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欲が潰された健康生活の行く末

世界的な健康志向の高まりにより、タバコやアルコール等の嗜好品への嫌悪感が増すと共に、徹底的に距離を取る人が増えてきました。同時にファイトニュートリエントと呼ばれる植物性栄養素の市場規模が拡大していくのですが、そもそも人が根源的に持っている欲求はどこに向けて発散されていったのか、10年後の視点で振り返ってみたいと思います。

消費の変化

健康志向の高まりは世界的にポジティブに通常捉えられ、世界で受け入れらています。タバコによる肺がんリスクの低下、アルコール依存症患者の減少、炭水化物の摂取を控えることによる重度肥満化の減少など、健康に良いことを続けることで結果としてQOL (Quality of Life)も向上し、長寿になるといった良い影響が考えられていました。

日本ではタバコの需要が年々減少し、2018年時点でも20年で71.8%に減少するなど、紙タバコの代わりに電子タバコが普及してきたとはいえ、急速に衰退する産業となりました。

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参照) http://nomad-salaryman.com/tobacco-industry2019

アルコールも同様に若年層の酒離れや少子高齢化問題により、長期的な減少傾向が続いています。詳しくは国税庁の「酒レポート」をご覧ください。

繰り返しますが、こうした嗜好品の消費が減ることによる健康増進の影響はポジティブであることが多く、世間一般で受け入れられていきました。同時にランニングやキャンプ、サイクリングなどのアウトドア市場が伸びてきているのは納得がいく流れでしょう。

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参照) https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2217

健康志向の世界的な大ブーム

新型コロナ(COVID-19)の影響もあり、世界でも健康志向は一層ブームを引き起こしました。体に悪いとされる食物や嗜好品の摂取を否定する人々も更に増え、どんな健康生活を送っているのか?を著名人がYouTubeでしきりに発信しました。

糖質80%カットは当たり前。肉は鶏肉を中心に摂取されていましたが、今や栄養分がバランス良く配合された人工肉が主役になりつつあります。

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参照) https://100man1oku.net/simulated-meat

朝は人工的な太陽光によってビタミンDを作り、セロトニンを生成し、ヨガ・ウォーキング・ランニング・サイクリングなど思い思いのアウトドアを楽しむ人も一層増えてきました。一部の学者によると、テレワークの普及により生み出された自由時間が健康志向に拍車をかけたとされています。

過度な健康志向による没個性化

2030年、今や当たり前となった健康志向ですが、私の友達が口にするものや日々のアクティビティに大きな差はなくなってきています。全て想像の範囲内で行われるアクティビティに変化してきました。

生活の中にストレスがなくなったことで、自由主義を唱えるプロパガンダ以外、特に目立った不平不満を唱える人たちがいなくなりました。私達はクリエイティビティや思考能力を失い「民」になりつつあると感じています。

「民」という漢字の成り立ち
両目をつかれ見えなくなってしまった奴隷の様を表す。 これは昔、戦争に負け奴隷となってつかえた人々が逃げられないように両目をつかれていたことが起源とされています。 多くの民衆がこういう状態で王に仕えていたことから「民」という字ができたのです。

あまりにも綺麗すぎる世界に辟易して、あえて整っていない新興国に生活の拠点を移す人も出てきました。アートや芸術は今や新興国が中心となって生み出されています。先進国が生み出すアートはデータやITを活用したものが中心となり、もはや人工物(誰でも同じものを作れるもの)と化しています。

私達が根源的にもっていた欲求は論理的には満たされているのですが、本能的には満たされなくなっています。「欲深いこと」自体がそもそも抑制されているからです。

健康が当たり前となった世界。健康しか知らない若年層。この状態が続いた時、世界はどうなっているのでしょうか。

引き続き静観していきたいと思います。


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