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第5回:弁護士ドットコムの企業分析 ~急騰する脱ハンコ事業を考察~

皆さんこんにちは。YJキャピタルの山下(@JP_YJC)です。

上場企業の企業分析のnoteを連載しています。前回はデジタル化に舵切りして成功を収めているビックカメラの企業分析を行いました。

今回は、脱ハンコ文化を推し進める弁護士ドットコムの電子契約システム「クラウドサイン」を中心に、事業の考察をしていきます。インパクト強くて印象的なCMも最近よくTVで見る気がします。

事業紹介

弁護士ドットコムは、主にユーザーから弁護士などに相談を行えるリーガル版ヤフー知恵袋といったサービスを提供する「弁護士ドットコム」や、契約書の捺印のデジタル化を行う「クラウドサイン」などを提供しています。

弁護士ドットコム概要

当社でいま一番成長している「クラウドサイン」は契約締結をデジタル化するプロダクトで、導入されると捺印の手間を大きく削減できるため、どちゃくそ便利なプロダクトです(語彙力)

実際使ってみると「なんで今まで紙に捺印なんかしてたんだろう」という気持ちになってきます。

クラウドサインすごい

コロナの影響で「捺印のために出社する」という事態が社会問題にもなったことから、導入社数が急拡大しており、直近では株価もうなぎ上りです。

弁護士ドットコム株価

今日は、そんなクラウドサインが大人気な弁護士ドットコムの企業分析をしていきたいと思います。
ではまず、業績推移から見ていきましょう。

業績推移

まず売上ですが、四半期ごとの売上推移は以下のようになっており、直近の2020年度4Qまで安定した売上増を実現しており、特に今期はクラウドサインの売上増が4Qの好調を後押ししています。

弁護士ドットコム売上

次に営業利益ですが、3Qこそ先行投資としてクラウドサインの販促費で赤字になっていますが4Qの着地は人員採用や広告宣伝費が増加したことを加味すると横ばいではあるものの事業そのものは好調と言えると思います。

営業利益推移

販管費推移

(後述しますが、むしろリーガルテック市場は成長期に当たるため、フェーズとしてコストをかけてでも市場浸透が優先される当期においても、しっかり黒字を出している点を考慮すれば営業利益率はかなり良好だと思います)

総括すると、コスト増になったものの、売上は好調、営業利益についても堅調に推移という具合でした。
当社の業績が好調なのは見ての通りですので、当社が属するリーガルテック市場がどうなのか?について、少し深掘りしていきたいと思います。

リーガルテック市場の分析

クラウドサインは俗にいう「リーガルテック市場」に属する、企業法務向けサービスになります。リーガルテック市場は、2020年時点で300億円弱ほどの市場規模と想定されています。

リーガルテック市場推移

中でもリーガルテックは主に三つに大別され、
① 企業向け:文書作成~契約締結の事務処理サポート
② 法律専門職向け:リサーチ、デューデリなど実務支援
③ toC向け:紛争解決サービスや弁護士ドットコムのような相談サイト
に分けられます。

リーガルテックカオスマップ

今までは③の領域で存在感のあった当社ですが、現在売上が伸びているクラウドサインは①の領域になります。

ちなみに、①の電子契約市場の市場規模は以下のようになっており、300億円弱の市場規模の中でも成長性が非常に大きい領域であることがお分かりいただけると思います。

電子契約サービス市場

弁護士ドットコムは、リーガルテック市場で既に高いシェア率を持つtoC領域だけでなく、toB市場もクラウドサインによってシェア拡大していく戦略を取っています。

実際のクラウドサインの導入件数の推移はどうかというと、コロナによる脱ハンコの動きも後押しし、非常に好調な推移になっています。

導入企業シェア80%ってエグいっすね。。。

クラウドサイン導入推移

今後の導入社数についても、政府からも「新しい生活様式」の発表があったように、終息に向けては中長期的な取り組みが求められることから、クラウドサインのニーズは継続していくものと思われます。

では最後に、今後のクラウドサイン拡販に向けた弁護士ドットコムの戦略を、妄想も含めつつご紹介していければと思います。

今後の戦略

リーガルテックのtoB市場の説明に当たって、そもそも企業や法律専門職(主に弁護士)がリーガルテック技術に求めることを簡単にご紹介できればと思います。

リーガルテックには、大きく二つのテクノロジー開発/提供のレベルが存在します。

① 紙→デジタル化による業務効率化
② デジタル化されたデータをAIなどアルゴリズムによって人的作業を削減

PKSHA参考画像

※参考:PKSHA社のIRに分かりやすい図があったので引用

企業法務や弁護士の皆さんは膨大なテキストから問題点がないかや、膨大な契約締結/管理を行う必要があるわけですから、当然、業務効率が上がるだけでなく、システムに任せられる部分が増えれば増えるだけメリットは大きいですよね。

クラウドサインは①の「紙→デジタル化」を推進するプロダクトですが、工数削減や、労働人口減少による企業ニーズを踏まえると当然、②の「AIによる人的作業削減」は必須になると思われます。

このようなプロダクトニーズに対して弁護士ドットコムも手を打っており、Sansanとの提携によるAIでの契約内容自動判別機能を備える「クラウドサインAI」や、大手金融機関などのDXをテック企業のLayerXとの提携を行い、電子契約に伴うシステム構築の包括的な支援や、技術開発を行うことを相次いで発表しています。


今後はこうしたパートナーとともに、単なる契約のデジタル化にとどまらない「AIによる人的作業削減」を積極化し、更なる市場普及を目指していくと思われます。

最後に

いかがだったでしょうか。

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