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地方創生は経済を「内向き経済」「外向き経済」に、組織も担当者も分けて考えるべき【前編】

地方創生に関する話。地方の経済の活性化は2つの議論があります。それは、「地域内で完結する経済を厚くする活性化」と、「地域の特徴をサービスや商品として地域外から収入を得る活性化」の2つです。

箱根町などのような、長く歴史的に観光で食べてきた地域という例外を除いて、企業に例えれば、基本的には、前者が既存事業、後者が新事業創出に該当します

私は地域が活性化するためには両方必要と思います。日々の暮らしが豊かになる実感は、地域の人が地域のものを売り、地域の人の収入が増え、地域の人が使ってもらう、顔の見え合う経済圏の中にこそあります。

閉じた経済の経済規模は基本的には人口比例。人口の減少、労働力人口の減少とともに衰退していきます。この局面を変えるためには、後者による新産業の創出が欠かせません。

企業に例えれば、既存事業をしつつ新規創業を同時に行うようなことが地域経済のマネジメントにも求められているわけです。


既存事業をしつつ新規創業を同時に行う組織

組織の分け方の経営学的な理屈は、こちら田所雅之さんの『御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学』を参考書としてあげさせていただきますが、要するに『既存事業』と『新規事業』は考え方が違うので組織を分けるべきという話です。

ドラッガーも

『イノベーションの仕事は、既存の事業から分離して組織しなければならない。イノベーションの仕事を既存の事業を担当する人に行わせるならば、失敗は目に見えている。』

と、述べています。

では、なぜ失敗するのか。よく言われるのが0→1のマネジメントと、10→100のマネジメントは違うと言う話。さらには、地域の内向き経済はむしろ『衰退を如何に食い止めるか』を志向するので、10→10だったりもします。

既存事業の価値観はまさに「今、目の前にある既に走っている事業を如何に上手にやるか?」という「今までの積み上げによる改善」の思考が効くところ。また、今走っていることなので、今日明日にでも結果を出さないといけないため、より確実で安定的な成果を目指しています。リーダーというよりもマネージャー、管理者が能力を発揮する場面が多い。いわば、目の前の足下5メートルの話になるので、大きな異論も出にくい状況とも言えます

それに対して、新規創業は「未来に向けて新しいことを生み出すイノベーション、改革」の思考になります。様々なアイデアをだし、アイデアには当然失敗もあり、一つの案に成功も失敗もあり得ます。だからこそ、賛否両論、様々な意見が出やすく、また、結果についても不透明で長期戦になります。まさに、目の前の足下5メートルから視点をあげて、1キロ、2キロ先を見通すことができる人材と組織が必要です。

ここまで書けば分るかと思いますが、これを、同じ組織の中で両立するのは無理です。評価基準から変えなければいけない。せっかく長期的に成功も失敗も含む色んな事業をやろうとしても、旧来の既存事業型の評価基準で人事考課を測ったら、結局挑戦が生まれなくなります。管理に向く能力、管理者を育てる評価マネジメントと、創業に向く能力、創業を育てる評価マネジメントは全く異なります。

地域に既存事業と新規事業を分ける組織を

ところがです。地域を支援する地域の金融機関や、会議所などの組織体、市役所の産業創成部、あるいは民間人を入れた産業創成の委員会などで、これを強く意識しているところは、余りないように思います。

既存の産業振興課の1パートとして「まちの新産業創造グループ」みたいなのがあったり、市役所が意見を聞くのも、これまで地元に大きく貢献してきた「既存事業経済圏」出身を「経済界代表」として登用することも多いのではないでしょうか。

それが決して悪いわけではないです。「地域内の経済を強くする」ためには、当然、地域で大きく雇用し、地域に対して商品やサービスを提供する人が担当するのが筋が良いし、そういう地域の事情がよく分っている人に意見を聞くべきです。ただし、「地域に外貨を獲得する」のであれば、「地域の外の事情に詳しく、地域の外からお金を獲得する感覚を持っている人」に話を聞くべきです。

地域企業を後押しする会議所などの組織体や、地銀、信金、信組さんなどの地場の金融機関も、これまで「地域内に商品やサービスを提供してきた事業者の支援キャリアを積んできた人」を、次長とか課長とかになったタイミングで「さあ、新規創業やりなさい」になっていて、しかも、一方では支店の中で既存事業分野の面倒を見ている、また新規創業と既存事業で人事評価のコンセプトを分けていないという組織慣行だったりしないでしょうか。

と、書いたところで、次回は「地域の外貨を獲得する企業のための支援として、役所や地域組織、地場の金融機関に望むこと」について、書いていきたいと思います。

【追記】 次回を書きました。
https://note.com/ymurai_koji/n/n7e8c1165d1c5


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