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美術展めぐり(6)五十嵐靖晃 海風-千葉県立美術館-

こんばんは、イカフライです。
お盆休暇の方も多い季節ですが、いかがお過ごしでしょうか。
今年のお盆は少し長めの休暇をとり、前半は今回ご紹介する展示会と、
日光に日帰りで行きました。お盆後半は天気とお財布事情を考えつつ、
もう1か所美術館に行けたら良いなと思います。
今回ご紹介するのは、千葉県立美術館で9月8日まで開催している、
五十嵐靖晃さんの「海風」展です。


作家紹介

五十嵐靖晃さんは千葉県出身のアーティストで、2005年に東京藝術大学大学院を卒業後、国内外で活動をしていらっしゃいます。
主に山や海といった自然の景観の中に、地元住民などのプロジェクトメンバーと共に作り上げたものを設置するインスタレーションアートを手がけています。
作品例としては、福岡県の大宰府天満宮で落ち葉を利用して模様を描く
《くすかき》、岩手県釜石市など日本や世界の港で漁網を網んで空に掲げる
《そらあみ》、熊本県津奈木町で弁天島と陸を100本の赤い糸でつなぐ
《海渡り》などがあります。

アートといえばゴッホやピカソといった有名な作家の作品を思い浮かべるように、絵画など完成した「モノ」としての作品が、室内に展示される例が多いと思います。「モノ」としての作品展示とは異なり、場所や空間を作品として表現するのが「インスタレーション・アート」です。
以前、noteで鑑賞レポートを書いた村上隆さんの東西南北の守護神の展示室や、フラワーの金色の像がインスタレーションに当てはまるかと思います。
他に有名な日本人アーティストでは、草間弥生さんなどがインスタレーション作品を手がけています。

作品の特徴と魅力

「海風」展で最初に目を引くのが、5000個以上の糸玉で創られた《糸の星》です。千葉県の漁師から信仰されていた星をテーマにし、一般のプロジェクト参加者(千葉県のみならず全国)から好きな素材で創った糸の玉を集め、1つの作品として表現しています。
色や大きさがそれぞれ異なる糸玉が展示されているところが面白く、1つ1つの個性(糸玉)が集まった空間を見て、すぐに星や宇宙が表現されていることが分かりました。同じく糸で創られた《海織り》は、青と白のグラデーションで海が表現され、上から眺めると地平線が広がっているような錯覚が起きました。
糸というシンプルな素材で表現されているからこそ、アートがより身近に感じられ、作品に関わった人々のエネルギーが伝わってきました。

《糸の星》《海織り》

五十嵐さんの活動経歴を紹介するブースでは、壁一面にテキストや写真が並べられ、実際に作品制作に使用された用具が展示されていました。
作品の幾つかは制作過程がドキュメンタリービデオで紹介されていたため、写真を見て興味を引かれた《海渡り》のビデオをじっくり鑑賞しました。

地域住民が協力し、100本の赤い糸で島と陸をつないだ《海渡り》は、「海や島などの自然に対する人々の信仰」といった神秘性を感じさせるアート作品です。私は、現代アートは作品のテーマを捉えることが難しく、時には理解が難しいことが多いと感じます。しかし、制作過程のビデオで普段アーティストとは関わりを持たない地域住民の家族や、年配の方、子供たちがプロジェクトに参加している様子を見て、アートの創作方法にもさまざまな形があることを知りました。地域住民同士の繋がりや、自然を大切にする意識を育む五十嵐靖晃さんの作品は、とても風景に溶け込んでいて、空間アートとして完成されているように感じます。

《海渡り》展示会キャプション

千葉みなとエリアの作品

「海風」展は美術館を飛び出し、千葉の港付近でも数点の展示を行っています。せっかく千葉県まで足を運んだので、千葉みなとエリアの作品も見て周りました。

《船霊様》千葉ポートタワー内部
《そらあみ》さんばしひろば
千葉みなとの風景。真夏の日差しで水面がきらきらと輝いている。
右側には工場が見える。

アートを探して街を歩くという経験が初めてだったため、とてもワクワクしながら巡りました。「海風」展の旗を街のさまざまな場所で見つけたため、街全体でアート展を盛り上げていて、とても良いなと感じました。
インスタレーション作品の展示会や美術祭があれば、積極的に足を運んでみたい!と思わせてくれるような、素敵な展示会でした。
ぜひ興味のある方は千葉みなとまで足を運んでみてください!






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