【短歌】無垢それだけに
蜂蜜の切れ目がくるのを待っているひとつながりの静かな朝に
(『まな板杯』参加作品)
ガス灯と今でも呼ばれこれからも呼ばれてゆくと信じるひかり
ねこぢるを祈りのようにめくる夜の無垢それだけに壊されたくて
みずからの手でみずからを奪うときだれの胸にもロミオは眠る
ひとの手で割れてしまった蝶にしか行かれぬ国があるのだろうか
開かれた肌のやわさにさよならを重ねつづける夕暮れどきに
水仙は首(こうべ)を垂れるみずうみに両性具有の貌(かお)をうつして
さよならと啼く鳥がいるさよならと君の暮らしになれない鳥の
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