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宇宙の周波数 弾性力を利用する

 2023年のユタ州中国語新聞『東方報』でのリンヤンコラム連載、日本語に訳した文章をご紹介します。

  宇宙の周波数 弾性力を利用する 

 中国書道の運筆には重厚さと弾力性が必要です。書道家はこの二つの間のバランス感覚を追求しています。
 毛筆の先端は下に向かう重力を表すだけでなく、上に向かう反発力を持っています。
 一つの筆画は中段で力を発揮し、動きに応じて力を増していきます。その後、下に向かう力が弾性力に替わります。このような力が霊妙さを支え、千変万化の智慧を生み出します。

 以下の話は、私が張浩波先生の授業でメモした内容です。 
 弾力性のあるものは、私たちの身体に一種のリズム感と共鳴を生みます。例えば、楽器の弦の振動、合唱の声の交錯と調和、走る時の足裏の弾力、雪の上を滑るスキー板の軽重・緩急、これらはすべて弾力性が生み出すリズミカルな震動で、我々の身体に心地よさを感じさせます。これは宇宙の周波数です。ですから、いったんそのリズムに合うと、電気のコンセントに接続したように、充電されているという感覚を持ちます。

 多くの人が字を書けば書くほど気持ちがよくなるのは、ここに原因があります。私たちは、弾力性のない様々な筆記具を、生涯の大半の時間に使っています。それにのめり込んで夢中になるという人は、あまり聞いたことがありません。それに対し、毛筆で書き始めて半年たつと、夢中になっているという感覚があります。それはリズムと調和の感覚が一つの原因だと思います。

 私が継承した伝統武術・尹氏八卦掌、その主要な力点は「冷、弾、脆、快、硬」という五文字によって表されます。その中で「弾」は、尹氏八卦掌を代表する力を発揮する方法です。私の師父のお父さん王敷先生(尹氏八卦掌三代目)の著書では、次のように紹介されています。

 弾は弾枓力、瞬間的な反発力のことで、バネで矢を射るのに似ている。力を発揮する時には股を緩め、腰を緩め、肘を緩め、腕を緩める。これは弦が緩んで矢を射出す瞬間の発射力である。その射出す強さには、静と動、緊張と緩和の結合があり、八卦陰陽の原理を体現している。

 太極拳の型を行う時には、まず呼吸と身体を深く沈め、大地からの力を得て、はじめて行動を起こします。一水空のすべての動作では、始める前にまず息を吐きます。体内の不必要な空気を外に出すためですが、もう一つ目的があります。それは軽い反発力を得るためです。

 以上の認識は、以前このコーナーに書いた「重力を体得する」ことと結びつきます。緩和と抑制によって下方に向かい、地のエネルギーを受け取り、反発力を得ます。空中から給油して蓄積した力によって、新しい力を発揮するのです。この一連の極めて微妙な動作と感覚は、大自然が私たちに与えてくれた快い感覚と優雅な味わいを、その中に隠し持っています。

 最近、「濃厚な味わい」を好むという現象が広がっています。それは飲食の面だけでなく、生活の様々な面にも浸透しています。一時的な強烈な刺激で表面的な感覚を満足させたいという欲求は、より深く持続的な探求を妨げるものです。
  書道と伝統武術における弾性力は、心を静め、精神を落ち着かせるという条件の下で、はじめて体得できます。中国人は繊細な筆先で力感を表現します。筆先は私たちの身体の力の最先端であり、その最も細かい部分に一つの生命を見いだすことができます。


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