連作短歌「(phénoménologie)」
「ほらね、君が現象学者だったらこのカクテルについて語れるんだよ、そしてそれは哲学なんだ!」
眼で視ると感動するということがわかりはじめて空を撮る人
ひとかかえほどの幹、と聴くときの想像上の抱擁のことも
サルトルは感動で青ざめた。ほとんど青ざめた、といってよい。それは彼が長いあいだ望んでいたこととぴったりしていた。
振り返るように話そうさわってもいいよ明日には切る髪だから
八月のざんざんと切る黒髪の鏡のなかに降り積もる雪
髪がある カセットテープの傾きに触れる 眠り