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オールアバウト社の企業研究~メディアビジネスの変遷も添えて~

皆さまこんにちは。YJキャピタルの山下(@JP_YJC)です。

今日から、週1回くらいのペースで上場企業の企業分析noteを投稿していきます。
Twitterで記事更新のリリースをしますので、気になる方はフォローをお願いします!

今回は第一弾として、株式会社オールアバウトさんのIR資料やそのほか記事から、見えてきた企業分析と市場環境の考察をしていきたいと思います。

事業紹介

オールアバウトは専門情報を中心としたwebメディア運営による広告事業と、ECやコンテンツ配信といったコンシュマー向けのwebサービス提供を行う2つの事業を運営しています。

事業一覧

・メディア事業
メディア事業でとくに有名なのは、社名にもなっているAll About(https://allabout.co.jp/)で、様々なカテゴリの専門家の記事を掲載しているwebメディアを運営しています。

こうした情報特化型のwebサイトは検索経由の流入や、記事掲載を提携しているヤフーのようなアグリゲーションメディア(情報集約してあるメディアサービス)からの流入でPVを稼いでいます。

PVが増えると、サイト内の広告クリック数も増え、Googleアドセンスなどの広告クリック収益が高まるため、結果として売上が伸びるという構造になっています。

・コンシュマー事業
「All About」以外に好調なのがECサイトの「サンプル百貨店」です。

サンプル百貨店とはメーカーなどがテストマーケティングや在庫処分を行いたい商品を、購買後のアンケート回答を条件にして、割安で販売するECサイトになっています。

安く商品を手に入れたい消費者と、テストマーケティングで商品テストを行いたい企業側のニーズをつなぎ、順調に売上を伸ばしているサービスです。

このサンプル百貨店以外にも、フォント販売サービス、資格取得用のコンテンツなどコンシュマー向けのサービスも展開しています。

サンプル百貨店ビジネスモデル


業績推移

メディア事業とEC事業の二つが主軸ということはわかったので、最新のIR資料である2020年第2四半期の業績を見てみましょう。

まず、売上は8期連続増収と、伸び率は低下しているものの業績は堅調な推移です。

売上推移

続いて、メディア事業(灰色)とEC事業(ピンク)の構成比ですが、EC事業が売上の大半を占めていることが分かります。

事業別売上


あれ?オールアバウトはメディアの会社のはずでは…?という疑問が浮かんだ方には、また後の「マクロな市場分析」で理由を解説していきます。

続いて、営業利益の推移です。
2018年までは比較的堅実に営業利益を計上していたのに対して、2019年3月期から営業利益が昨年対比割れしているのが分かります。

営業利益率推移

では、どのような経緯があったのか、事業別の業績推移で詳しく見ていきましょう。

まずはメディア事業を見てみると、先ほどの2019年度の営業利益損失がメディア事業に起因していることが、グラフから分かると思います。

メディア推移

続いてEC事業はこのようになっており、メディア事業とはうって変わって業績は昨年対比でもしっかり成長しています。

EC推移

このメディア事業が不調な背景と、今後業績を伸ばすためにどんな戦略を取っているのか、深掘りしていきます。


市場分析

今現在、国内のweb広告市場は成長する一方、メディアビジネスは競合の増加により市場環境が大きく変わってきています。

いまはSNSや、いまご覧になっているようなnoteで誰もが情報発信することが可能な時代です。ある程度一定のジャンルを知っていれば誰もが「専門家」になれる時代になりました。

そうなると、専門情報をウリにしているメディアは相対的に、昔より専門家が増えたことで、「ここでしか手に入れられない情報」を供給しづらくなってしまい、PV数(=広告クリック数)を稼ぎづらくなってしまいました。

(こうしたPVから広告売上を稼ぐモデルはPV数の伸び悩みから成長鈍化傾向にあり、ヤフーも1PVあたりの単価をいかに高めるか、に主眼を置いた事業戦略になっています)

専門情報メディアの変遷をまとめてみると、以下のようになります。

メディア変遷

昔は、SEOや提携サイト、SNSのような集客基盤に適切なマーケティングをすることで、集客力を維持できる時代でしたが、2020年現在は増えすぎた「専門家」に対抗しうるような情報が必要となります。

Newspicksはその典型例で、誰もが知らないような深いインサイトのある独自記事を提供することで、広告からユーザー課金モデルへの転換を行い大成功を収めています。

All Aboutも過去の株主総会にて「脱アドセンス収益」を明言しており、Newspicksとは異なり、企業側から広告費を貰ってPR記事を書くタイアップ記事広告の売上構成比増を目指しています。

ですが、タイアップ記事広告は、案件受注~記事掲載までの人件費がかかる関係から原価率が高く、結果として営業利益が低下してしまった、と考えます。
(加えて、ITP導入による広告クリック単価低下なども考えられますが、割愛します)


勝ち筋

メディア事業、EC事業それぞれの今後の勝ち筋についてです。

・メディア事業
All Aboutはこの営業利益率の低下に対して、All About Prime Adという商品のプラットフォーム化を目指すことで、収益性向上を実現しようとしています。
受注~広告効果の報告など、旧来営業が行っていた業務をプラットフォーム化することで人件費を低減し、利益率の向上が見込めます。さらに、空いたリソースで高単価プランの受注などが決められるようになれば、売上増も見込めるため、今後の業績推移がとっても楽しみです!

・EC事業
一方、EC事業は順調に売上成長を続けており、施策が好調な点も相まって収益面ではコア事業となるでしょう。
メーカーのテストマーケティングの際に重要なサンプル数を140万という圧倒的な会員数を抑えている点が強みとなり、今後も取り扱い商品数を増加させていくことで、以下のような好循環サイクルを作ることができます。

EC事業解説

直近の施策も好調で、今後もEC事業の更なる拡大が期待されます!

最後に

「こんな企業の分析が見たい!」というご希望あれば、どしどしTwitter(@JP_YJC)のDMまでご連絡ください!

最新記事のリリースも、Twitterから随時発信していきますので、ぜひフォローのほどよろしくお願いします。

今回の記事の出展
https://corp.allabout.co.jp/files/2019/11/191108_01.pdf


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