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わたしたちは十分えらいよ

わたしの周りには、実家暮らしの友達が多い。

大学に入学したてのころ、わたしは10人ほどのグループにいた。そのなかでひとり暮らしをしていたのは、なんとわたしだけ。あとはみんな実家から通っていた。
歩いて10分ほどの友達もいれば、電車で片道2時間かけて通学している子も。電車の子はひとり暮らしがしたかったけれど「大学まではここから通いなさい」と親が許してくれなかったらしい。(いまは実家を出て旦那さんと仲良く暮らしている。よかった!)

大学を卒業しても頻繁に会う子たちは、いまでもほとんどが実家暮らし。その子たちが毎度口にする話題がある。「そろそろ家を出ないとヤバいよね」という内容だ。

「この歳で一度もひとり暮らしをしたことないのってどうなんだろう」という不安を解消したい気持ちと、「こういう間取りで、好きな色のインテリアでそろえたい!」という願望。彼女らの話を聞いていると、このふたつがひとり暮らしをしたい大きな理由だと感じる。

しかし、なかなか踏み出せない懸念材料があるらしい。ズバリ、お金である。
いま自由につかっているお金の一部が家賃となり、食費となり、公共料金に充てられる。その上で貯金もしなければならないとなると、どう考えてもお給料との計算が合わない。両親に毎月決まった額を渡している子もいるが、ひとり暮らしをするより支出は少ないだろう。

なのでその話題になるたびに、彼女たちはわたしをほめてくれる。「大学のときからひとりで頑張っていてすごいね」「わたしなんて親に任せっぱなしなのに、全部ひとりでこなしてえらいね」と。

みんなが毎回いうのと同じように、わたしは思う。「そのままでいいのにな

ひとり暮らしをしているからって、特別えらいことをしているわけではない。
わたしは実家が田舎で、大学へ進学するにも就職をするにも地元を出なければならなかった。そのため、ほぼ強制的にひとり暮らしをはじめた。ただそれだけである。

一度も家を出たことがないことを恥じる必要なんて、なにもない。実家を出なくても楽しく暮らせているのなら、そのままでいいと思う。ひとり暮らしをしている人のほうがえらくて、頑張っているなんてことはない。むしろ、与えられた環境は思う存分利用したらいいのではないか。

ひとり暮らしをしたいのならすればいいし、実家が心地よいのならそのままでいい。ちゃんと働いて、会話をして、毎日生活しているだけでわたしたちは十分えらい。

友達から「えらい」と言われ、なんて返せばいいかずっとわからなかった。「そのままでいいのに」とは思っていたが、上から目線になりそうな気がして……。いまこうして文字にしてみると、友達に伝えたほうがいいことのような気がする。もし次この話題になったら「わたしたちは十分えらいよ」と伝えてみよう。

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