大人バレエは意味がない?上達しない?怪我を招くもの??
大人の習い事としてすっかり定着した感のあるバレエ。
私の通うオープンスタジオも、若い人から70歳を超える年輩の人まで、そして最近は男性も多く見かけるようになり賑わっています。
大人バレエを楽しむ人が発信するSNSも数多くあり、私も勝手に仲間意識を感じて楽しんでいます。
そんなSNSを通じて知ったのですが、世間には
「バレエは小さい子どもの頃からやらないと意味がない」
「身体は老いる一方なんだから、大人が上達するわけがない」
「大人からやったって、怪我するだけでしょう?」
などというネガティブな意見もかなりあるということ。
大人バレエは意味がない、上達しない、怪我を招くものなのでしょうか?
私は個人的にはバレエは大人にもとてもよい習い事としてお勧めできると思っています。
運動指導者の観点からなぜお勧めか、そしてバレエを長く楽しむためにも是非注意していただきたいことをまとめました。
大人こそバレエをやってみるとよい理由
「大人こそ」と見出しに書きましたがそれはどういうことでしょう?
バレエは体中のあらゆる関節を動かす踊りです。
これが、日常生活では決まった動きしかしなくなってしまった大人にぴったりなのです。
バレエには普通に生きていたらまずしない動き(例えば股関節から脚を外向きに回したり、前横後ろと脚を高く上げたり、背骨を反る方向に動かしたり)がたくさん出てきます。
ただその動きは、基本的には無理な動きではなく、人間の身体の作りとしてそもそもできる動きばかり。
新体操やフィギュアスケートになると点数が付く「競技」なので、よりダイナミックに、スピーディに、と求められる身体能力がどんどん上がっていきますが、バレエは、例えば脚が高く上がったからと点数が上がる「競技」ではないので、特に一般人は自らの可動域を超えることは求められていません。
逆に、その動きを、本来使うべきでない筋肉が補うような無理な動きはバレエ的には美しくないのでNGです。
その人の持つ可動域で動かすことでその人なりの美しいラインができますし、練習、訓練でその可動域も少しづつではありますが広がっていきます。
そして、頭のてっぺんから足先、手の指先まで気を配る必要があるため、脳の命令を身体に伝える神経の働きがどんどんよくなってきます。
脳と身体のつながりがよくなると、瞬時に身体を動かすことができるようになるので思わぬ怪我も防げるようになります。
決まった動きしかしないと、脳から身体に出す命令が少なくて済み、しない動きで使われる筋肉はどんどん衰えてしまい、肩凝りや腰痛などの様々な不調の原因にもなり得ます。
人間の機能として、もともと動かせるようにできているあらゆる関節を動かすことは、全身の筋肉をバランスよく鍛え、不調撃退に効果があり、将来的に自分の脚で歩ける期間を長くするのです。
子どもの頃からやらないと意味がない?
プロのバレエダンサーになるためにはやはり子どもの頃から訓練してバレエ向きな身体を作っていく必要があります。
バレエといえば、な「アンドゥオール」(股関節から脚を外に開くこと)を完璧にするためには、あるいはバレエ的につま先をキレイに伸ばすためには子どもの頃から少しづつ可動域を広げていく必要があります。
大人から始めても、とてもではありませんが海外の第一線で活躍するダンサーのようなアンドゥオールやつま先を手に入れることはできないでしょう。
しかし、完璧なアンドゥオールでなくても、プロのようなつま先でなくても、バレエをすることは誰でもできますし、楽しみで始める分にはいつでもスタートすることができます。
大人の、全く初めての人を対象にしたクラスも多くありますので、興味があれば大人でももちろん始められます。
意味があるかないかはやっている本人が決めること。
そして上で挙げたように、大人がやるメリットはたくさんです。
やる前から可能性を閉ざさず、興味があれば是非トライしていただきたいと思います。
大人は上達しない?
私が初めてバレエのレッスンを受けたのは20代後半ですが、もともと身体も硬く、社会人になってからはほぼほぼ運動をしていなかったので、それはまあひどいものでした。
脚を前に出すこともまともにできないし、腕を広げて置いておくこともできませんでした。
その頃に比べれば、自分で言うのもなんですが、格段に進歩していると思います笑
もちろん、子どもの頃からやっていた人、もともと身体能力が高い人に比べたら笑えるほどできないと思いますが、自分比で見た場合、びっくりするほど上達しています。
確かに心肺機能は若い頃に比べたら落ちているのかもしれませんが、一般的に身体能力が一番高いと言われる時期にバレエをやっていなかったわけですから比べようもありません。
筋肉は何歳になっても鍛えられますし、柔軟性も上がります。
スタートがひどければひどいほど、あとは上達しかありません。
比べるのは過去の自分だけです。
他の人と比べると話がややこしくなります。
普段しない動きは、していなかったからできないわけで、すればだんだんできるようになります。
特に大人は、してこなかった時間が長いので、できるようになるまでには時間がかかりますが、今までしていなかった動きが多ければ多いほど上達の余地があると言えるでしょう。
上達を感じるためには、今の時点での自分を客観的に把握する必要があります。
どんな動きがどれくらいできるのか
何がどうやりづらいのか
どこがどういうふうに動いてほしいのか
そんなことを常に客観的に自分で把握しておくことをお勧めします。
バレエ教室で子どもが書くことを勧められる「バレエノート」に、大人も、先生からもらった注意のほかに、客観的に見た今の自分を備忘録的に書きとめておくとよいかもしれませんね。
怪我を防ぐために
大人バレエのスタジオを眺めてみると、確かにがっしり膝にサポーターを巻いた人、腰にコルセットを巻いた人など、いかにも「痛めています…」という人を見かけることも多いです。
レッスンメイトさんと話したり、SNSを眺めていると、バレエで痛めることが多いのは圧倒的に膝と腰のようです。
運動指導者の目で見ると、膝と腰を痛める人が多いのはとても納得です。
負担の掛かる膝の伸ばし方をしている人、胸を開こうと背骨の胸の部分(胸椎)を反らしすぎて腰に負担が掛かっていそうな人がとても多いからです。
私が好んでレッスンに参加する先生たちはとても丁寧に身体の使い方を説明してくれるので、例えば膝なら、ただ「伸ばせ」と指示をするのではなく、どう伸ばすのか、どんなイメージをするとよいか手を替え品を替え教えてくれます。
そんなレッスンで試行錯誤していると、膝や腰に負担の掛からない、なおかつ美しい使い方がだんだん身についていくと思うのですが、オープンクラスのせいか、「この人身体の使い方を見直した方が…」とつい私がおせっかいにも思ってしまう人はもうその先生のクラスに二度と現れない率が高い気が💦
おそらくですが、身体の使い方を色々言われるのは鬱陶しいんでしょうね。
バレエもダンスなので、気持ちを乗せて動くことがある意味基本中の基本、「やりたいようにやる」はアリかもしれません。
しかし、怪我をしないという目標がある場合は、丁寧すぎるぐらい丁寧に一つ一つの動きを習得しようとし、先生の動きをじっくり観察し、先生の言うことに耳を傾けましょう。
バレエは長く続いてきた分、厳格に「形」があります。
そしてその「形」は大変理にかなったものです。
その「形」に近づけようと、表面ではなく根本の身体の使い方を探究することで怪我を防ぐことができるのです。
もちろんジャンプの着地に失敗したり、回転の軸に上手く乗れなかったりで、気を付けていても突発的に怪我をしてしまうことはあるかもしれません。
ポアント(トウシューズ)を履くとそんな突発的な怪我のリスクも上がります。
突発的な、原因がわかっている怪我はある意味仕方がありません。
起きてほしくないのは、いつのまにか少しづつどこかが痛くなってきて、だましだましやってはいたもののどんどんひどくなり最終的にレッスンに出るのが難しくなりさらには日常生活にも支障がでてしまう、そんなタイプの痛め方です。
このタイプの痛め方は「身体の使い方が間違っている」から起こることがほとんど。
なんとなく痛いかもしれない、時点で、クラスを変えたり、場合によっては信頼できるパーソナルトレーナーや整体師さんなど専門家の手を借りて、自分の身体の使い方を見直してみましょう。
そうすることでレッスン中に先生が言っていた注意が急に腑に落ちるかもしれません。
また、身体の使い方以外で、怪我を防ぐために注意していただきたいのが、実力以上の、特にテンポが早いレッスンには参加しないと言うことです。
だんだんできることが増えてくると「もっと難しいクラスに!」という気持ちはとてもわかりますが、難しくなればなるほど、テンポが速くなればなるほど、振り付けを覚えることで頭がいっぱいになり身体の使い方がおざなりになりがちです。
そうすると自分の身体のクセが出やすくなり、痛みに向かって一直線、になってしまいます。
「上達」の項目でも書きましたが、自分ができることできないことを客観視することは怪我を防ぐためにも重要です。
特にオープンクラスの場合、自由にどのクラスにも参加できてしまうし、例えば同じ「初級」クラスでも先生によって難易度が様々なので合うクラスを見つけるのは難しいかもしれませんが、「正しく身体を使おうと気を付ける余裕」がある程度あるクラスを選びましょう。
最後に
せっかくバレエをやってみたいのに、ネガティブな意見を目にして諦めてしまったり、やっているうちにネガティブな意見に振り回されてメリットを忘れてしまってはもったいない。
そんな気持ちで今回の記事を書きました。
長い歴史があり厳格な形があるバレエは敷居が高いかもしれませんが、だからこその楽しみ、そして安心感があります。
大人バレエ愛好家のみなさんが楽しく、そして怪我なく長く踊れますように!!
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