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年上の新入社員への教育が難しい

ここ2日間ほど中途採用の新入社員の教育係を務めた。元々教育係の予定だった社員が、諸事情によりしばらく休みになってしまったので代わりを頼まれていたのだ。

年齢は一回りほど上で、介護職は未経験らしい。ここに来る前は某有名チェーン店で20年以上店長をしていたそうだ。なぜそんな人が急に介護を?と頭の中に浮かんだ疑問をぶつけたくなったが、口にしにくい事情があってはいけない。やむにやまれぬ事情があるのだろうと察し、転職理由を聞くのをやめることにした。

未経験ということで介護の基本から教える。経験年数は浅いのでそんなに偉そうなことは言えないが、経験者として少なからず教えられることはある。まずはご利用者の顔と名前が一致しなければ始まらないので、コミュニケーションを取って人柄を理解することを勧めた。「わかりました!」と元気よく返事をしてくれたはいいが、いっこうに話しかける様子がない。手元のメモ帳になにやら書き込みながら、あっちをうろうろ、こっちをうろうろ。

話しかける様子がないので、施設の案内やオムツ交換、移乗の仕方など介護の基本を丁寧に教える。見様見真似でやってもらい、いくつかアドバイスしようとするも「大丈夫です!」とまるで経験者かのような自信満々な返事に阻まれてしまった。新人とはいえ年上の方なので、なんだか口に出しにくい。あっちも「年下のくせに偉そうに」と考えていたらどうしようと思うと徐々にたどたどしい教育になってしまった。

たどたどしい先輩職員となぜか自信満々の新入社員。知らない人が見たら僕が未経験者に見えることだろう。
「何か気になることや質問はありますか?」と念のため聞いてみたが、案の定「大丈夫です!」の一点張り。

「いや、自信と元気があるのはいいことなんだけれどもね。もっとこう未経験らしい立ち居振る舞いというか、より良い介護を学ぼうとする姿勢とかないものかな。年下が教育係なのは不服かもしれないけど、覚えるまではちょっと我慢していただいて」

こんなふうに口にできたらどれだけ楽なことか。


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