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世界の麹と日本の麹・なぜ日本の麹は麹菌?

今まで、日本の発酵食品の独自性ということを伝えてきたので、今日は、『世界にも麹に相当する物はあるんだよ』という話をしたいと思います。

世界のコウジの種類

ここではコウジ(←この箇所以降、敢えてカタカナで書きます。)は、「穀物に微生物を生やして発酵のために使うもの」ぐらいに定義しておきます。

このようなコウジは、東アジアを中心にみられます。中国ではコウジのことを『曲』という字を当てます。韓国では『ヌルク』、タイでは『ルクパン』、フィリピンでは『ブボット 』、 インドネシア・マレーシア・ベトナムのあたりでは『ラギー』、ネパールやブータン、チベットなどの山岳地帯では『ムルチャ』などと呼ばれるものがあります。

いずれも、穀物に微生物を生やして、その微生物が出す酵素の力を、お酒や調味料などを作るのに使います。日本の発酵の特色と同じ並行複発酵に相当する発酵法を行っている地域もあります。むしろ、日本に伝来元とも言えるかもしれません。

日本の麹と世界のコウジの違い

さて、世界のコウジと日本の麹は何が違うのでしょうか?それは、そのものズバリ、繁殖させる微生物が違います。そして、その違いは、穀物の摂取方法によるところが大きいです。

日本では、穀物=米を炊飯して食べます。それに対して、多くの地域では穀物は潰して団子や餅状にして食べます。おそらく、どこの地域でも、最初の発酵食品は偶然の産物だと思います。ほったらかしにしておいたら、なん化微生物が湧いてきた、という感覚。

そこで、日本は炊飯したお米をほったらかしにしていた、他国ではすりつぶして固めた団子や餅状のままほったらかしにしていた。これが大きな違いを生みます。

炊飯したお米ということは『熱が通っている』そして、『一粒一粒の間に隙間がある』という特色になります。一方(炊飯する前の)穀物を潰した団子や餅は『加熱していない』『隙間がなくみっちりしている』という特色。

そうすると、どうなるか。生える微生物が異なってきます。日本の炊飯したお米の場合は『熱で変性した原料を好み』、空気の通り道があるため『空気(酸素)を好む』微生物が繁殖しやすく、他国の餅や団子状の穀物には『生の原料でも良く生える』『空気や酸素を好まない』微生物が繁殖しやすくなります。

そのため、日本では麹菌という『加熱した原料によく生える酸素を必要とする微生物』になり、他国では反対の環境を好む微生物(リゾープスと呼ばれるものなど)が自然と選ばれるようになってきました。

そして、その『加熱した原料によく生える酸素を必要とする微生物』とは、まさに、私たちが今使っているコウジカビ、麹菌なのです。麹菌は日本独自の菌である、というような表現を見受けますが、それは、こんなところに由来していたのですね。

もしも、日本人も、千年以上前、稲作が広まったときに、お米を「炊飯して器に入れて食べる」でなく、「生ですりつぶしたあとに団子にして食べる」という食べ方で広まっていたら、今の麹菌は繁殖しなかったし、味噌や醤油、お酒も、全く違う微生物で、全く違う製法だったかもしれません。

(書いてて思いましたが、なぜ、日本では団子や餅にならなかったのか、今度調べとこうと思います。)

今日の話はここまで。

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