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長年のコンプレックスが実は自分の強みなんじゃないかと思えた瞬間

私はコンプレックスの塊だ。

決して自信満々に言うことではないのだけれど、とにかく昔から自分の容姿や生い立ちに劣等感を持って生きてきた。

多くて硬い髪の毛、小さな胸、ぶつぶつの赤い肌、不和の両親、実家の借金問題……などなど。生まれ持った性質や育った環境の影響を大いに受け、悩みに悩みんで今までこじらせまくってきた。

そんな私のコンプレックスの1つに、声がある。低くてこもる声。今までも誰かと喋りながら「なんでこんな声なんだろう」と嫌になることがあったけれど、ライターとなった今はより切実な悩みになった。インタビューの録音から文字を書き起こすために、自分の声を否応なく聞く機会が増えたからだ。これから聞くぞと心づもりをしていても、音源を再生するたびに「うわ……」と何度も机に突っ伏してしまう。

これではダメだ!と思い、ライター仲間に相談。すると、お友達に現役アナウンサーがいるとのことで、そのご縁で話し方講座を開催してもらえることになった。

合計3人で参加したのだが、意外なほどにそれぞれの悩みが違う。話すペースや声の大きさなど、自分の悩みや解決したいことを講師に1人ずつ伝えていく。そして最後、私の順番が回ってきたときに予想外の言葉をかけられた。

「山本さんは通る声をしていますね」

と言われたのだ。思わず「え?」と聞き返す私。そんなはずはない。だって私は「こもる声」で悩んでいるんだもの。

続いて「発声練習をした経験はありますか?」と聞かれた。

ある。確かにある。高校の部活で英語劇をやっていたので、発声練習っぽいことはしていた。が、プロに習ったわけではなく先輩から代々受け継がれてきた発声練習をしていただけなので、正直なところその方法が正しかったのかはわからない。

それを伝えると「やっぱりそうですか。そんな感じの声をしていますよ」と返ってきて、ますます戸惑う。そうか。そうなのか。え。そうなの……?

頭の中がハテナでいっぱいになった状態のまま、講座は次の段階に進む。講師が事前に用意してくれたイベント司会の原稿を1分で読んでみる、というものだ。これによって、実際に話し方の課題を見つけるのだという。

「通る声をしている」という言葉を意識せずにはいられず、女優になったつもりで声を出してみた。意識して変えているのだから当然、自分の耳に入ってくる声も違う。しかしながら、自分自身で声の響きが変わったと気づいた瞬間でもあった。

1時間で講座は終了。1回ではそれぞれの悩みを解決することはできなかったけれど、それでもコンプレックスだった自分の声にも良い要素があるとわかったのは大きい。もしかしたら自分の強みにできるんじゃ……?という期待も持てた。

嬉しかったので、夫に「通る声だって言われたよ」と伝えたら「え。うそでしょ?どこが?」と鼻で笑われた。だよね。自分でもそうだと思う。まだまだコンプレックス解消までは長い道のりなのだ。

でも声のプロに言われたんだもの。その素質はあるということだし、これから化ける可能性も大だよね。そんな風に前向きに捉えられるようになるなんて、あのときライター仲間に思い切って相談した自分を褒めてあげたい気分だ。

自分ではコンプレックスだと思っていたものが実は強みだったっていうのは、意外と多いのかもしれないな。

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