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連作短歌

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ふだんの短歌です
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記事一覧

連作短歌「スナップショット的」

カタログを見ているときのスピードでわたしの頼りなさを蔑んで 下書きのようなラフさで本心を置く。下書きのようなラフさで、 違う人ならうれしいかもしれないセリフを言って笑う髙橋

連作短歌「ユーグレナ」

あの夜の僕ら絶対ミドリ色だったと誰か信じて、欲しい 一生に一回あなたが叫ぶとこ見たいなあとても美しいから 長生きをしたい 自然な早死にをしたい 片思いをしたままで

連作短歌「槍投げ」

2の速さ4の速さを操ってCM飛ばす夜中の手つき 他人から見える自分と姿見に映る自分の差がモダニティ もらとりあむ人間。もらとりあみながら変な形の階段を撮る

連作短歌「半信半疑」

なんらかのパーカッションになりたくてわけもわからずぬり絵を買った 餅つきは見ているだけが懐かしいくっちゃんくちゃんくちゃんくちゃくちゃ 正解がなくてうれしいお絵描きは中学校のようなカオスさ

連作短歌「運動不足」

連休を喜びすぎて久々に会った男に心配された もう泣かない過半数から支持されたらしい善意が理解不可でも ボウリングの球がゴロゴロ 雷の音がゴロゴロ 報告は愛

連作短歌「豚の生姜焼き定食」

好きなものどんどん減っていく日々をリバーシブルにしてやりすごす 突き詰めてしまえば薬味が食べたくて薬味以外を食べてるのかも 食べ終えた皿と一緒に運ばれていってしまった小さな勇気

連作短歌「かたより」

比喩ですが心の波打ち際に来て 繰り返しよりたった一度で 手作りの椅子をギシギシさせながら春一番に添える指笛 オムライス置き場をビルドインしたい 100年ローンのような生き様

連作短歌「温める」

いつ来ても同じ気温の空港の呼べばもう消えそうな自己愛 大宮に盆栽美術館という場所があるらしいという情報 疲れるね消え合っていく牛乳とココアの渦のようなイラスト

連作短歌「昼は梢で眠っているが」

初めてなことをやりたい履きつぶしたのと同じのをまた買うとか 横顔を見過ぎて窓の外までの白い光が記憶の全部 ストーブの囲いに肘をのせながら休み時間を魔術でのばす

連作短歌「マイマイガ」

性格の不一致なんて愛おしいことが起きると信じる力 気を合わせ文化を合わせ目を合わせ失敗できる心のみぎわ いつまでもエレベーターがとまらない私がそれを願ったせいだ

連作短歌「すぐかいつか」

仕事辞めようとしている友達の身体の見たことなかった部分 警察を呼んだり野次馬が来たりはめんどくさいと思ってしまった 日本語に日本語が重なっているエンディングロールの始まりに

連作短歌「さち」

出来事をどんどん引き寄せてしまう彼を正直気の毒におもう 趣味じゃないシミュレーションの西口の階段のぼるヒト型うさぎ こんなにも実家の近くにずっとある来たことなかったあじさい寺で

連作短歌「情と景」

信じられないけどまだまだ使えてる電気ケトルと独身の姉 ずれていくこたつの布団が完全に外れたら春、電話をかける 映像の概念的な嬉しさを捕まえている卒業制作

連作短歌「感じて」

踏切の左上にある居酒屋の提灯とても赤くて多い 偶然は機械のように輝いて残酷性を許してくれる? 自分で思うくらい自分が単純でいてくれたなら、いつかね、でいい