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題... 加工貿易の落とし穴にはまった日本

◆ “加工貿易”というシステムには、人々が気づきにくい“決定的な落とし穴”がある。

 その落とし穴とは、“人件費を切り詰める“という発想。端的に言えば、“他の国より安く作ることができる"という前提で成り立つシステムが加工貿易というシステムです。[ #加工貿易 ]

 原価を下げることが自動化やロボット化などで実現できれば理想ですが、世の中はそんなにうまくいくものではない。特に、日本人の場合はそんな発想になりにくい。

 日本には、人件費を極限まで切り詰めて安く作れるようなシステムに向けて邁進しがちな価値観がある。日本人には、賃上げストライキなどを毛嫌いしてしまう人も多い。

 トヨタ生産システムなどは、その典型。私も、40歳くらいまでは、そんな考え方でした。経営コンサルという仕事柄もあり、労働組合なども必要以上に毛嫌いしていました。[ #組合嫌い ]

 それは、労働組合の多くが、国の経済の発展という発想よりは、自分たちが獲得した利権を守るという発想に固執していたからです。[ #組合の利権 ]


◆ コンサル駆け出しの頃、私は、ある中堅商業印刷企業の改善活動を担当しました。

 そして、ドイツのものづくりの考え方と日本のものづくりの考え方を比較して、あることに気づいてきました。

 それまで、印刷機には全く関心がなかったのですが、ドイツの“オフセット印刷機”は、とてつもない複雑なしくみでポスターやカレンダーなどを印刷しているのです。

 そんなオフセット印刷機の技術は、ジェット機を滑走路から1センチ浮かせて永久に飛行させるほどの技術だと印刷技術者に聞いて、驚いたものです。

 そんな高度な技術はドイツにしかない。そして、ドイツの技術者たちは、それを、機械的な精度を高めることで達成していました

 日本製の印刷機には、それほどまでの技術力はない。なので、主要な部分にマイコンを使うことで、一定の精度を達成していました。それはそれでもいい。それも、技術。

 車づくりにも、その傾向が見られる。ドイツの車は高くても売れる。安売りはしない。一方、日本の車は、信頼性などは高くても、値段はそれほど高くないし、安売り好き。[ #安売り好き ]


◆ 大切なことは、“技術を安売り”するのは自殺行為だということ。

 ドイツ人は、苦労して達成した技術を安売りするようなことはしない。苦労して成し遂げた高い技術力なので、当然、高く売る。ベンツは安くはなく、高い。[ #高い技術は高く売る ]

 トヨタやホンダは、安く売る。日本人は、あくまでも、安いということに固執してしまうのです。

 私は、総合的な技術力ということでは、日本車はドイツ車よりも上だと思っています。だから、最近のF1レースは、ホンダの独壇場の様相にもなっていました。

 本田宗一郎氏はF1で優勝するのが夢で、車づくりに取り組んでいたとか。私は、そんな苦労をして実現したホンダの技術は、高く売るべきだと思います。

 日本人は“安く売ることは素晴らしいこと”だと錯覚しているだから、“輸出を増やすために為替は円安が良い”とトンチンカンな発想にもなってしまうのです。[ #錯覚 ]


 蛇足ですが、日本は輸出大国ではなく輸入大国。

 ならば、円安よりも円高が良いことは考えるまでもない。円高の方が安く輸入できる。円安の結果、日本人のドルベース賃金は急激に低下しましたが、それは必然なのです。[ #必然 ]

#コラム #ブログ #天眼流 #天の邪鬼 #共感工房

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