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夏旅 広島県尾道~宮島②

2023年7月
朝ホテルで目を覚ますと、窓から尾道水道の景色が見えた。太陽に川面が反射してキラキラと輝いている。いつまでも見ていたいような尾道水道の景色と別れ、この旅の最大の楽しみである宮島に向かった。
尾道駅から広島駅まで1時間程電車に揺られる。車窓からは田園風景が広がり、夏を思いっきり感じることができた。広島駅に着き、駅の中にある有名なお好み焼き屋さんを目指す。尾道で牡蠣が食べられなかったショックもあり、できれば牡蠣入りのお好み焼きが食べたいと思っていた。
お昼時の広島駅の混雑は凄まじく、有名なお好み焼き店が連なる一帯はお客さんでびっしりと埋め尽くされていた。お好み焼きを食べることも楽しみだが、ここで並んでいては宮島でじっくり観光ができなくなる…。宮島のフェリー乗り場付近でランチでも良いかなと思い、お腹は空いていたが少しの辛抱することにして宮島行きの路面電車を探した。

広島駅から宮島口駅までは「広電」と呼ばれる路面電車を利用。レトロな車両のイメージがあったが、都内の電車のような新しい車両で驚いた。この「広電」に乗ることも旅の楽しみの1つであったので最初はワクワクと乗っていたが、30分、1時間と時間が経つと少し後悔し始めた。JRに乗れば30分もかからない道を、1時間以上かけてしまっている。途中、原爆ドームや広島の市内を見ることができたのは嬉しかったが、一度広島駅でお好み焼きを見てしまったために猛烈にお腹が空いていた。宮島での観光時間も少し気になり始めたとき、視界が開けて海が見えた。海を目指していることが分かっていながら、突然海が見えたときは景色き心を打たれた。去年からずっと行きたいと思い続けていた宮島に、確実に近づいている気配がする。予定をびっしりと入れていて、早く移動をしたい人には広電はお勧めできない。だが、旅気分を味わいたい人、広島市民の生活を感じたい人にはぜひお勧めしたい。

広島宮島口に到着し、まっすぐにお好み焼き屋を目指す。目的のお店に到着してメニューを見ると、しっかりと牡蠣メニューがある。尾道で季節外れのため楽しみにしていた牡蠣が食べられないという苦い思いをした後、調べてみると牡蠣は冬の食べ物だが、夏牡蠣なるものもあるようだ。イカやエビなどのシーフードメニューと迷っていると、牡蠣を3つトッピングできることに気がつき、シーフード+牡蠣を注文する。広島で牡蠣を食べるという願いが叶い、やっぱり来て良かったなあ、宮島付近まで来て正解だったと幸せな気分に浸った。

海鮮好きにはたなまらない牡蠣のお好み焼き
宮島口の広電のホーム

お好み焼きに大変満足した後、宮島行きのフェリー乗り場に向かった。
フェリーは想像よりも大きく、クーラーのついた室内の窓から海が見渡せるようになっていた。午後の広島の日差しはとても暑かったが、室内から景色を見るような気分にはならず、フェリーのデッキに移動して一眼レフを構えた。

2階デッキがある大きなフェリーに乗る
宮島旅の始まりの景色
美しい厳島神社の鳥居が見える

宮島に続く海を見ながら、アニメ「平家物語」のOP主題歌である、羊文学の「光るとき」という楽曲のミュージックビデオを思い出していた。アニメの内容にリンクした楽曲が流れ、アーティストがフェリーから海を眺めているという印象的なビデオだ。ミュージックビデオは儚い印象を受けるものだったが、真夏の宮島の海はキラキラと輝き、旅の冒険心を掻き立ててくれた。
夢中になって海を見ていると、ぽつりと赤い厳島神社の鳥居が見えた。やっと来ることができたという実感と共に、「わぁ、綺麗だ」と思わず口に出しそうになる。

宮島に到着すると、船旅客を迎えるかのように平清盛像が迎えてくれた。
清盛公~!と叫びたくなるのを我慢して駆け寄り、写真をとった。
小学校の修学旅行や家族旅行で訪れているはずなのに、記憶の海よりも一段と綺麗でとても驚いた。少しは大人になり、アニメーションのおかげで
聖地巡礼も兼ねている今、一番行くべき場所に行けたなぁとしみじみ感慨にふけていた。

堂々と立つ平清盛の銅像
宮島から見える海の景色

綺麗すぎて白昼夢のような海沿いの道を進み、厳島神社の傍まで着く。
干潮の時間帯で本殿や鳥居は海に浮かんでおらず、鳥居のすぐ傍まで近づくことができた。鳥居に触れることができてラッキーだったが、海に浮かんでいる神社を見たいと思っていたため、海が満ちてくる夕方の時間を楽しみにして本殿を先に参拝することにした。

厳島神社の朱色の回廊を渡り、本殿で参拝をする。回廊を歩いていると、平安時代に平家の一門が同じように歩いていたことを想像し、ロマンを感じてしまう。本殿ではちょうど結婚式の最中で、伝統衣装を着た神主や巫女を見てタイムスリップをした気分になる。海外の観光客がとても多く、神社で催された結婚式の様子を、興味津々な様子で見学していた。
御朱印帳のページがあと少しで無くなりそうだったため、新しく御朱印帳を購入。厳島神社の鳥居がきらきらと輝く水面に浮かぶ、美しい装丁の御朱印帳だった。

平安のロマンを感じる回廊
厳島神社本殿
奥では結婚式が催されていた
高舞台と本社祓殿

厳島神社を堪能し、もう1つの世界遺産である弥山に向かった。
世界遺産検定を受けるために勉強をしたことがきっかけとなり、弥山から見える景色にも興味を持っていた。だが、ロープウェイの最終便まで時間が限られていたこともあり、登山はせずロープウェイで行けるところまで行き、景色を見てすぐに引き返すことにした。
厳島神社から紅葉谷公園まで徒歩で移動し、紅葉谷から榧谷(かやたに)、榧谷(かやたに)から獅子岩(ししいわ)と、1度ロープウェイを乗り換える。紅葉谷から榧谷(かやたに)までは10分ほど、榧谷(かやたに)から獅子岩(ししいわ)までは4分ほどの移動だ。
ロープウェイは詰めて6人ほど乗り込むことができる。1人旅でロープウェイに乗った経験はあるが、あまり良い思い出はない。景色は堪能できるが、1人で乗せてくれる訳はないので、知らない人と何十分も同乗する必要がある。どんな人と同乗をしても平然と景色を楽しむような旅メンタル(?)が必要になるのだが、弥山のロープウェイの同乗者はかわいらしい小さな男の子とそのお母さんだった。
向かい合わせで座っていると、男の子が私が座っている側の風景を撮りたかったようで、こちらに接近してくる。すると、お母さんが「迷惑をかけちゃだめだよ」と男の子に言い、男の子はカメラを景色に向ける前に、きちんと「すみません」と挨拶をしてくれた。ロープウェイに乗る前にも、男の子は鹿にお菓子をあげようとする大人に向け、「鹿は草を食べるんだよ」と賢く教えていた。将来もっと賢くなって良い大人になるんだろうなぁと思い、珍しくほっこりした気持ちでロープウェイの旅を楽しんだ。

榧谷(かやたに)から獅子岩(ししいわ)までは10人ぐらい乗ることができるロープウェイに乗り換え、登山道の出発となる地点まで目指した。
ロープウェイに乗り込んで少し経つと、既に真下には海が広がっていた。今まで遠くに見えていたような海ではなく、地球儀で見る海を連想させるような広大な海が広がっていた。終点の獅子岩(ししいわ)に着いてから帰りのロープウェイの時刻までは10分ほどしか残っていなかったが、時間いっぱい使って撮影をし、じっくり海と陸を眺めた。
ここから更に上に登っていくことが考えられないような、海の絶景を眺めることができた。いつか、きちんと山に登る準備をして、弥山を目的に広島を訪れるのも良いかもしれない。

紅葉谷から榧谷(かやたに)までロープウェイで移動
獅子岩(ししいわ)駅展望台からの景色
地球儀を連想させる景色

ロープウェイを下りて再び厳島神社に向かうと、海が満ちて本殿や鳥居が見事に海に浮かんでいた。海に浮ぶ本殿と鳥居の光景はやはり綺麗で、カメラを構えては光を捕らえるようにして撮っていった。夕食までにはまだ時間があったため、商店街をぶらぶらと歩き、まだ開いているお店を見つけては足を止めた。歩き疲れて夕暮れ時に厳島神社付近に戻って座り込むと、その場所から見える景色が良い構図のような気がして、一眼レフを構えた。波の音が聞こえ、神様の住む朱色の神社と、美しい鳥居が海に浮かんでいるのが見える。少しずつ日が暮れていく空を鳥が飛び、一瞬の影になって遠くへ飛び去っていく。綺麗な景色を1日でたくさん見ることができたが、この夕焼けの景色が一番綺麗だと感じた。ここから動きたくないなぁと思いながら、宮島の旅の思い出として目に焼き付けた。

海に浮かぶ厳島神社
干潮時に歩いて傍まで行けた鳥居が、
夕方には海に浮かんでいた
夕暮れ時の厳島神社と大鳥居

今回の宮島旅の最後の楽しみが、ナイトクルージングだ。
夜に鳥居のすぐ傍まで近づくことができると知り、とても楽しみにしていた。日が落ちるまで待ち、屋形船に乗って大鳥居と厳島神社を目指す。
夜は昼間とは全く異なる風景で、水面に光る電灯の明かりの中にぼんやりと鳥居が佇んでいた。写真を撮ろうと構えるが、昼間のように綺麗に撮ることはできなかった。屋形船に乗っていた子供が鳥居の写真を撮ろうとしたが、上手く取れなかったようで困っている。「写真に撮ることができない風景もあるんだよ」と側にいたお母さんが子供を諭していた。その通りだと思い、写真の撮影を十分に楽しんだ後、一眼レフとスマホをしまって屋形船からこの日最後の厳島神社と鳥居を眺めた。
また期間を空けて、宮島に戻りたいと思う。宮島は自分にとっての最強のパワースポットであり、聖地でもあり、美しい景色に感動する素直な自分に戻れる場所だからだ。

宮島旅最後の大鳥居
昼間とは違う印象を受けた


ここまでお読みいただきまして、
ありがとうございました!






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