さかなとたわむる其の六 「やーん!可愛い!!」「いや、それ怒ってるよ・・・。」

クマノミに代表される、フレンドリーな魚たち。彼(彼女)等は、ダイバーが近づくと、逃げるどころかこちらに寄って来てくれます。そんな姿に、「カワイイッ!!」と、黄色い歓声があがることも少なくありません(?!)。と言うわけで、そんなフレンドリーな魚たちはダイバーの人気者なのです。

ところで、彼(彼女)等はどんな気持ちでダイバーに寄って来ているのでしょうか?

一番わかりやすいところで、クマノミを例に話をしていきましょう。クマノミは決まったイソギンチャクを縄張りとして、生活し、繁殖行動を繰り広げていま す。逆に言えば、イソギンチャク無しには生活が成り立たないわけですね。特に、このイソギンチャクにご執心になる時があります。それはもちろん繁殖期で す。どうせなら、居心地のよい、良い環境で子育てをしたいじゃあありませんか!

となれば、幸せな生活を送ろうと思えば、「この家(イソギンチャク)を、がんばって守っていかなぁ、あかんなぁ!」ということになるんですね!

で、その結果が、人がクマノミの住むイソギンチャクに近づいていくと、「くおぉらぁ!てめぇ!来るなよぉ!来るんじゃねぇよぉ!こらぁ!」となるわけで す。なにしろ魚はどんなに気が強くても、所詮、魚。顔に筋肉なんかないもんだから天下無敵のポーカーフェースで表情なんかはわからない。みためは奇麗だ し、(人間に比べれば)えらく小さいし、しかもダイバーに寄ってくる。勘違いとはすごいもので、こんな態度を見たら、どんなにコイツ等が怒っていても、人 間から見たら「や~ん!!可愛いっ!」ってなってしまいます。でも、あくまで彼等はわれわれに対して縄張りを主張し威嚇行動をとっているのです。もし、あ なたがこんな光景を目撃したら心の中でこう教えてあげましょう。

「いや、怒ってるよ。こいつ・・・・。」

追記
クマノミは、スズメダイの仲間で、イソギンチャクと共に生活しています。魚類には性転換をするものも多く、クマノミもその一例です。最初はオス、成長するとメスとなるタイプです。クマノミはメスを第一位とするグループを形成します。グループ内での順位および性別は基本的に体の大きさで決まり、大きい者が上位となり第一位がメス、第二位がオス、第三位以下は性的未成熟個体(形式的にはオス)となります。生殖活動に参加できるのは、グループの第一位メス と第二位オスで、残りの個体は、生殖器官の発達を抑制され、繁殖活動には参加できません。ちなみに、死滅等で、グループ内の順位に変動があった場合は、常 に第一位がメス、第二位がオスとなり繁殖可能な状態が維持されます。

人間に対して威嚇行動をとり、おめでたい誤解を招くのは、繁殖活動を行なっている第一位と第二位の個体のみで、ほかの個体は防衛行動に参加しません。

1999年~2002年に書いていたコラムに、加筆、修正をしたものです

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