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「追跡“ファーウェイショック”~5G米中攻防の最前線」

NHK「追跡“ファーウェイショック”~5G米中攻防の最前線」

■放送
NHKスペシャル
2020 年 1 月 19 日

■概要

・中国の巨大企業ファーウェイが通信規格 5G を使い提唱する「スマートシティ」。強靭な通信網を使い、あらゆる都市機能を集中的に管理できる、ある意味理想的なまちづくり。町中に監視カメラを取り付けるその手法には不安・危機感を覚える人もいる。

・危機感の根源は①アメリカの調査でファーウェイのソフトのコード中に、情報の一部にアクセスできるためのアカウントなど「バックドア」が高い割合で見つかっていること、②中国には「国家情報法」があり、誰も政府からの情報開示要求を拒否することはできないこと。つまりファーウェイは使用国の軍事機密でもアクセスできる可能性があり、中国はそれを吸い上げられる可能性が高い。

・ファーウェイの 5G の顧客は自治体、あるいは国。導入済みと導入を検討する国は 合わせて80 か国に上り、アメリカ・日本のようにファーウェイを排除している国は少数派。

◾️感想
番組ではスマートシティを導入中の 2 つの都市を取材していた。

そのひとつドイツのデュイスブルク市。5Gのネットワークで町全体をつなぎ、市役所の業務はすべて電子化するなど、最先端の都市化を目指すという。この契約をきっかけにデュイスブルクには、中国の企業が次々進出。例えば電気自動車のハイテク企業がこの都市で、ネット注文した商品を無人で届ける電気自動運転車を走らせるという。市の担当者は話す。「スマートシティが私たちにチャンスをもたらせている。これもファーウェイのおかげ」。デュイスブルでは、経済の停滞にともなう人口流出…いわゆる地方都市の課題が山積していて、スマートシティ化と中国企業の進出によるゲームチェンジに市の夢を託しているのだ。

もうひとつ、セルビアは首都ベオグラードに導入。町の重要な場所に監視カメラを設置した。しかし、この町の市民運動に参加する若い女性は、インターネットで目にしたものに驚く。自分たちの拠点に出入りする野党の幹部の姿。それをとらえた動画だ。拠点のすぐそばに監視カメラが設置され、監視されていると感じていた矢先だった。「政権や公安当局は本来とは違う目的で使用していると思う」「誰が、どこで、何のために見ているのか把握したい」と不安を募らせる。

そんな中、日本では今年5Gの本格運用開始。大手通信会社は、基地局・ネットワーク機器に、ファーウェイではなくノキアやエリクソンの使用を決定しているという。
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この問題には明確な答えがあるように思う。それは、「自国の情報網は自国で作れ」ということ。相手が中国企業であろうとなかろうと、自国の通信網を他国に整備してもらうということのリスクは確実にある。私たちが日常使っている検索エンジンは、検索履歴から表示する広告や商品を提案してくる。その仕組みの延長にあるものを想像すれば、こうした結論にしかたどり着かないと思う。「信頼しているから」「同盟国だから」と言っても、その不安をぬぐい去ることはできない。
その意味で、少なくともアメリカの通信ウェアを排除して、独自の通信環境を整備した中国は正しいと言える。それをしないという選択をするのであれば、どんな情報を抜かれようと仕方のないことではないだろうか。仮に国同士が敵対関係になった時には、法律や契約が機能する保証はないのだから。

知らない情報がたくさんあり、とてもいい番組だった。ただ、番組全体を通じて、疑念が見つかったファーウェイに世界の情報の覇権を握らせていいのか、という Yes or No の 2 択を迫るのに終始せず、多様な視点を入れてほしかったと思う。政府の判断の後押しとも見えてしまうからだ。情報リテラシーが問われる番組だと思った。

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