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小説とか詩歌とか

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2023年8月の記事一覧

【詩】少女たちの夜会

【詩】少女たちの夜会

少女たちが鱗粉を顔にぬる
そのために
真っ青な蝶ばかりを死なせている

少女たちは朽ちた式場にあつまり
おおきな鏡が
泉のようになびいている衣装部屋で
薄絹をかさねがさね
ひとつの四阿をつくる
あしたこそ
生まれることのないように
少女たちは祈り
蚕の似姿でねむる
しだいに空が白んでゆくことを
少女たちは悔やむ

いつしか
少女たちは
大人のかたちになる
影をともなう
真っ青な蝶となる

【詩】ナイフ

【詩】ナイフ

生きるたびに
ためらいきずが
ふえる
ローズ・セラヴィの
口紅のような
きずが
わたしの胸に浮かぶ
どうか
致命的にしてほしい
あなたのナイフで

【詩】祭り

【詩】祭り

りんご飴をかじる
薄い硝子がふいにあらわれ
あなたの舌はよく切れる

昔レントゲン室で撮った
わたしたちの写真は
裸になりあった体温までは
写してくれなかったね
緑色の骨はとても熱くて
わたしはあなたの傘を思った
裏庭に埋めるはずだった
金魚がプールを泳ぐ
カルキの匂いにやられる妊婦たちがいる
桃の缶詰に蟻がたかる
今年も夏は死語となり
日射しがあぶらの膜のように
あなたにはりつく

もうすぐ祭り

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