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青木夕海
2022年1月31日 20:53
僕はいちごが敷きつめられたタルトを指さした。「これが良いんじゃない」と振り返ったけれど、さっきまで一緒だった母さんがいなかった。ほかの菓子を見に行ってしまったのだろうか。僕は制服の詰め襟をゆるめて、売り場をまわる。どこもかしこも春限定の商品がならび、薄桃色の吐息で満たされていた。 ふと、フロアの奥に見覚えのない扉があるのに気がついた。ひとの影すらも通らず、忘れられたかのように、ぽつんとあった。