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目の前の諭吉を惜しんで1シーズンを棒に振った話

 今日は2022年横浜マラソンに参加した話です。
 関西在住なのですが彼女が当時東京に住んでおり、訪ねがてら東京近郊のマラソンにも遠征してみようかしらん、と出走を決めました。
 ただ横浜、出走料がとにかく高いんですよね、お値段なんと2万円。
 諭吉2人が丸々飛ぶとは。
 キロ単価やばいな、1km約500円、200mに100円、と電卓を叩き、マリオが走りながらコインをチャリンチャリンとこぼし続ける画を思い浮かべ、慄きながら決済ボタンを押しました。

 横浜マラソンがあったのは2022年10月31日。
 今年は本気で自己ベストを狙いたい、と2022年は春頃からコンスタントに走れていて、ゲームでいうとAボタン連打して何がしかのパラメーターがマックス近くまで高まっているような状態で、コロナを挟んで丸三年ぶりの大会に臨もうとしていました。
 ところが10月上旬のある夜。なんでもない通常メニュー中、舗装道路のちょっとした傾斜で不意に足をぐにゃりとやってしまいました。
 まぁ、オーソドックスなただの捻挫です。
 ちょっとやっちまったくらいの感覚だったんですが、翌日には走れない程度にはしっかり痛みがあり、いや焦る、焦る。
 大会まであと三週間ちょっと。
 調整もまともにできないのは仕方ないとして、大会本番に間に合うのか?
 走れるようになるのか?

 はい、ネタバレというか、もうタイトルで言ってしまっている通り、この時私は目の前の諭吉を惜しんで横浜出走を強行した結果、2022年シーズンをそっくり丸々、棒に振ってしまいました。
 だって、なんてったって、2万円。
 それだけじゃない、往復をLCCで予約していたので交通費でさらに2万5千円。
 ちょっとやそっとのことじゃドブに捨てられない金額です。
 棄権はあくまで最悪の選択肢でしかなく、幸い痛みは1週間でほぼ引いたので、予定通り出走したのでした。

 大会当日は…
 一番印象的だったのは約15kmに及ぶ首都高速ゾーン。
 横浜マラソンの売りなのかはたまた欠点なのか判断は難しいですが、高速の上を走るという物珍しさと爽快さは確かにあったものの、長く続く緩やかな右カーブがとにかくしんどかった。
 車を運転する時はあまり意識しないですが、高速道路のカーブって遠心力対策? 曲がりやすくするための傾斜が割とがっつり効いているわけです。
 人間が走る分にはカーブというより傾斜の上をずっと走る感覚で、それで脚がいつもと破壊のされ方をした感はあります。
 
 その傾斜が引き金になったというよりは、捻挫や、それを無意識に庇う走りをしてしまったんだろうとか、色々な要因が合わさったんでしょう。
 まぁ要するに、「マラソン本番を舐めるな」ということなんでしょうね。
 大会翌日から両足にそこはかとないガタガタ感はあったのですが、一週間経った頃から、捻挫したのとは逆の左の足首がはっきり痛み出しました。
 そして整形外科に行っても(やたらレントゲンを撮られた挙句)異常なしと診断されるのに、今度のは時間が経ってもなかなか痛みが引かない。

 結局、次に控えていた11月の神戸マラソンは棄権。
 そこからは全く走れず、冬はご老人たちに交じって整形外科のリハビリに通って過ごし、痛みが引いたのは翌年3月。
 目の前の諭吉をドブに捨てることを惜しんだ結果、神戸分の諭吉と1シーズンを丸々ドブに捨ててしまったわけです。


 今回のことはさすがにショックで、
 ”故障したらとにかく無理をしない”とか
 ”必要なのは休む勇気、諦める勇気だ”
 
とかいう、どメジャーな格言を、身を以て(ある見方をすれば、1シーズン丸々犠牲にすることによって)学びました。
 ありふれた言葉だけど、侮れない。

 がっつり打ち込んでいる時ほど、「散々くそしんどい思いをしてここまで引き上げたパロメーターを下げるなんて!」と心が拒否反応を起こしてしまう。
 ”頑張ることは良いことだ”的な価値観も手伝い、「遅れを取り戻さな!」とつい必死になってしまうが、そもそも挽回しようなんて考えが、きっと誤りなんです。
 つまずいたが最後、”今月の合計走距離”とか”次のマラソンの目標タイム”とか、手近な目標は潔く諦める勇気を持たないといけない。
 Google地図で縮尺をぐぐっと引くようなイメージで自分を俯瞰して、シーズン全体とか数年単位とかもっと長い視野で、冷静に見つめ直さないといけない。

 もし今、故障気味で身体に不安があって、でも大会も控えていてと板挟みの人がいたら、すぐに諦めて下さい。
 一歩引いて広い視野と長いスパンで、冷静に考え直して下さい。
 多くの人にとって、人生はこの先も続いていくものだと思います。
 目の前の諭吉はとても捨てがたいですが、数年単位の長いスパンでそれを見たとき、またそのせいで失うかもしれない時間や努力を考えたとき、それは本当に耐えがたい出費でしょうか。
 これが人生最後の大会というわけでもない限り、どうかどうか、冷静になって下さい。
 事を急ぐと元も子もなくしますよ。
 
 以上、今現在故障やなんやかやで悩む人に、しくじりエピソードのひとつとして届けば幸いです。


 ちなみに今日の写真は、神戸マラソンの本番5日前、出走を完全に断念した夜の記念の食事です。
 ケンタッキー5ピースも買ったのに3ピースで満腹になったな。

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