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マンモスハンター

ミーターの大冒険  余白  第32話     マンモスハンター

ヴァレリー: 恐れ入ります。わたしのようなものが、大博士のまえでレオナルドさんから伝わる銀河文明の大事な概観を述べさせていただくだけでも光栄です。なによりもニフ列島に漂着した人たちの歴史が、これからはじまる外銀河への移動の基本的下敷きになるのですね。

さて、ほぼ6万年前にニフ列島に漂着した人たちは、徐々に狩猟採集を営んで生計を立てて行きました。それもおおよそ1万5千年間は大型の哺乳類のマンモスを捕食していたみたいです。海峡を隔てた北海道には南方型のナウマンゾウも共存していました。

そこで重要となる点は、食料確保からみる古代人の有り様です。

ハニス: うむ!ということは、人類の生存には、食料確保の面を注意してみなくてはならない、ということだな。このことは新たな遠征隊においても忘れてはならない。ニフ人の定着の起源を見極めるには、当然その観点が必要だ。具体的には?

ヴァレリー: シベリアのバイカル湖付近のマルタ-ブレット遺跡は、約4万年前から存在していた文化遺産ですが、この遺跡では、氷河期の森の跡と細石刃など人類の暮らしの跡が同じ場所で発見されており、両方が同じ場所で発見されたことは世界でも類がないとされています。

遺跡からは、絶滅したトミザワトウヒの痕跡が出土しています。ニフにも同じトミザワトウヒの遺物が出土しており、当時の気候変動が凄かったことが分かります。

このマルタ-ブレット遺跡のブリアート人たちがマンモスを狩り、北海道まで進出し、日本の縄文時代の土器製作の開始に影響を与えた可能性は大いにあります。

ハニス: というと、キミは、そのナウマンゾウやマンモスが絶滅したのは、その人類が、彼らを捕食し、絶滅に追いやった、と言いたいのか?

ヴァレリー: はい、しかも、その絶滅はそれだけで終わりませんでした。象以外の大型哺乳類の鹿類のなかにもおおかた絶滅させてしまっておりました。

ハニス: キミは、その鹿類のうちの何種類かは絶滅したが、何種類は残ったといいたいのか?

ヴァレリー: そうなんです。そこがとても大事なのです。絶滅が途中で途切れたのには重大な理由がありました。

ハニス:「とても重大な理由」とな?ほう!

ヴァレリー:ザックリと、結論からいいます。それこそニフ人の気づきです。他の生物との共存の気づきです。反省能力と言ってもいいかも知れません。

ハニス: 思い出したぞ! 知恵を誘導する天使クン!あの惑星アルファの生態系はほぼ地球の生命系を移していた。驚異的な保存、いいやもっと言うなら、「創造」に匹敵する造作!

ヴァレリー: おっしゃる通りです、ノアの方舟の宇宙版でしょうか、大博士。そこが他のスペーサーなどの星々の移住と違うところです。

その証拠があります。ニフの東のある地域の遺跡に、土器の破片と細石刃、エゾシカの骨が並べて遺されていたのです。その遺跡の遺物が保管されていたその資料館が、シンナックス人たちのご助力で、最近また再建されました。
その遺物の陳列によって、2万5千年を経過した頃に、ニフ人たちの定着がほぼ確定されたのが判ったのです。

ハニス: というと、土器の破片の発見の意味は、文明の大転換ということか!エゾシカの捕食もそれで止まった、と言うんだね? 言うならば、他の生物との対話!

ヴァレリー: はい、博士!それにはながい漂流の経験と、他の文化を取り入れる知恵と。それ以上に、環境に適応し、彼らを取り巻く自然への敬慕!

ハニス:それに他者をいたわる寛容な心、それと同時に彼らの生に対する真摯な態度も忘れてはならない。そして生活手段、技術力のイノベーション力。

ところで、もうそろそろ、わたしの妄想を披露したいと思うが、よろしいかな?

ヴァレリー: なにをおっしゃいます。お待ちしておりました。

ハニス: 外銀河への旅は、もしかしてもっと想像を越えて、過酷かも知れない。

ヴァレリー : とおっしゃいますと?

ハニス:先ほど述べたホモ・サピエンスと前人類との遭遇のことだよ。
4万年を要した大漂流の過程で、前人類との混合が意味することは絶大であった。

ヴァレリー: あっ、そうでした。外銀河には人類のような、あるいは想像を絶する生命体が存在し、彼らと遭遇する可能性についてですね!

ハニス: そうだ。その乗り越えは、今までの展開が是非とも基本となる。
ヴァレリー君、地球人類の歴史には無視できない負の遺産もあることを想起しなくてはならないのだよ。それを熟知し、乗り越える能力を確保した後でこそ、はじめて外宇宙への冒険も可能となるっていうもんだ!そうだろう、外宇宙へ誘導する天使クン!

次話につづく . . .

参考:本文中の「惑星アルファ」については、
拙書『ミーターの大冒険』第七部「地球へ」第11話から20話を参照にしてください。

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