それがどんな一歩であれ、あなたが熟慮した末の選択であれば、それは人生を変える一歩となるはずだ。

こんな長文を読んでくれてどうもありがとう。
願わくばこの記事があなたの支えになることを願うばかりだ。

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