見出し画像

『正しい家庭』より『温かい家庭』

以前、こんな記事を書きました。

さて、ここで、一旦立ち止まって、そもそも、なぜ『正しい』が求められるのか、というところで、最近考えが深まってきたことに

『正しい家庭』があるから、というのが、深淵にある理由ではないかと思いいたりました。

『正しい家庭』があり、
『正しい家庭』で行われるべき『正しい家事』があり、
『正しい家事』の中に『正しい家庭料理』があり、
『正しい家庭料理』の中に
『正しい発酵食品の使い方』がある。

そんな、連鎖があるのではないか、と言う風に思いました。

『正しい家庭』とは



私自身は『正しい家庭』というのが、そもそも、何を持って正しいとするのか、と思います。祖父母健在、父母、子ども2人みたいな家庭がそうなるでしょうか。

でも、世の中色んな家庭があります。『ステップファミリー』とよばれる家族、あるいは、『家庭』は必ずしも『親子』だけではありません。夫婦だけの家庭もあります。兄弟だけの家庭もあります。

そもそも、肉親や血が繋がっている必要はあるのでしょうか。なんらかの事情で、養育者がいない子どもを、預かり育てていくこと、そこには『家庭』があると思います。

もちろん、子どもと養育者の関係だけでない関係もあります

元アイドルのアラサーの女性が、56歳の男性と一緒に住んだ生活を書いた大木 亜希子さんのエッセイは、淡々とした筆致ながら、心地よい感動を与えてくれますが、ご本人様がどう思われているかは別として、『家庭』と呼べる関係だったと思います。

『正しい家事』とは

さて、『正しい家事』とはなんでしょうか。「手作り」で「丁寧で」、常に部屋が整っていて、洗濯や掃除が行き届いていて、、、、そういう状態が「正しい家事」のイメージでしょうか。

佐光紀子さんの『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』という書籍の中で、仕事をしている主婦’(有職主婦)が、専業主婦に比べて幸福感が低いという調査結果を基に、こう指摘しています。

専業主婦はごく少数しかいない。そんな人たちの生活を前提とした「 手づくり礼賛」とそれにまつわる「丁寧な暮らし」は、多くの生活者 には縁遠いのが現実だ。 そんな暮らしをメディアがあおることで、それが実現できない自分の現状へのフラストレーションが高まるとはいえないか。 専業主婦と有職主婦で幸福感に差が出るのは、こうした「主婦のあるべき姿」像と自分との乖離や、本来あるべき主婦業をまっとうしていないという周囲からの批判といったことも遠因ではなかろうか。

と、問題提起し、日本の家事の過剰さを指摘していきます。

例えば、「温かい朝食」というのは食文化指摘にはごく最近であることを指摘したうえ、このように書かれています。

朝食は温かいご飯に味噌汁、主菜に漬け物に……というのは、旅館など特殊なところならいざ知らず、庶民の食卓事情としては、あったとしてもかなり最近の傾向だ。忙しい朝、なにも温かいご飯を用意する必要もなさそうだが、「早寝早起き朝ごはん」を提唱する国民運動のウェブサイトでは、ハードルの高い「主菜、副菜を取り入れたバランスのとれた食事」 を推奨している。なぜ、お茶漬けや冷やご飯に卵かけで十分だと言わず、わざわざ大変な方向で国が食事のあり方まで指定してしまうのだろう。文化の継承という意味でも、手軽な栄養補給という意味でも、お茶漬け、卵かけご飯で十分ではないか。

昔の食卓では、前日の冷えたご飯にお茶漬けや卵掛けご飯ぐらい、何故、それで充分としないのか、と、朝食だけでなく、様々な事例を紹介し、疑問を提示しています。

私も、賛成です。『正しい家事』を追い求めるから、辛くなるのだと思います。

『正しい家庭料理』とは

『正しい家庭料理』とは何か。それは、私が言うよりこの人に登場していただくことが何よりだと思います。

土井善晴さんの大ベストセラーから

・「日常の料理では手を掛ける必要はありません.家庭料理は手を掛けないもの」
・「手の掛からない、単純なものを下に見る風潮がお料理をする人のハードルを上げ、苦しめることになっている」

と、心強い言葉を幾度も表現を変えて述べられています。そして、あくまでも「手作り」ということには拘りながらも、こう述べられています

 親が作ったものか、子どもたちは簡単に見分けてしまいます。何も言わなくても、親のすることはみんなお見通しだと思います。なぜなら、それまでにお父さんやお母さんが頑張ってきたおかげで、子供たちは多くのことを身につけてきた、だから気づくようになったのです。そして、何もいわない方が良いことも、今もお父さん、お母さんが一生懸命していることも、子供たちはちゃんと分かっているのです

と。

それが、とてもよく分かる動画があるので紹介します。

お笑い芸人アンガールズの田中卓志さんが、ある番組で、母親のお弁当のコンテストがあったとき、自分の母親の作ってくれた弁当に冷凍食品が入っていたことを指摘されたときのコメントがとても素晴らしいです。

「あのね、マジでうちのお母さんは看護師でずっと忙しかったのよ!三交代で一生懸命やってる中で作る弁当だから冷凍食品も入ってくるわけよ!この弁当が身長を一番伸ばしたんだよ!」

田中さんが当時の収録を振り返ったエッセイは2022年のベストエッセイにも選ばれました。下記のリンクで読むことが出来ます。

アンガールズの田中卓志さん、そして、育てられたお母様、とても温かい人柄が伝わります。『正しい家庭』はないと思いますが、とても『温かい家庭』を築かれていらっしゃって、素敵だなと思います。

発酵食品も『正しく』に拘るよりも、気持ちとして『温かく』使って欲しいと思います。

この記事が参加している募集

家事の工夫

最後までご覧いただきありがとうございました。 私のプロフィールについては、詳しくはこちらをご覧ください。 https://note.com/ymurai_koji/n/nc5a926632683