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ダイヤモンドシティ

 駅の改札を抜ける。沢山の喧騒が、服を着て歩いている、僕はそんな街に足を踏み入れた。星は見えなくとも、それと同じくらいの輝きが至る所でその存在を主張する。たった3日間。でもそんなに短い期間すら、恐ろしく長いものなんじゃないかと感じてしまう。

 ……僕がこの街に来たのは、ここで全国大会が開かれるから。サッカーとかバスケとか、そんな盛り上がるような大会ではない。それでも僕にとって、いやこの大会に参加するであろう全ての人にとって、とても大切な3日間である。それなのにこの街の眩しさと冷たさに足がすくんでいる。今は泊まる場所へ向かうだけなのに、大事な大会への緊張とかじゃないのに、足が動かない。この街が怖いのか、畏れ多いのか、とにかく僕が居てはいけないような、そんな風に考えてしまう。

 巨大な液晶パネルが、光と音をこれでもかと披露する。駅前では、ギターを持ったミュージシャンが歌っている。酩酊したまま、座り込んで眠る大人が片手では収まらないほどいる。ここは、そんな街。そんな街だけど、僕の住んでいた場所よりもちゃんと生きている気がした。正義を持って、悪を抱えて、どっちがどっちなのか分からないほど混ざりきった上で、その街は生きている。だからここは、ずっと傷が付かないのだろうな。燃え尽きてしまうまでずっと……。


 こんな街で、僕は僕として輝けるか。その不安が、僕の足を締めつける。縛られ慣れるまで、きっと僕は動けない。そう確信して、ひとつ深呼吸をした。