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見栄の美学

私はインテリアの仕事をしているが建築学科もデザイン学科も出ていない。歴史学科の出身だ。

偶然イギリス近世史のゼミに入り、産業革命を成し遂げた大英帝国と、繁栄の歴史とは逆説的に繰り広げられる独特な精神史に夢中になった。卒論ではウィリアムモリスを題材に、産業革命期の(リアルな)農村文化と都市でつくられた(ユートピア的)農村文化のイメージの乖離を説いた。

数え切れないほどの書籍を読んだ。史実的なことはだいぶん忘れてしまっているけど。


そんな私から見て。イギリス文化を一言で言うなら「見栄」ではないかと思う。そしてその「見栄」は深く本質的で複雑で、美しい。

来る日も来る日も「イギリス・インテリア」のプロモーションの方法を探りながら、ふと思う。過去数百年にもわたり“美しい”見栄を張り続けてきたからこそ、イギリスのインテリアデザインは世界トップクラスなのではないだろうか。外の物を受け入れ融合する器の広さを(私達は寛容だ!と)示してきたからこそ圧倒的なデザインセンスが養われたのではないだろうか。

少し斜めの方向からイギリスを研究していた私は、いわゆる盲目なイギリスファンではない。甘い物が嫌いなのでアフタヌーンティーに興味はないし、ハワイのビーチも好きだしタイの雑踏もシンガポールの近未来的仕掛けも大好き。でもイギリス・インテリアの真髄は「エクレクティック」であること。(ボスのデザインを見れば一目瞭然)


BABIDが日本に提案できるものがイギリス“風”なんていうまがい物のデザインではないってことを伝えて生きたい。

伝える役割を担う私が、もっともっとインプットしないといけないと。
と、焦りとわくわくが交互に背中を押してくる。

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