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退職雑記 東京編

師走の東京で遊んできた

おおよそ5年ぶりに訪れた東京、「やっぱり何もかも規模が違うな〜」というのが率直な感想だった。
人もお金も、それらに触れるチャンスの多さも。
コロナで人が出歩かない期間があったなんて、本当に信じられない。

11月末で東大阪の会社を退職して2週間ほどたち、ぶらりと来てみた。
この日は誰々に会うと決めてから、その間に、行ってみたいお店や展示をはめこんでいく形で計画を立てる。
(最終日は体力が持たず、予定を半日繰り上げて帰阪。もうすっかりおっさんだ・・・約束してた友人ごめん)

「今回、東京で思ったことを、龍一さんの言葉で書いてみてほしいなぁ」

旅も終盤に差し掛かった夜、ライターの三浦希くんが言ってくれた。
彼と実際に会うのはまだ3回目くらい。
それでも、あえてこういう言い方をすると「ものすごくいいヤツ」で、僕はそのグッドバイブスのとりこになっている。
きっと、彼の周りの人たちもそうなんだろうなぁと、会うたびに思う。
SNSで知ってファンになり、彼が関西に出張に来ていたタイミングで、ビビりながらDMを送って、大阪で飲んだのが始まりだった。

【補足その1】
彼が取材を受ける側に回っている記事。
少し前のテキストだから今と状況は違うし、価値観もアップデートされてると思うけど、それでも人柄が伝わるインタビューです。
(記事冒頭では遅刻のくだりがありますが、今回、時間を指定した僕の方が遅刻したことは、読む人にきちんと伝えておきたいと思います…)

【補足その2】
ことしの彼の仕事で、敢えて一つに絞ってお勧めするなら、僕はこれです。
話し手と聞き手の関係性が、ただのそれではないことが感じられながら、読み手(僕たち)が座る椅子が用意されているような空気感。
このインタビューを記事として成立させたチームも、きっと素敵な人たちなんだろうな。

WHAT WILL YOU BE? 画家・落合翔平がエキシビジョン『THIS IS OCHIAI SHOHEI』を終えて見据えるものとは
https://www.daytona-park.com/freakmag/edited/4967/


尊敬する書き手からの「書いて」は、身に余るリクエストだが、これはきっと激励だ。
真に受けてみようじゃないか!

帰りの新幹線で書き出したスマホのメモをまとめてみる。

ざくっと自己紹介

鳥取生まれ、大阪在住。35歳。
地方紙の記者から、7年前にアパレル関連のメーカーに転職。2023年11月末に退職。
お酒が好きです。服と音楽とアート、デザインに興味があります。

それでも会いに行くマン

退職後のキャリアは、このテキストを投稿した12月下旬時点でもノープランだ。
久しぶりに会いたいなぁとパッと浮かんだ数人に連絡を取った。
旅の途中で気づいたのは、みんな肩書きがバラバラで、狙ったわけじゃないけれど、それはすごくラッキーだった。

ただひとつ、うっすらと不安もあった。

もしかして彼らの話を聞いて、ある種のみじめさや嫉妬を抱くんじゃないか。
ともすれば顔に出ちゃうかもなぁ。
変な雰囲気なっても(自分でまいた種なのに)、それガラッと変えるような腕ないぞ?

会社員、フリーランス、経営者。
もとより東京の人、よそから上京した人、同じ地元の幼馴染。
みんなそれぞれの舞台でバリバリ活躍している。

まぁ・・・自分はそういう人に惹かれる性分だし、シンプルに「会いたい!」と思ったし、まぁ出たとこ勝負か!
と半ば投げやりな自問自答を繰り返して会いに行った。

集会所、あるいはばあちゃんち

希くんに駅前で会うや、「田舎の集会所みたいに飲める店があるんですよ」と案内してもらう。
畳の小上がりに、脚が太い飴色のちゃぶ台が並ぶ。
そのうちの一つを挟んで乾杯。
これ、ばあちゃんちで「祭り」のときに使ってたテーブルだ、懐かしい。

最近見聞きしたものの話や近況報告をしつつ、お店の雰囲気の良さも相まって、すっかり調子が良くなってしまった。
気づいたら、これまでの経緯や今後のあやふやな展望、さらには今回の滞在の振り返りなんかを語っていた。
それはそれはつらつらと。笑

そんな夜を真ん中に置きながら、東京で出会った言葉たちを記憶の中から手繰り寄せて、あらためて自分語り。
よければお付き合いください。

くるり、ビーバー、竹原ピストル

毎日2万歩近く歩き回った。

ミュージシャンが「東京」の曲を作り、歌う。
なるほど、彼らを掻き立てる理由は、いくらでも転がっている街だと体感した。

自分なら何がきっかけでペンを取るか?
少なくとも今の自分は、なのだけど、みじめさや、自分だけ止まってしまっているような不安感が、動機になってしまうと思う。

5日間、こんなにまとまった期間滞在して歩き回るのは初めてだった。
話には聞いていたが、本当にコントラストが強い街だと、やっと身をもって感じた。
あるエリアでは、いかにも高価そうなダウンジャケットに身を包んだ人たちが犬を連れて散歩していたり、また数駅離れると、そこではあらゆるカルチャーを謳歌していそうな、センスの良い若者、同世代が談笑していたり。

加えて、やっぱり友人たちは輝いて見えた。

では自分は?
つくる側としても、消費する側としても、全部中途半端なまま生きてきたのでは?と少しウッとなってしまう・・・

(とはいえ。書いてて気づいたけど、「いかにも」とか「していそうな」とか、あくまでこっちの捉え方なんですよねぇ)

それじゃあこれから、自分はコレ、と胸を張れるような何かを得たら良いのか?
それをかなえるのは、稼ぎなのか自信なのか?
そもそも、そんなモノサシ捨てられた方がヘルシーなんだろうけど、できるのか?
まだわからんなぁ。

口では「勝ち負けじゃないよね」って言うのに、結局分かりやすい何かで比べてしまうんだよなぁ。

まだまだ、ちひろさん言葉が沁みる35歳、無職。

安田弘之『ちひろさん』 4巻 より


【補足3】
いきなりミュージシャンの話を持ち出したのは、最近読んだ本の一節のオマージュ。

ちょっと歩くだけで、街が変わる。渋谷と原宿が歩いて行けると知ったときは衝撃だったし、特徴のある街と街との間にたいした距離がないのが東京なのだ。数多くのミュージシャンが、東京の曲を作りたくなるのもわかる。

ひらいめぐみ『転職ばっかりうまくなる』 より

ちょうど会社を辞めたタイミングで出会えて本当によかった。
自分の経験と重ねて胸が痛くなったり、勇気づけられたり、読み終えたらなぜかやる気になってたり・・・
組織の中でバリバリやってる人も、これからどう生きるべきか、ぼんやりと悩んでいる人にも勧めたい。
一乗ひかるさんの装画との掛け合わせも、んもぅ最高!です。

どの街で生きていくか

今回会った何人か、というかほとんどの人に「東京に来る?」と言われた。
ニュアンスも温度もそれぞれだったけれど。

中でも印象的だったのは、とある家具・雑貨屋さんに立ち寄ったときのこと。
店を切り盛りする彼は、僕より少しだけ年上で、大阪出身だという。
そんな人懐っこい兄ちゃんと、背負ってたバッグの話から盛り上がり、お互いの身の上話に。

2つの都市を見てきた彼もまた「何かやるなら、東京来たほうがいいけどな〜」と言う。
何かやるなら、がキーなのだろう。
チャンス多いぶん、流されやすくもあるから、とも言っていた。

「何かが決まったらまた、それ教えに来てくださいよ〜」
って言われたので、宿題にしますね。

ポンと自分を置いてみる感覚

東京。初めて訪れたときと比べると、建物の大きさや街並みの輝きには、ことさら驚かなくなった。
それよりも人に目を向けるようになったのかなぁ。
雑誌やSNSで見た建物が現れたらスマホを向けてしまうけれど。

まだ住もうだなんて思えないし、これからもそんな考えにはなれないかもしれない。
でも

「今の自分をこの街の中に放ってみたときに、何を感じるんだろうか」

と、定期的に来て考えてみたいなと思った。
定点観測ってことですね、と希くんが言葉にしてくれた。

自分のことなんて誰も見てない、誰も知らない、誰も相手にしてない街に自分を置いてみて、どう思うか。
(大阪だってきっとそうなんだけど、住んでる街はまた感覚が違う不思議)

今までそんなこと考えてもみなかった。
ただただ「戦うための街」「実績を残すための街」「住む街ではない」と思ってきた。

もうそれなりに普通に暮らせたらいいや〜と思って仕事を休んでみたけれど、こんな、定点観測なんて発想に至るとは思わなかったな。
自分の中の願望がそうさせるんだと思う。

セルフツッコミは、捨てきれない自意識

それじゃあ、その願望って何なんだろうか?

僕が会いたかった人、こうして実際に会った人、これから出会いたいと願う人は、「人生がより良くなると信じていて、自分の道を淡々と進む(少なくとも僕にはそう見える)人たち」だ。
派手であろうと、なかろうと。
これまで「とはいえ自分の人生もうちょい良くできるんちゃうか〜」くらいのゆるい希望だった。
それが、いまの状況で彼らに会うと、自分も彼らと同じようでありたいと、あらためて強く思った。

願望はエネルギーにも、呪いにもなり得ると思う。
これからは、なるべく前者にできるよう気をつけたいなぁ。

相変わらず青臭いし、ありふれた望みなのかもしれないけれど、それを自分から出てきた言葉として残せた意義はきっとある。
と、信じたい。

それじゃあ、かつて憧れた「何者か」と、いま自分がなりたい姿は違うんだろうか?
結局また振り出しに戻っただけなのかな。
だとしたらイヤだなぁ。笑
しゃあないけど。

まだ何をやるかも決めてないのに。
自分としては、新しく修行の期間に入るのかも、という予感がしている。
ネオ修行。
いや結局また修行するんかい。

それなりに普通に暮らせたらいいや〜と思ってたけど(2回目)。
また違う熱というか火照り?みたいなものが自分の中にある気がする。
一度消えて新しく生まれたのか、くすぶってた火種なのか、まったくわからないが。
(そもそも普通とは?なのだが)

再びちゃぶ台で

締めは本筋から少し逸れる話になるんだけど。
飲みながら、希くんはこうも言っていた。

「自分探しって『結局わかんなかった〜』って、『自分を見つけることすらできなかった自分』を知るのも、結果として十分なんじゃないか」

この歳になって自分探しだなんてね、と自嘲的につぶやいた僕に返してくれた言葉だ(大意をまとめてみたけど、違ったらごめんなさい)。

今の自分はまだ、それを言い切れる潔さはないけれど、あぁそうよねって救われた。
酒場には野良の哲学がある。笑

またきます。

折に触れ近況を伝えたい人たちが、地元以外にもいるんだなと、あらためて思った。
応援してくれる人がいるって本当にうれしい。
今に見ててくれと思えるなんて、まだまだ自分も捨てたもんじゃないかも。
それが健康的な思想か、という問い掛けにやっぱり戻ってしまうんだけれど。

あと、あれだなぁ。
行き帰りの車窓を眺めて「日本は狭いって言っても、こんだけいろんな街があって、それぞれに人の暮らしがあるんだな〜」って思えたのもよかった。
当たり前なのだけれど、自分ひとりのことが小さく思えて、ちょっとどうでもよくなる。
そういう意味でも、定期的に遠くへ行きたい。

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