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C-19パンデミック:人類はどこへ向かうのか?

Dr. Geert Vanden Bossche 2021年8月12日投稿
C-19 Pandemia: Quo vadis, homo sapiens?
の翻訳です。原文を参照の上ご利用ください。

1.要約

WHO の集団ワクチン接種プログラムは、国際的に懸念された公衆衛⽣上の緊急事態に対応するために導⼊された。集団ワクチン接種キャンペーンが開始された当初から、少なくとも少数の専⾨家は、このようなプログラムが世界および個⼈の健康に与える壊滅的な影響について警告していた。パンデミックの最中に集団ワクチン接種を⾏うことは、スパイクタンパク質(S)に対する抗体に対して、より耐性があり、より感染⼒の⾼い免疫逃避変異株の選択と適応を促進することにつながり、ワクチン接種者の防御⼒を低下させ、ワクチンを受けていない⼈々を脅かすことになる。つまり、WHO の集団ワクチン接種プログラムが、集団免疫を⽣成できないばかりか、住⺠の免疫⼒を⼤幅に低下させてしまうことは始めから明らかであった。現在⾏われている世界的な集団ワクチン接種プログラムによって、近い将来、感染性の強い中和逃避変異株(いわゆる「抗S抗体耐性変異株」)が優勢的に増加し、そのため、⾃然感染で獲得されたものであれ、ワクチンによって獲得されたものであれ、中和抗体はもはや免役があるはずの⼈々を保護できなくなる。その⼀⽅で、感染圧⼒の⾼さはワクチン⾮接種者の⾃然免疫防御システムを抑制し続けることになる。つまり、ワクチン接種率が上がるたびに、ウイルスは S 特異的中和抗体に対する耐性を獲得することになるのである。ウイルスの感染⼒増強と、抗ウイルス免疫からの逃避とが相まって、必然的に、さらに⼈の健康や命が犠牲になることになる。したがって、ウイルスの感染率を劇的に低下させ、選択された免疫逃避変異株が全⼈⼝——ワクチン接種の有無に関わらず——に急速に広がるのを防ぐために、早急に対策を講じる必要がある。この最初の決定的に重要なステップは、集団ワクチン接種プログラムを直ちに中⽌し、抗ウイルス剤を広く使⽤すると同時に、公衆衛⽣資源を⼤量に Covid-19 疾患に対する早期多剤併⽤療法の拡⼤に投⼊することによってのみ達成できる。

2.イントロダクション

事実とデータ

•       ⾃然免疫は、COVID-19 からの防御に極めて重要である。かなりの割合の⼦どもや健康な⼈(免疫抑制状態ではなく、基礎疾患もない⼈)が Covid-19 にかからないのはこの理由による。自然免疫系の⾃然抗体やナチュラルキラー(NK)細胞は、変異性の⾼いウイルスであっても、その変異しない共通構造を標的とするため、SARS-CoV-2 のすべての変異株に対応することができる(1)。しかし、これらの抗体や細胞は、免疫防御の第⼀線を担ってはいるが、⽐較的親和性が低いため、⾼濃度の病原体に対処するには⼗分ではない(1, 2, 3)。私たちの⾃然免疫系は、 SARS-CoV-2 に対して⾮常に強⼒な⾃然兵器であるが、⾃然免疫系の抗体はスパイクタンパク(S)特異的抗体に容易に圧倒されてしまう。これは、決まった抗原にのみ結合する抗原特異的抗体の結合親和性は、同じ抗原に対する⾃然免疫系の多反応性抗体の親和性よりもはるかに⾼いためである(後者は主に、多価の相互作⽤(※注 1)によってウイルス表⾯の複数の結合部位(※注 2)に結合する;3, 6, 7)。この⽣物物理学的現象が、(例えば、循環するウイルス⾃⾝の感染性が⾼まったり、過密状態、⼤勢での集会、密接な接触があったり、またそれらが特に劣悪な衛⽣状態や住居環境と組み合わさったりした場合など)感染性ウイルスの圧⼒が⾼まると罹患率や死亡率が上昇する理由である。1918 年のインフルエンザパンデミックでは、疾患と死亡の多かった第2波は。特に若者を襲ったのだが、それはこのような感染率の上昇による (8)。私の知る限り、COVID-19パンデミックにおける、ウイルスの進化と感染伝搬のダイナミクスを研究している現在の数理モデルの中に、ウイルスの感染性が増強した場合の⼈間の⾃然免疫防御の脆弱性を⽅程式に取り⼊れたものはない。これは、感染性の強い変異株が選択され優勢に伝播する理由を理解するための主要な前提条件である。そして、モデリングの信頼性は常に前提条件に依存するため、これらのモデリングによる予測は実現していない。それどころか、現実に近づいたものさえもない。循環するウイルス変異株の感染性の増加と、抗ウイルス免疫からの逃避が急速に進んでいることのメカニズムを解明できない唯⼀の重要な理由は、多反応性の(複数の病原体に反応する)⾃然抗体と NK 細胞の役割を考慮していないことにある。複数の査読済み論⽂が、多種多様な⾃然免疫防御機構において、多くの病原体に反応できる⾃然抗体が極めて重要な役割を果たしていることを繰り返し強調しているにもかかわらず、ワクチン学者、ウイルス学者、疫学者の⼤多数は、これらの抗体の機能的重要性を認識していないようである(ウェブサイトのトピック 1 の⽂献を参照)。

•       ワクチン接種の世界的な普及に並⾏して、より感染性の強い変異株の流行が急激に拡大している。分⼦疫学者によると、SARS-CoV-2 は現在、S 特異的抗体に対する耐性を急速に進化させている(9、10)。彼らはこれを、現在、集団の中でスパイクタンパク質に対する免疫圧力が急速に蓄積されているためであるとしている。変異しやすいウイルスによって引き起こされる急性⾃⼰限定性ウイルス疾患のパンデミック時に、現行のワクチンを用いて集団ワクチン接種プログラムを行うならば、ワクチン抗体に対するウイルスの耐性獲得で終わることは疑う余地がない。⽣ワクチンとは異なり、現代のワクチン技術で製造されたワクチンは、ウイルス排除免疫 (滅菌免疫 Sterilizing immunity)を誘導することができない(※注 3)。そのため、より多くの、より感染性の強い変異株が選択され、適応し、⽣き残るために最終的には中和抗体への耐性を持つようになる。

•       ⽂献やソーシャルメディアで盛んに報告されているように、ワクチン接種者は SARS-CoV-2 の変異株を広げるだけではない(※注 4)。最近では、有症状感染のケースが増えている(※注 5)。

•       ⾃然感染による獲得免疫は、様々な SARS-CoV-2 の変異株に対して防御能がある。これは、⾃然感染による疾患では強い免疫刺激があり、「アジュバント」を介した「抗原の拡散」が起こったためと考えられる(私信(※注 6))。このことは、⾃然感染で獲得した SARS-CoV-2 に対する免疫が、多くの異なる免疫逃避変異株に対処できることを意味しているが、例えばラムダ株で認められたような「中和抗体からの逃避」を引き起こす抗原不連続変異(抗原シフト)にも対処できるとは考えにくい(11)。例えば、インフルエンザウイルスの場合、特にアジュバントを使⽤したワクチンは、抗原連続変異(抗原ドリフト)を起こした変異株には効果があるかもしれないが、抗原シフトを起こした変異株には効果がないことがよく知られている(12、13)。

•      科学的根拠に基づく予測は、パンデミックの進化して行くにつれ、続々と裏付けられてきたが、COVID-19ワクチンについてのメーカーと公衆衛生当局の予測は、ほとんど放棄されたと言わざるを得ない(集団ワクチン接種キャンペーンの主な目的は集団免疫を獲得することであった)(表1)。結果として、国際的な公衆衛生当局や各国政府による声明や主張が変化し続けている(表2)。

3.自然は人類の失敗の後始末をするが、集団免疫を獲得するための代償は高い。

集団ワクチン接種が、感染性の高い変異株のパンデミックを、公衆衛生や世界の健康にとって非常に危険な方向へと必然的に向かわせる理由を理解することは非常に重要である。

しかし、ワクチンが患者を(重篤な)病気や入院から守る効果が変わらないのであれば、なぜ変異株やウイルスの感染力の増加について悩む必要があるのか。

抗原変異とそれに伴う感染性のレベルが高くなると、COVID-19ワクチンの感染封じ込め効率が悪くなる。このため、現在では非常に多くのワクチン接種者にブレークスルー感染が発生しており、ブレークスルー感染からの発症例も増加している。一方、感染性の増強は、ワクチン非接種者にとっても深刻な驚異である。なぜなら、無症状で初感染した後の再曝露によって変異株非特異的自然免疫が侵される可能性があるためである(14)。現在、ワクチンを接種していない層、主として、ワクチンを接種していない高年齢層の罹患率が上昇しているのはこのためである(※注7)。しかし、ワクチンを接種していない若年層がCOVID-19に感染するケースも増えてきている。一方で、多くの国で感染予防措置が緩和されているため、若年層の非接種者で密接な社会的接触の機会が増えている。感染性の高いウイルスが流行する中での感染予防策の緩和は、高い感染圧力の影響を受けやすいワクチン非接種者に主に影響を与えている。しかし、現在、ウイルス中和抗体に対する感受性に影響する変異をより多く取り入れた、感染性のより強い変異株が優勢となっている中で、集団ワクチン接種が低年齢層にまで拡大していることから、ワクチン接種者層でのブレークスルー症例と死亡の発生率が急速に増加すると考えるのは合理的な想定である。一方、ワクチン非接種者の罹患率は、今後数週間から数ヶ月の間に低下する可能性が高い。これは、特に、ウイルス(デルタ株など)が非常に速く広がっていることや、より多くの若者がワクチンを接種することで感受性のある層が急速にいなくなってしまうと考えられるためである。集団ワクチン接種のメカニズムと、ウイルスの感染性、ワクチン接種を受けた人と受けていない人の罹患率や死亡率への影響の予測については、以下で詳しく説明する(下記「ワクチン接種のメカニズムと、ウイルスの感染性の増強がワクチン接種者と非接種者の罹患率や死亡率に与える影響の予測」を参照)。

スパイクタンパク質(S)特異的中和抗体に対してウイルスが耐性を得る可能性は、決しておとぎ話ではない。私の知る限り、中和抗S抗体から逃れることができる変異株の最も説得力のある例は、SARS-CoV-2のラムダ株である。この変異株では、スパイクタンパクのN末端ドメイン(NTD)に重要な変化が生じている。この抗原性の変化(シフト)により、ウイルスは中和抗体に対して耐性を持つようになる。この変異は欠失変異によるもので、中和抗体がスパイクタンパクの受容体結合ドメイン(RBD)に結合するのを妨げる(11)。この変異のおかげで、スパイクタンパク質に対し、広範に、強い免疫圧力がかかる状況下では、ラムダ株はかなりの競争的優位性を持つことになるだろう。例えば、南米のいくつかの国で観察されているように、特に健康な人の間で感染圧力が急激に増加した結果、ウイルスに急速に再曝露するようになって感染者が急増すると、スパイクタンパク質への免疫圧力が劇的に増加する可能性がある。感染者が大幅に急増した集団で、突然、S特異的抗体に抵抗できる免疫逃避変異体が急速に優勢になる理由はこれである。しかも、集団ワクチン接種を行っている集団は、ウイルスの感染性(すなわちスパイクタンパク質)に対して強い免疫圧力をかけることになる。このことは、ワクチン接種率の高い集団は、最終的にワクチン耐性変異株の優れた繁殖地になってしまうことを示唆する。ワクチン耐性変異株がワクチン接種率の高い集団で発生したわけではないとしても、そのような集団は流行拡大のための便利な培養皿として容易に利用される(※注8)。もし、集団ワクチン接種が十分に進展せず、集団がウイルスの感染性に十分に強い免疫圧力をかけることがなければ、ラムダ株は、循環している感染性のより強いデルタ株(今のところ?中和抗体から逃避する変異株ではないようだ)に勝てないかもしれない。しかし、ワクチン接種率や感染圧力がさらに高まれば、デルタ株が高い感染性を維持しながら、ラムダ株同様に劇的な「中和逃避」変異を取り入れ、抗ウイルス免疫から完全に逃れてしまうことが起きない保証はない。このような現象は、例えば、スパイクタンパク質のアロステリック部位(例えば、N末端ドメイン)の変異(例えば、欠失)が自然選択され、それによって受容体結合ドメインのコンフォメーションが変化することや、2つの異なる変異株が同時感染して組み換えを起こすことによって生じる可能性がある。

COVID-19ワクチンに対するウイルス抵抗性の発生は、中和抗体がSARS-CoV-2にもはや結合しなくなったことを意味する。したがって、ワクチン接種者の変異株非特異的自然抗体は、もはや抑制されないことになる(※文末注9)。つまり、ワクチン接種やそれまでに自然感染し発症後、回復したことによってSARS-CoV-2に対する防御機能を獲得した人は、その防御機能を失い、変異株非特異的自然抗体が提供する防御能力だけが残るということである。抗S抗体に抵抗する能力を持つ変異株は依然として非常に感染性が強いため、人口密度の高いコミュニティを持つ国や地域では、前回の波の後、感染圧力が再び急速に高まる可能性がある。また、ワクチン接種率が高く、社会的な距離を置くなどの公衆衛生上の措置により感染圧力が低下している国や地域であっても、このような変異株が入り込んだ場合には、同様に感染率の急増が起こる可能性がある。S特異的中和抗体に対するウイルスの耐性は獲得免疫を無力化するため(※注10)、病気に対抗するにはワクチン接種者も全て、生まれながらにして持っている自然抗体の力に任せるよりほかなくなる。S特異的中和抗体はもはやウイルスに結合することができないため、自然抗体の抑制が解除されても、感染性の高い変異株の循環は依然として非常に問題となる。なぜなら、(ワクチン接種者が持つ)ワクチン由来抗体や(COVID-19既感染者が持つ)自然感染で獲得された抗体によるウイルスの感染圧力の軽減がもはや期待できないためである。このことは主にワクチン接種者、つまり、高齢者の大部分に影響を与える。彼らの自然抗体はもはや抑制されていないが、循環する変異株がより高い感染性を持つためパンデミックの初期よりもさらに脆弱となってしまう(※注11)。このような抗体の結合動態の変化を図1にまとめた。

ワクチン接種のメカニズムと、ウイルスの感染力の増加がワクチン接種者と非接種者の罹患率や死亡率に与える影響の予測

集団ワクチン接種キャンペーンが進むほど、より多くの若くて健康な人がワクチンを接種することになる。しかし、より多くの若くて健康な人がワクチン接種を受ければ、集団の中で、変異株非特異的な自然免疫系の抗体が、ワクチンによる抗体によって長期間抑制される割合が大きくなり、ウイルスの感染性(スパイクタンパク)に対する集団レベルの免疫圧力が強まることを意味する。集団レベルの免疫圧力が強まれば強まるほど、自然淘汰された、より感染性の強い変異株が拡大のための適切な繁殖地を見つける可能性が高くなり、これらの、より感染性の強い変異株がより早く優勢になり始める。より強い感染性を持つウイルスが循環し、繁殖を続けてウイルス集団の主流になるのが早ければ早いほど、主にワクチン非接種集団の罹患率と死亡率が急速に上昇する。ワクチン抵抗性が発生しない限り、ワクチン由来の抗体はSARS-CoV-2に結合し、ワクチン接種者の自然抗体を抑制する。しかし、アンジオテンシン変換酵素-2(ACE-2)細胞受容体と受容体結合ドメインとの結合に影響を与える逃避変異を持つ感染性の高い変異株が増えてくると、これらの抗体の中和能力は徐々に低下していく。一方、健康な、ワクチン非接種者の間では平均年齢が劇的に下がるおかげで、(デルタ株などの)より感染性の強い循環型の変異株に感受性のある層が着実に縮小していく(※文末注12)。つまり、最終的には(COVID-19罹患の結果)自然に獲得された免疫や集団ワクチン接種の若年層への拡大により、ワクチン非接種集団でウイルスが病気を引き起こす機会が少なくなる。上述した動態に基づけば、集団ワクチン接種を継続すると、(集団ワクチン接種によって促進された)より感染性の高い変異株が流行の主体になるとともに、ワクチン接種者の罹患率や死亡率が非接種者よりも相対的に高くなることは避けられないと合理的に結論づけられる。また、ワクチン非接種者の中の脆弱な人々が、より厳格な感染予防対策を行えば行うほど(※文末注13)、罹患率や死亡率のピークがワクチン非接種者からワクチン接種者へと移行することになる。ワクチン接種済人口が高齢者層に多いことから、より感染性の強い変異株がS特異的中和抗体に耐性を持つようになると、このことはより顕著になると考えられる。

人口密度の高い集団がスパイクタンパク質へ及ぼす免疫選択圧の影響と、集団ワクチン接種がスパイクタンパク質へ及ぼす免疫選択圧の影響の比較。

感染の大波に襲われなかった国は、より良好な罹患率と死亡率を記録しているが、ウイルスの感染圧力や集団の免疫圧力が高まってウイルスに抵抗性を持たせる前に、いくつかの「より感染性の高い」波が人口を襲う可能性があるため、最終的にはさらに高い代償を払うことになることになるかもしれない。これは、感染予防策によってウイルスの拡散が抑えられ、ワクチン接種率の向上が滞っている場合に特に当てはまる。しかし、あと何回の複製サイクルが必要かはわからないが、このパンデミックの分子進化のダイナミクスによって、必然的にSARS-CoV-2はS-抗体耐性を得ることになる、そうなれば、ワクチン接種者はSARS-CoV-2変異株に対する第1線の免疫防御を完全に取り戻すことができるようになるだろう。このことは、より感染性の強いS抗体耐性ウイルスが優勢になった場合、集団の自然免疫防御を強化することがさらに重要になることを示唆している。しかし、これは同時に、ウイルスがS特異的中和抗体に耐性を持つようにならなければ、集団免疫の構築を開始することすら出来ない、ということである。しかし、ひとたびS抗体に耐性を持つ変異株が出現すれば、ウイルスは本来持っている感染性をさらに高めたり弱めたりする必要はなくなる。真に防御的な集団免疫を構築するライセンスを回復する代わりに(つまり、ウイルスが殺ウイルス性の集団レベルの免疫から逃れることを許す代わりに)、突然、高い代償(※注14)を払うことを強いられた集団は、苦しい時期は比較的短期間ですむだろう。なぜなら、これらの集団は、ライセンスが再付与された後、より迅速に完全な防御的集団免疫を構築するからである。逆に、SARS-CoV-2の感染拡大をうまく抑えられたため、集団免疫構築のライセンスを回復するために支払う対価がはるかに低い集団(つまり、ウイルスが抗ウイルス免疫に対して耐性を持つようになることと引き換えた集団)は、比較的長い期間苦しむことになる。いったんライセンスが再付与されたとしても、実際には、集団が防御的な集団免疫を達成するにはより多くの時間がかかるだろう。ここでは、より感染性の強い変異株(例えば、デルタ)がS特異的中和抗体に対して完全な耐性を持つようになるまでに、複数回の、より感染性の強い波がさらに必要かもしれない。このような集団では、パンデミックの進化の過程がより長期化するほど、そのような(より強い)感染性のある波が感受性の高い者を使い果たしてしまう可能性は低くなり、最終的には以前に無症状で感染した者の健康や生命に比較的大きな損害を与えることになるかもしれない。

 「最新の」ブースターワクチンを接種しても、「抗原原罪」により、以前に誘導された抗体(すなわち、最初のワクチンに特異的な抗体)が強く惹起される可能性が高くなるため、ウイルス抵抗性の促進さえしないことは想像に難くない。これらの「古い」抗体による、進化した、より感染性の高い循環型変異株に対する最適ではない認識は、大きな懸念となるだろう。なぜなら、抗原との適合性の悪い抗体は抗体依存性感染増強(ADE)の引き金となる可能性があるためである。

合理的な感染緩和策がない場合、遺伝的免疫特性および免疫に関する表現型の特性(生まれ持った免疫遺伝的背景、年齢、全体的な健康状態など)が、COVID-19病に抵抗できる個体の自然選択を促進するだろう。その場合、パンデミックによって、以前から人口の多い地域の人口密度が劇的に低下しない限り、感染性が高くS抗体耐性のSARS-CoV-2変異株の感染を減らすために厳格な感染予防対策が大きな影響を与える可能性は低いと考えられる。人命に関わる不当な犠牲を軽減するためには、直ちに明確な行動計画を立てることが道徳的・倫理的に重要である。この計画は、国際的に懸念されている公衆衛生上の緊急事態として宣言されるべきであり、以下のような行動が直ちに取られなければならない。

  • 集団予防接種の中止

  • ワクチンの追加接種を行わない

  • ウイルスの感染圧力を減少させるために、抗ウイルス化学予防をグローバルに展開する(これには、関連する動物リザーバーも含める必要があるかもしれない)

  • 感染性ウイルスの圧力が劇的に減少するまでは、世界的に厳しい感染予防策を再導入する必要がある。

  • 多剤併用による早期治療を、必要とするすべての患者に無償で提供する

  • 健康的な食生活とライフスタイルを促進するキャンペーンの展開

  • 上記の全てを実施し、すべてのSARS-CoV-2系統の感染を防ぐことができる普遍的免疫学的滅菌剤(※注15)(Universal Immunological Sterilizer: UIS)の開発のための時間をかせぐ。

私たちの大きな過ちの後始末を自然に任せてしまうと、人命や健康、医療制度への影響がはるかに大きくなることは間違いない。また、最終的に集団免疫が確立されたとしても、それは自然のパンデミックの後に確立される集団免疫よりも、今後何年にもわたってはるかに脆弱で不均一なものになるだろう。なぜなら、感染性の高いSARS-CoV-2のパンデミックに終止符を打つ集団免疫は、初期には集団レベルの自然免疫にのみ依存するからである。多病原体特異的な自然抗体の限界と、循環している変異株固有の高い感染性(※注16)を考慮すると、最初に集団レベルの自然免疫によって与えられる防御レベルは相対的に低く、脆弱で不均一であろう。そのため、ある程度の人口密度や劣悪な住居・衛生環境は、局所的な流行の火種となりやすい。個人レベルでは、加齢、合併症、免疫抑制などにより自然免疫力が低下すると、COVID-19病に罹患する可能性が高くなる。したがって、集団免疫回復の最初の数年間は、季節的な流行が起こりやすく、人々の健康や生活への影響も比較的大きいと考えられる。しかし、季節的な流行や年月の経過に伴い、(病気から回復した人のおかげで)集団は獲得免疫の貯蔵庫を徐々に補充していき、最終的には集団の集団免疫はより強固なものになる。過密状態、不衛生、大規模な集会は、長期的に見ても(少なくとも一般的なパンデミック対策の観点からも)赤信号を発するものの、人口の集団免疫が強化されれば、最終的には通常の生活に戻ることができるはずだ。しかし、特に集団ワクチン接種と厳格な感染予防策を組み合わせてきた国では、これには少なくとも5年は必要だろう。若年層の移動を管理したり、人口統計学的特性に好ましい変化(出生率の上昇など)があれば、人口の免疫状態を全般的に再活性化し、集団免疫をより迅速に達成することができるかもしれない。

4.結論、将来の展望、代替的な免疫介入の理論的根拠

人口密度の高さも集団ワクチン接種も、ウイルスの感染性を高め、より感染性の強いウイルスの優勢な循環を促進し、比較的多くの割合の若くて健康な人々の自然免疫の防御システムを損ねることになるだけである(過去の自然のパンデミックで影響を受けた割合と比較して)。その結果、遅かれ早かれ、ウイルス中和抗体に対するウイルスの完全な耐性が生じ、罹患率と死亡率が劇的に上昇することになる。SARS-CoV-2のパンデミックを、現在の不完全なCOVID-19ワクチンで制御することは不可能である。(急性かつ自己限定的なウイルス感染を引き起こす変異性の高いウイルスの)パンデミックを抑えるために不完全なワクチンを使用すれば、自然は、集団免疫を再構築するライセンスを人類に付与する見返りに、より多くの人命と健康という犠牲を要求するだろう。

人々がウイルスに対する強固な防御免疫を獲得できれば、パンデミックを永遠に終わらせることが出来る。これは集団免疫によって自然に起こることである。集団免疫は、病気を媒介とする生まれ持った免疫の選択(自然免疫、多種類の病原体に対する要素)と積極的な免疫獲得(獲得免疫、病原体特異的な要素)の複合的な結果として、次第に強くなっていく。集団免疫が頑強になればなるほど、集団がより効果的かつ持続的にウイルスをコントロールできるようになり、大きな流行の頻度は減少し、その影響も薄れていく。

人類がどれほどの過ちを犯しても、自然は常にパンデミックをコントロールし、それを終わらせるのに十分な集団免疫を生み出す。だからといって、根本的に誤った免疫介入に対して、悲惨な代償を払わずに済むわけではない。というのも、自然は、まず、集団の免疫状態をSARS-CoV-2ナイーブな集団、つまりパンデミック開始時と同様の状態にリセットするからである。しかし、パンデミック開始時とは異なり、リセットされた免疫学的にSARS-CoV-2ナイーブな集団は、オリジナルの武漢株よりもはるかに高い感染性を持つウイルスの変異株に対処しなければならない。これは、高いウイルス負荷に対処するようには出来ていない人間の自然免疫系にとって、手ごわい挑戦となる(1、2、3)。「耐性化後」の時代には、感染性の高い変異株の循環と、人々の免疫力の低下とが相まって、人口密度の高い地域(都市部など)ではしばしば突発的に流行が発生し、その罹患率や死亡率は高いものとなる可能性が高いが、地方での発生頻度は低く、深刻な影響を受けることはないだろう。その一方で、都市部では集団免疫がより早く獲得されるが、人口密度の低い地域では、すぐに集団免疫の恩恵を受けることは難しいだろう。地方では、繰り返しウイルスに曝されるリスクを最小限に抑えるために、より長い期間、感染防止策に頼る必要があるだろう。地方と都市部の疫学的格差が解消され、より均質な分布になり、SARS-CoV-2が完全に風土病化するまでに数年かかると考えられる

コロナウイルスのパンデミックに対し、人工的な(ヒトによる)免疫介入を行って、脆弱な人々を迅速かつ持続的に保護することができるのは、ウイルス排除免疫(滅菌免疫、Sterilizing immunity)が誘導される場合、その場合のみに限られる。ウイルス排除免疫とは、ウイルスに感染した細胞を排除することを目的とした免疫反応の誘導を意味する。感染の初期段階でこれを実現できれば、ウイルス感染とウイルスの免疫逃避を同時に防ぐことができる。したがって、ウイルス排除免疫免疫をもたらす免疫介入であれば、たとえ感染性の高いウイルス変異株のパンデミック時に展開され、ワクチンの適用範囲を人口のより大きな(脆弱な)部分にまで拡大したとしても、ウイルスに免疫圧力をかけて、より感染性の高いウイルスの変異株を生み出す危険性はない。通常、パンデミックの第一波は、集団の最も弱い人々を襲う。感染圧力が高まると、多くの若くて健康な人々の自然免疫の抗体が一時的に抑制される可能性がある。この短期間の自然抗体の抑制期間(約6~8週間、15)の間は、COVID-19疾患にかかりやすくなる。疾患から回復した人は、自然免疫の防御力に代わって持続的な獲得免疫を得る。つまり、パンデミック時に集団の中で積極的にワクチン接種を行うべき割合は、前の波が及ぼしたウイルスの感染圧力のレベルのみで決定されるのであって、パンデミックを制御するために必要な、感染率が急増を避けることが出きる接種率が反映されるのではない。介入がウイルス排除免疫をもたらすものであるならば、感染者の増加を容易に抑制することができるので、人口の脆弱な部分のみにワクチン接種を行えば、急性自己限定性ウイルス疾患のパンデミックを効果的かつ持続的に制御するのに十分であり、集団ワクチン接種は必要ではない。さらに、ウイルス排除免疫をもたらすワクチンであれば、たとえウイルスの無症候性リザーバーが継続的なウイルス感染源となっていたとしても、接種者は完全かつ長期的に保護されるだろう。最後に、普遍的免疫学的滅菌剤(universal immunologic sterilizers : UIS)を使用すれば、流行するウイルス株の感染性のレベルに関係なく、ウイルスを根絶する(※注17)必要もなく、あらゆるコロナウイルスパンデミックを無効にして一掃することができる。現在のCOVID-19ワクチンはいずれもウイルス排除免疫を誘導するものではない。パンデミックの際に使用してはいけない。なぜなら、免疫逃避を助長し、(感染性の高い変異株を繁殖させ、感染圧力を増して若年層の感染しやすさを増すことにより)自然免疫と(中和抗体に対するウイルスの耐性を駆動することにより)獲得免疫の両方を低下させるだけだからである。

もし、私たち現代人が、自分たちがひとつの人類であり、お互いを思いやることを自覚するようになれば、「賢い者」(ホモ・サピエンス)としての並外れた独自の能力を活用し協調することで、流れを変え、間違いを正すことができるはずだ。しかし、私たちの知性(IQ)と感情(EQ)が相乗的に働くことで、初めて「賢さ」は発揮される。ここ数カ月、この相乗効果が大きく損なわれているのを目の当たりにすることが増えている。この危機に対する全体的なアプローチを見直し、より早く正常な状態に戻し、母なる自然に任せた場合の犠牲者の数をはるかに下回るような解決策を考えよう。流れを変えるためには、協力し合い、まずは集団ワクチン接種をやめ、そして、高いウイルス感染率が人々にさらなるダメージを与えるのを防がなければならない。その間に、早期治療の選択肢を増やし、より合理的でパンデミックに適した免疫介入策の開発を急がなければならない。そのような免疫介入策は、私たちが自然免疫系を教育して免疫能力を微調整し、より病原体特異性があり持続性のある方法で免疫記憶を獲得するやり方を学ぶことが出来れば可能となるだろう。

5.参考文献

  1. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.02139/full

  2. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2017.00872/full

  3. https://www.jimmunol.org/content/jimmunol/194/1/13.full.pdf

  4. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7690066/pdf/41385_2020_Article_359.pdf

  5. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7662119/pdf/fimmu-11-595535.pdf

  6. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5493588/pdf/cti201719a.pdf

  7. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7451196/pdf/main.pdf

  8. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3310443/pdf/10-2042_finalP.pdf

  9. https://trialsitenews.com/why-is-the-ongoing-mass-vaccination-experiment-driving-a-rapid-evolutionary-response-of-sars-cov-2/

  10. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7941658/pdf/nihpp-2021.02.23.21252268v3.pdf

  11. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.07.28.454085v1.full.pdf

  12. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4899887/pdf/main.pdf

  13. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8064354/pdf/viruses-13-00546.pdf

  14. https://trialsitenews.com/a-last-word-of-caution-to-all-those-pretending-the-covid-19-pandemic-is-toning-down/

  15. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7772470/pdf/fimmu-11-610300.pdf


図表

表1: ワクチンメーカーや公衆衛生当局によるCOVID-19ワクチンの効果予測と、(集団ワクチン接種がパンデミックの進化的ダイナミクスに与える影響を考慮したもの)科学的根拠に基づく予測の比較。メーカーや公衆衛生当局の予測との乖離は赤で表示されている。



表2:変化し続けるCOVID-19ワクチン(C-19ワクチン)に関する公式見解


図1:抗S抗体に対するウイルス抵抗性獲得の過程で、ワクチン接種者は、ワクチン由来の抗体による自然抗体の抑制を長期間(6ヶ月以上)経験する。ウイルスがワクチン抵抗性がになると、抑制は解除されるが、そのときには、より感染性の強い、抗S抗体耐性の変異株が循環することによる高い感染圧力のために、すべての人々の(免疫の有無に関わらず)自然抗体が一時的に抑制される可能性がある。

脚注

(1) 結合部位は、自己由来のモチーフに類似する(1, 2, 4, 5)
 
(2) 全体的または累積された結合力は、結合「アビディティ」と表現される。
 
(3)「滅菌(Sterilizing)」とは、感染性ウイルスの排出を完全に防ぐことを意味するのではなく、ウイルスに感染した宿主細胞を排除することができる免疫反応を誘導する能力を意味する。
 
(4)文献やソーシャルメディア上で、ブレークスルー感染例に関する無数のレポートが出回っている。
 
(5) ブレークスルー感染による発症例が公式に報告されるようになってきた(最近のCDCのプレスリリースを参照)。
 
(6) これは、現在、多くのワクチンメーカーが、SベースのCOVID-19ワクチンにアジュバントを追加している理由でもある。
 
(7)欧米では、60歳以上の大部分の人がワクチンを接種を完了しているため、非接種者の罹患年齢層は60歳以下となっている。
 
(8)集団ワクチン接種キャンペーンがよりゆっくりと進行している現在、集団レベルの免疫圧力は、中和逃避能力を持つ免疫逃避変異株を一斉に選択するにはまだ十分ではないかもしれない。したがって、抗S抗体耐性を持つ変異株が大量に循環する前に、感染性はさらに強いが、S指向性の免疫圧力からの中和逃避変異を組み込んではいない新しい変異株が選択され、大量に伝播する可能性がある。したがって、集団レベルの免疫力によってウイルスが耐性を獲得する前に、感染圧が比較的低く、かつ/または、ワクチン接種率が比較的低い国で、より多くの感染性変異株が出現することが予想される。
 
(9) これは、ワクチン由来抗体の大部分が、SARS-CoV-2のRBD内の主要抗原エピトープに向けられているためである。
 
(10) ワクチン接種でも自然感染でも、防御的Tメモリー細胞を誘導する証拠はない(14)

(11) 自然抗体はあらゆる種類の変異株に対応できるが、高ウイルス量には対応できない(1, 2, 3)
 
(12)ワクチンを接種していない健康な人口の平均年齢が下がると、機能的で多反応な自然免疫系抗体の平均濃度も下がると考えられる。
 
(13)ワクチン接種者の自然抗体は、ワクチン由来の抗体によってかなりの免疫抑制を受けるため、ワクチン接種を受けていない人と比較して、感染予防策が、ワクチン接種者の罹患率と死亡率に与える影響がはるかに少ないことは考えられないことではない。
 
(14)これは、SARS-CoV-2が、感染予防対策が不十分な過密地域で拡散している場合に多く見られる。
 
(15)私は、「ワクチン」という言葉を意図的に避けている。なぜなら、感染を予防し、疾患を無効にすることができる普遍的な免疫介入の基礎となる免疫学的原理は、従来のワクチン学を支配する概念とは全く異なるからである。
 
(16)パンデミックの嵐が静まっても、動物のリザーバーを含めた無症候性キャリアによる感染は、感染性の高い変異株の継続的な循環を保証する。
 
(17)例えばSARS-CoV-2は、無症状で感染したヒトと数種類の動物キャリアによって伝搬しうるため、ウイルス根絶のためには、ヒトと数種類の動物の両方への大規模なワクチン接種や数種類の動物の処分などの大規模な取り組みが必要となる。
 

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