【保護者向け】 高校受験で確認すべき志望校の「卒業生の進路」欄の見方

はじめに

中学生のお子さんを持たれる親御様にとっての一大イベントである高校受験。
大人の立場に立ってみると、どんな高校に通うかによってその後の進路や将来が大きく変わっていく可能性があるということがとてもよくわかるのですが、なかなか子どもたちにはその実感がなく、どうしても「なんとなく」の理由で進路選択をしてしまうことが少なくありません。

中学生の進路選択でよく選択軸になってくるのが、
「高校卒業後の進路」「特定の部活の有無やその強さ」
「学校までの利便性」「校舎の綺麗さ」
あとは「制服」であったり「校風の自由さ」などなど。

どの軸を重視して進路を選択するにしても、一番大切なのは
「その選択がお子さんの想い」なのかどうかと言うこと。

これは本当にあった話なのですが、
親御さんが良かれと思ってお子さんの進路を進学校気質の男子校に決めて、そのままお子さんをきちんと納得させずに入学させた結果、入学後そのお子さんがだんだんと無気力になっていき、その後大学進学どころか専門学校を中退。それからずっと働かずに引きこもりになってしまった。。。という事例も聞いたことも。

あくまでこれは極端な例ですが、お子様にとって本当に納得した進路を獲得させて上げることはそれくらい大切なことになります。

だからと言って、お子様の進路選択を放置することがいいというわけではありません。
学習塾で教室長として親御様とお子さん両方とお話をしていて思うのが、大人の責任として、知識や経験でまだ未熟なところがあるお子さんに対して適切な情報を提供することが大切だと考えています。
今回は、先ほど挙げた数ある選択軸の中から特に親御さんが気になる方も多いと思われる「高校卒業後の進路」に絞って、考え方だったり見方をお伝えさせていただければと思います。

卒業生の進路状況とは?

当たり前ですが「卒業生の進路状況」とは、その高校に通う生徒がどのような進路を獲得したのかを明らかにしたものになります。
つまり、この情報を読み解くことによって、その高校に通うことがどのような進路獲得につながるのかについて知ることができる、というもの。
高校によって進路指導であったり入試対策の取り方は千差万別で、高校で行う勉強が大学受験に直結しないという場合も多くあります。

関西圏の一例ですと、近畿大学近くにある八尾翠翔高校(偏差値47)という大阪府立の公立高校では、その偏差値に対して近畿大学への合格率が高く、「この高校は近畿大学への進学が強い」という結論を出すことができる。といった事例もあります。

もちろん、東大合格者ゼロの学校から初の東大生が生まれることもあるように、必ずしも高校の進路指導がお子さんの進路を決めるということはないのですが、先ほどお伝えした八尾翠翔高校の事例のように「卒業生の進路状況」を詳しく読むことがその後の将来を見据えた上での進路選択をする上で必要不可欠な要素になることはお分かりいただけるかと思います。

こちらの高校の場合だと、右上の「進路」をクリックすることで確認できます。

「のべ人数」と実数

また、ここで重要なのは「進路を選択したか」ではなく「進路を獲得したのか」である点です。高校受験だとほとんどの生徒さんは、私立専願での1校受験もしくは、私立高校と公立高校を併願した場合で2校のみの受験であり、したがって合格校も一人当たり多くて2校となります。

しかしながら、大学受験ではそうはいきません。
入試のセオリーとして、滑り止めも入れて5校を受験することが推奨されている上に、同じ大学をさまざまな入試制度を使って複数回受けることも可能になりますので「一人の優秀な生徒が偏差値の高い大学複数校に複数回受かる」という場合が多く発生するのです。

ここで、実際の進路状況を分析してみましょう。

進路状況の見出しが「2021年度 進路状況(のべ人数)」になっていることがわかります。「のべ人数」ということは、合格者全員を被りありの状態で計上しているのです。今回の場合ですと、近畿大学の入学者は現役で210名いますが、これは同じ生徒が複数回合格した場合も含めており、実数としては
まだまだ少ないことがわかります。

おおよその実数を割り出す方法

もちろん、この状況から正確な数字を割り出すことは不可能なのですが、
このような場合には「のべ人数÷3」がおおよその実数と言われています。

なので、今回の近畿大学の場合ですと210名÷3=70名がおおよその数ということになります。HP内の事業報告書から、この学校は1学年700名程度の学校であることが明らかにされていましたので、受験生700名のうち70名、
つまり生徒数の10%が近畿大学に合格するということがわかります。

もう少し計算を進めますと、関関同立に合格する生徒が111名、産近甲龍に合格する生徒が338名になりますので、関関同立と産近甲龍の合格者をあわせると449名。こちらを÷3しますと149になります。
つまり、この高校に通う149名の生徒が有名私大に合格するという計算になります。

まとめると、1学年700名のうち有名私大に合格する149名ということで、
この高校に入学した場合は上位20%にいることができれば、産近甲龍以上の大学に入学することが可能ということがわかります。
この結果をどのように捉えるかどうかは、お子さんの現在の偏差値であったり、勉強状況によって変わってきますが高校選びをする上での目安のひとつにできることは間違いありません。
このように、今回お伝えした「卒業生の進路」への考え方を用いることで、少し先の大学受験などの将来を見越した高校受験をすることが可能になります。

これから夏秋と季節が進むにつれて、高校受験に向けてオープンキャンパスや説明会に参加することが増える時期になってきます。そこではさまざまな情報を得ることができますが、その得た情報を適切に理解したうえでしっかり比較検討して適切な進路選択をしていただければと考えています。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回はわかったつもりになりがちな「卒業生の進路」欄の読み方について解説しました。もちろんあくまで目安になりますので、どんな学校に行くことになったとしても、努力次第ではどんなようにでも将来を変えることが可能なので、あまり悲観的にはならずに、ひとつの検討軸として活用していただけますと幸いです。

この記事の著者

少しだけ自己紹介。ざっくりとした経歴はこちら
定期テストが5科目合計150点だった中学時代を経て、どうにか滑り込みで入学した大阪の私立高校(偏差値47)から関西学院大学に逆転合格。
学生時代から大手学習塾/家庭教師を数社経験したのち、個人経営の学習塾にて教室長として2年間従事。開業後赤字続きだった教室の黒字転換を経験。現在は上場IT企業でセールスとして働きながら、YouTubeチャンネル「ヤマケンスクール」の運営に携わる。


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